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1 堕ちた魔法使い

1ー7 価値

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 1ー7 価値

 こうして俺の娼館での暮らしが始まったのだ。
 アンリは、俺のことを閉じ込めることはなかったが、俺は、ほぼ1日を部屋にこもって過ごすことになった。
 それは、胎内の玉のせいだった。
 アンリは、俺にこの玉を入れておくことを命じた。
 毎朝、起きて身繕いをするとすぐに俺自身の手でこの玉を胎内に押し入れる。そして、それを夜寝るまで出すことは許されない。
 それ以外は、特に何を命じられることもなかった。
 俺は、最初、玉に慣れるまではベッドからほとんど動くことができなかった。
 横たわったままじっと玉の与えるうずきに堪えながら俺は、全てを呪っていた。
 俺をこんな目にあわせた兄ロアン。
 俺をパーティから追放したクルーゼたち。
 俺にこんな恥辱を与えるアンリ。
 全てが憎かった。
 時々、俺の様子をうかがいに来る娼館の使用人以外は、俺の部屋に近付く者はいなかった。
 使用人は、目立たない外見の青年だった。どこにでもいるような茶色の髪に茶色の瞳をしたその青年だけが俺の外界との繋がりだった。
 昼間身動きのとれない俺の世話をし、食事を運んでくれるこのルトという青年を通して俺は、この娼館について教えられた。
 この娼館は、シャトウという名の店だった。
 それは、この王都ではちょっとは知られた店だった。
 店には、様々な娼婦男娼が揃えられていて日夜、高貴な身分の女や男たちが快楽を求めて集っていた。
 俺も何度かクルーゼたちに誘われたことがあったが、訪れたことはなかった。
 俺は、まだ、男も女も知らない。
 前世でも今生でも、だ。
 こんな感覚すらも抱いたことはなかったし、与えられたこともない。
 ある日、屈辱に堪えながらベッドに横たわり思わず涙していた俺に気づいたルトが珍しく俺に話しかけてきた。
 「ここでは、快楽を与える者が正義、だ」
 ルトは、ぽつりぽつりと話した。
 「もしあんたが復讐を望むなら、それも可能かもしれない。あんたが望むなら、だが」
 「どうすれば、いい?」
 俺は、ルトに訊ねた。
 「俺は、どうすればいいんだ?」
 ルトは、泣いている俺から目をそらした。
 「それは、あんたが最高に客を喜ばせる男娼になることだ。そうすれば、どんな願いも叶うだろう」
 ルトは、そっと俺の涙を指先で拭うと告げた。
 「ここは、それが叶う場所で、アンリ様は、ここの王だ。そのアンリ様が手ずから教え込もうとしているんだ。あんたには、その価値があるってことだ」
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