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8 王国の宝玉

8ー6 蛇の道

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 8ー6 蛇の道

 翌日の夜。
 再び、ウィズは、現れた。
 俺は、玄関でウィズを出迎えた。
 ウィズは、俺と一緒に部屋へと向かうとき、そっと耳打ちした。
 「今夜は、寝てくれるのか?」
 「さあ」
 俺は、にっこりと笑った。
 「『裏』で客とは寝ないことになっているのですがね」
 部屋に行くとルトがすでに酒席を用意してくれていた。部屋の家具は全て片付けられ床の上には、美しい模様の絨毯が引かれている。そこに酒と料理が用意されていた。俺は、大きくてふかふかのクッションの方へとウィズを導いた。
 ウィズは、腰を下ろして胡座をかくと俺に笑いかけた。
 「よく調べたな」
 俺は、なんのことかわからないというふりをして、酒をすすめた。杯を手にしたウィズに俺は、酌をしてやる。
 ウィズは、酒を一口飲むと奇妙な顔をした。
 「これは・・」
 「おわかりですか?」
 俺は、ウィズに微笑んだ。
 「これは、かつてあなた様の国によって滅ぼされたラニアス公国の酒でございます」
 俺は、ウィズの前に並べられた料理の皿を指して説明していく。
 「この煮物は、同じくあなたの国が滅ぼしたステニア王国の料理、そして、こちらが」
 「もう、いい!」
 ウィズが俺を睨み付けて杯を握りつぶした。欠片が刺さって手から血が滴る。
 「どういうつもり、だ?ルシウス」
 「どうもこうも」
 俺は、酒を置くとふっと静かに微笑した。
 「俺は、もうこの世にない珍しいものであなたをおもてなししているだけでございますが?」
 「貴様!」
 ウィズが立ち上がった。魔法が生まれる感覚がして俺の背に冷たい汗が流れた。それでも俺は、ウィズから目をそらさない。
 「お気に召しませんでしたか?ウィズ、いや、マルキア・ディアス・ジニアス陛下」
 「何?」
 ウィズが動きを止める。
 「なぜ、だ?」
 「蛇の道は蛇でございます」
 俺が答えると、ウィズは、ふっと笑った。
 「そうか、ヤーマン商会、か」
 俺は、ウィズのことを調べるためにルトにグラム・ヤーマン老へ手紙を届けてもらった。そこでヤーマン老からジニアス王国にウィズという名の武官はいないことをきいた。そして、俺からきいたウィズの人相からヤーマン老にもしかしたら、と教えられた。
 「なるほど、な」
 ウィズ、こと、マルキア・ディアス・ジニアス陛下は、腰を下ろすと俺にさっきのとは別の杯を差し出した。
 「酒を」
 「はい」
 俺は、ルトにいって別の酒を出させた。それは、マルキア・ディアス・ジニアス陛下がもっとも望むもの、と俺が考えたものだった。
 俺が注いだ酒を一口含むとジニアス王は、はっと目を見開いた。そして、彼は、一気に酒を飲み干した。この酒は、彼の本当の故居の酒だった。
 「面白い話をきかせてやろうか?」
 ジニアス王が話し出し俺は、耳を傾けた。
 「ある国に王子が生まれた。だが、その王子は、望まれぬ子だった。母親が敵対していた小国の姫だったからだ」
 
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