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3 歴史は、夜に作られる。

3ー1 しきたり

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 3ー1 しきたり

 俺が娼館『シャトウ』の男娼になって2度目の春のこと。
 俺は、アンリに執務室に呼び出されていた。
 この頃には、俺は、カーク以外の客をとることのない高級男娼として王都でも有名になっていた。
 有名になれば興味を持つ好き者も出てくる。
 中には、どうしても俺を抱きたいという物好きな連中も現れた。だから、俺は、アンリに提案をしていた。
 それは、俺を抱きたい客は、俺のもとに3回通わなくてはいけないというものだった。
 これは、前世の吉原のしきたりにあったものだ。
 客は、花魁を抱きたければ3回通わなくてはいけなかった。
 まず、『初回』
 この日は、花魁が客の様子を伺うための日だった。ここで気に入らなければ花魁は客を袖にすることができた。
 次が『裏』
 二回目は、ほぼ『初回』と同じで花魁は、客とは会話もろくにすることはない。
 三回目でやっと花魁は、客と会話したり食事をしたりする。そして、馴染みとなり床入りになるわけだ。
 俺は、これをアンリに提案した。
 アンリは、これを受け入れた。
 以来、たまに俺のもとに『初回』の客が訪れることがあった。だが、俺は、誰とも寝ることはなかった。
 それでも一回につき金貨100枚だ。
 さすがにそろそろアンリからも文句がでるかもしれない、と思って俺は、アンリのもとを訪れた。
 執務机に向かっているアンリは、むっつりとして期限が悪そうだし、やっぱりそろそろカーク以外の客もとれといわれるのか、と俺は、覚悟を決めていた。
 アンリは、いつもと同じように俺にソファをすすめると自分も俺の前の椅子に腰かけた。
 「あー、ルシウス。今日は、お前に頼みたいことがあって呼んだんだ」
 アンリが俺に向かって言いにくそうに話し出した。
 これは、いよいよ他の客をとらなくてはいけないってことかも。
 そう、俺が思っているとアンリが俺を伺うように覗き込んで頭を下げた。
 「すまないが、今夜、特別な客をもてなしてもらいたい」
 「特別な客?」
 俺が問うとアンリは、頷いた。
 「そうだ」
 アンリは、俺に話した。
 「その客は、お前の噂をきいてどうしてもお前に会いたいと望んでいる方なんだよ。『初回』で袖にされても構わないからどうしても会わせて欲しいとのことだ。ただ、その方は、今までお前が袖にしてきた連中とは、ちょっと違う。王国の政治を中心となって担っている方、といえばわかるかな?」
 うん?
 俺は、アンリを見つめた。
 王国の政治の中心?
 それって宰相のこと?
 
 
 
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