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6 恋と愛と欲望と

6ー8 避妊薬

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 6ー8 避妊薬

 「国王陛下は、おいくつになられたんでしたっけ?」
 俺がきくと王太子殿下がふぅっとため息をつく。
 「父上は、68才。何があってもおかしくはない」
 うん。
 この世界では、平均寿命はおよそ60才ぐらいだし、確かにそうだな。
 俺は、考えていた。
 しかし、何も病気じゃないなら。
 「もしかして・・」
 
 王太子殿下との床入りから数日がすぎた。
 俺は、部屋で1人作業をしていた。
 今夜は、誰も来る予定もないし、俺は、かねてから作りたいと思っていた薬の製薬にかかっていた。
 ルトに揃えてもらった材料を俺は、小さく切り刻みすり鉢でごりごりと潰していった。
 それを小瓶に摘めて魔力を流すと小瓶の中の液体が青く輝いた。
 「うん、これで完成!」
 俺が作業しているのを見ていたルトが訊ねた。
 「いったいなんの薬なんだ?」
 「ああ、これな」
 俺は、小瓶をルトの目の前に差し出してにっこりと笑った。
 「これは、避妊薬だ」
 妊娠は、男娼はともかく娼婦たちにとっては重大な問題だ。子供ができることを俺の前世の娼婦たちは、恥だと思っていたらしい。
 この世界では、そんなことはなかったが、それでもやはり育てられず孤児院に預けることになったりしていた。
 それよりも問題なのは、妊娠した娼婦におかしな堕胎薬を売り付ける輩がいることだった。
 危険な薬を服薬した娼婦の中には、それが原因で亡くなるものもいたのだ。
 「この薬を仕事の前か後に服薬すれば妊娠を防げる」
 俺は、ルトに微笑んだ。
 ルトの母親も娼婦だったらしい。この花街で働いていたんだが子供ができてルトを産んだものの育てられず孤児院に預けた。
 その後、ルトの母親がルトを迎えに行くことはなかった。
 彼女は、危険な堕胎術を受けて亡くなっていた。
 「本当なのか?」
 ルトは、薬を手にとると窓から差し込む光に透かしてみた。青色の液体は、きらきらと輝いて美しかった。
 俺は、ルトに頷いた。
 「これは、安全な避妊薬だ。これで望まない妊娠を防げる筈だ」
 俺は、アンリにこの薬を渡してこの『シャトウ』で働いている娼婦たちに配ってもらった。女たちは、半信半疑だったが、アンリの命には従った。
 
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