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番外編 僕の初恋~グレイアース~
4 もう少しだけ
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4 もう少しだけ
僕が騎士団長であったグレイアース・ディア・レイダースだということを秘密にしたまま10年の月日が過ぎた。
すごくたくさんのことが変わっていった。
まず、僕は、剣を習いはじめた。
もちろん、僕には、剣を習う必要などなかった。
僕には、前世の記憶がある。
剣技は、父上が探してくれた元騎士団の剣の先生より僕の方が数倍上だ。
それなのに僕が剣の先生を必要としたのは、周囲に疑惑を持たれないためだった。
今の僕は、あくまで父上エドワード・フォン・アデレイドと父様リチャード・ライナス・アデレイドの息子であるグレイアス・ディア・アデレイドなのだ。
突然、前世の記憶が戻ったなんて。
誰にも知られるわけにはいかない。
特に、父上には。
今、現在、父様を独り占めにしているアデレイドの小僧、いや、父上には、絶対に僕がグレイアースであることを気づかれてはいけない。
いつか。
僕が1人前の男になって、父様を自分だけのものにするまで。
誰にも気取られてはいけない。
それまでは。
『まるで、レイダース騎士団長のようだ』
父様が少し複雑そうな笑顔を浮かべて僕が剣の練習をしているのを眺めているのを僕は、振り返った。
ああ。
なんて僥倖。
愛しい人の視線を独り占めできるなんて。
しかも。
「グレイアース」
父様が練習の手を休めた僕に近づいてきて汗を吹くための布を差し出す。
『こんなに汗をかいて。風邪をひいてしまう。はやく湯に浸からせなくては』
父様は、僕に有無をいわさずに布で僕の首もとやら頭やらを拭っていく。
その優しい感触に頬が熱くなる。
この後、父様に風呂にいれてもらうことになる。
いつものことだった。
父様は、僕のことが大好きなのだ。
本当は、はやく全てを告白したい。
そして。
父様を。
ライナスを僕のものにしたい。
だけど。
もう少しだけ。
あともう少しだけ、この幸せにしたっていたい。
だって。
父様は、今、僕のことを一番愛しているから。
きっと、父上を愛するよりも。
だから。
もう少しだけ、この幸せを味わっていたい。
僕が騎士団長であったグレイアース・ディア・レイダースだということを秘密にしたまま10年の月日が過ぎた。
すごくたくさんのことが変わっていった。
まず、僕は、剣を習いはじめた。
もちろん、僕には、剣を習う必要などなかった。
僕には、前世の記憶がある。
剣技は、父上が探してくれた元騎士団の剣の先生より僕の方が数倍上だ。
それなのに僕が剣の先生を必要としたのは、周囲に疑惑を持たれないためだった。
今の僕は、あくまで父上エドワード・フォン・アデレイドと父様リチャード・ライナス・アデレイドの息子であるグレイアス・ディア・アデレイドなのだ。
突然、前世の記憶が戻ったなんて。
誰にも知られるわけにはいかない。
特に、父上には。
今、現在、父様を独り占めにしているアデレイドの小僧、いや、父上には、絶対に僕がグレイアースであることを気づかれてはいけない。
いつか。
僕が1人前の男になって、父様を自分だけのものにするまで。
誰にも気取られてはいけない。
それまでは。
『まるで、レイダース騎士団長のようだ』
父様が少し複雑そうな笑顔を浮かべて僕が剣の練習をしているのを眺めているのを僕は、振り返った。
ああ。
なんて僥倖。
愛しい人の視線を独り占めできるなんて。
しかも。
「グレイアース」
父様が練習の手を休めた僕に近づいてきて汗を吹くための布を差し出す。
『こんなに汗をかいて。風邪をひいてしまう。はやく湯に浸からせなくては』
父様は、僕に有無をいわさずに布で僕の首もとやら頭やらを拭っていく。
その優しい感触に頬が熱くなる。
この後、父様に風呂にいれてもらうことになる。
いつものことだった。
父様は、僕のことが大好きなのだ。
本当は、はやく全てを告白したい。
そして。
父様を。
ライナスを僕のものにしたい。
だけど。
もう少しだけ。
あともう少しだけ、この幸せにしたっていたい。
だって。
父様は、今、僕のことを一番愛しているから。
きっと、父上を愛するよりも。
だから。
もう少しだけ、この幸せを味わっていたい。
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