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3 歴史は、夜に作られる。

3ー10 目覚めのキス

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 3ー10 目覚めのキス

 冬がきてもカークは、俺のもとには来なかった。
 手紙もこない。
 俺は、いらいらしていた。
 ルトに当たり散らしたり、かと思えば部屋に一人こもってぼぅっとしていたり。
 「どうしたんだ?ルシウス」
 「あっ・・」
 俺は、シャルに抱かれながら知らず知らすのうちに涙を流していた。シャルは、俺を抱く手を止めると俺の涙を指で拭った。
 「最近、気が入ってないな」
 「・・ごめん、シャル・・」
 俺は、慌ててシャルに謝った。シャルは、俺を抱き締めると俺の頬をそっと撫でた。
 「いや、いいんだ。ただ、元気のないお前のことが心配なだけだ。いったいどうしたんだ?」
 俺は、シャルにカークとのことを話した。
 カークが俺を身請けしようとしていたこと。それがダメになったことも。シャルは、黙って俺の話をきいてくれていたが、やがてため息をついた。
 「実は、私もアンリにお前の身請けの話を断られたんだよ、ルシウス」
 はい?
 俺は、シャルを目を丸くして見た。
 シャルが俺を身請け?
 「そう、驚かなくてもいいだろう?」
 シャルは、少し頬を赤く染めて俺に話した。
 「お前は、私のことを受け入れてくれた。体の相性もいいし、何より私は、お前のことを愛している」
 「シャル・・」
 シャルが俺の頭にキスをした。
 「だが、アンリは、私にもお前を売るきはないと言った」
 「そう、なんだ・・」
 俺は、シャルの胸に顔を埋めて泣いていた。
 アンリは、何を考えているのか?
 「安心しろ、ルシウス」
 シャルが俺の頬にキスを落とした。
 「必ず、いつかは、アンリを頷かせてみせる」
 「シャル・・」
 その日、シャルは、俺を優しく優しく抱いた。俺が泣きつかれて眠るまで抱き続けた。
 翌朝。
 俺は、シャルの腕の中で目覚めた。
 こんなことはシャルとは初めてだった。
 シャルは、必ず夜の内に俺のもとから去っていたのに、この日は、朝まで俺を抱いてくれていたのだ。
 俺は、シャルの気持ちが嬉しくて。
 眠っているシャルの頬や目元、額にキスをした。最後に唇にも。
 「ルシウス」
 「お、起きてたの?シャル」
 シャルは、体を離そうとする俺を抱き寄せると額にキスをして微笑んだ。
 「ルシウスからキスをしてくれるなんて初めてだったからな」
 「それをいうなら、シャルだって!」
 俺は、そのまま言葉を飲み込んだ。シャルは、俺を抱き締めてキスを続けた。
 俺も。
 シャルの優しさに触れて暖かい気持ちになっていた。
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