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8 拐われて
8ー10 天国
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8ー10 天国
それからすぐにフォルツァート伯爵家は、取り潰しになった。が、新しくイーサン・フォルツァートに男爵位が与えられることになった。
俺がそれを知ってから数日後、ミリア嬢とイーサンが俺のもとを訪ねてきた。
エドは、どうしても俺がイーサンと会うのに立ち会うといってきかなかった。
ミリア嬢と現れたイーサンは、髪を短くして紳士の姿をしていた。
まるでミリア嬢の方が姉のようで兄のイーサンは、弟のように思えた。
2人は、俺たちに頭を下げた。
「この度のこと、慈悲をかけてくださりありがとうございました」
ミリア嬢が俺とエドに告げた。
イーサンは、なんだかふてくされているようだった。
「お兄様!」
ミリア嬢がイーサンの手を引っ張った。
「お兄様もリチャード様にお詫びをして!」
「・・あんなことしてすまなかった」
嫌そうに言うイーサンにミリア嬢が眉をしかめる。それを見たイーサンが口を開いた。
「だって!リチャードも僕のこと好きだと思ってたから!僕、リチャードのこと好きだし!それに・・お父様もリチャードは僕のこと好きだって・・」
「イーサン!」
ミリア嬢がぴしゃりと言った。
「あなたは!リチャードに自分がしたことがどんなに非道なことだったか、まだ、わかってないの?」
俺は、目の前でミリア嬢に叱られているイーサンのことを見てため息をついた。
まだまだイーサンは、現実を受け入れられてないのだろう。
無理もないのだ。
イーサンは。
子供の頃からフォルツァート伯爵に虐待を受け、外の世界を知らないまま生きてきたのだ。
いきなり現実世界を突きつけられても戸惑うのは仕方がない。
これから、彼が幸福に生きることを祈るしかない。
ミリア嬢とイーサンが去ってから、エドが俺をぎゅっと抱き締めて囁いた。
「リチャード・・いや、ライナス。もう2度とお前を離さない。もう誰にも、お前を傷つけさせない!」
エドにぎゅうぎゅう、抱き締められて。
俺は、頭がぼうっとしていた。
いつだってそうだ。
エドに抱き締められると、まるで、天国にいるみたいになる。
それからすぐにフォルツァート伯爵家は、取り潰しになった。が、新しくイーサン・フォルツァートに男爵位が与えられることになった。
俺がそれを知ってから数日後、ミリア嬢とイーサンが俺のもとを訪ねてきた。
エドは、どうしても俺がイーサンと会うのに立ち会うといってきかなかった。
ミリア嬢と現れたイーサンは、髪を短くして紳士の姿をしていた。
まるでミリア嬢の方が姉のようで兄のイーサンは、弟のように思えた。
2人は、俺たちに頭を下げた。
「この度のこと、慈悲をかけてくださりありがとうございました」
ミリア嬢が俺とエドに告げた。
イーサンは、なんだかふてくされているようだった。
「お兄様!」
ミリア嬢がイーサンの手を引っ張った。
「お兄様もリチャード様にお詫びをして!」
「・・あんなことしてすまなかった」
嫌そうに言うイーサンにミリア嬢が眉をしかめる。それを見たイーサンが口を開いた。
「だって!リチャードも僕のこと好きだと思ってたから!僕、リチャードのこと好きだし!それに・・お父様もリチャードは僕のこと好きだって・・」
「イーサン!」
ミリア嬢がぴしゃりと言った。
「あなたは!リチャードに自分がしたことがどんなに非道なことだったか、まだ、わかってないの?」
俺は、目の前でミリア嬢に叱られているイーサンのことを見てため息をついた。
まだまだイーサンは、現実を受け入れられてないのだろう。
無理もないのだ。
イーサンは。
子供の頃からフォルツァート伯爵に虐待を受け、外の世界を知らないまま生きてきたのだ。
いきなり現実世界を突きつけられても戸惑うのは仕方がない。
これから、彼が幸福に生きることを祈るしかない。
ミリア嬢とイーサンが去ってから、エドが俺をぎゅっと抱き締めて囁いた。
「リチャード・・いや、ライナス。もう2度とお前を離さない。もう誰にも、お前を傷つけさせない!」
エドにぎゅうぎゅう、抱き締められて。
俺は、頭がぼうっとしていた。
いつだってそうだ。
エドに抱き締められると、まるで、天国にいるみたいになる。
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