乙女系モブ騎士は、只今絶賛婚活中~子作りを前提にお付き合いを希望しているのになぜか男ばかりに執着されています~

トモモト ヨシユキ

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8 拐われて

8ー8 ミリア嬢

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 8ー8 ミリア嬢

 「なぜ、あなたがここにいるの?」
 その令嬢、ミリア・フォルツァートは、俺を疑わしげな目で見た。
 外が騒がしくなり、俺は、はやく逃げようと窓枠に手をかけようとした。そんな俺にミリア嬢は、低く声をかけた。
 「こっちへ!」
 俺は、ミリア嬢に案内されて廊下に出ずに隣の部屋へと入った。
 そこは、小さな書斎のような場所だった。
 「ここは、お母様が生きていたころに使っておられた執務室よ」
 ミリア嬢は、俺に椅子を進めると自分も書類机の椅子に腰かけた。
 「たぶん・・ここには、誰もこないわ。父も・・兄も、ね」
 彼女は、俺に訊ねた。
 「で?なぜ、行方不明になって捜索されている人が私の家にいるのかしら?」
 「それは・・」
 俺は、ざっくりとかいつまんで事実を話した。ミリア嬢は、顔色を青ざめさせて口許を押さえて執務机にうつむいた。
 「お父様が・・なんてこと!」
 「頼む!」
 俺は、ミリア嬢にすがりつくように頭を下げた。
 「なんとか、俺の・・兄たちに連絡をとってもらえないだろうか?」
 「・・いいわ」
 ミリア嬢は、紙にさらさらっとペンを走らせるとそれを封じた。
 「あなたの家族が迎えにくるまで私の部屋にいるといいわ。私の部屋には、お父様たちは、近づかないから」
 俺とミリア嬢は、そっと足音を潜めて2階にあるミリア嬢の部屋へと向かった。
 屋敷の中は騒がしかったが、誰もミリア嬢の部屋の辺りにはいなかった。
 ミリア嬢は、部屋に俺を招くとソファを進めた。
 俺は、ほんとは、彼女もフォルツァートたちの仲間だと思っていた。
 俺が拐われる原因になった騒動を起こしたのは彼女だったからな。
 だが、彼女は、関わりなかったようだった。
 「なぜ、あの日、俺に果実水をかけたんだ?」
 俺が聞くとミリア嬢は、かぁっと頬を染めた。
 「それは・・あなたのせいで私は、婚約破棄されたからよ!」
 マジで?
 俺は、キョトンとしていた。
 なんで、俺のせいで婚約破棄?
 ミリア嬢は、訳がわからない様子の俺に話した。
 「私は・・エドワード・フィン・アデレイドの婚約者だったのよ」
 「エドの?」
 俺は、初耳で。
 驚きを隠せない俺にミリア嬢がふぅっとため息をついた。
 「まあ、そんな話が出ていたというだけだけどね」
 ミリア嬢は、俺を冷ややかな瞳で見つめた。 
 「まあ・・あの時のことは、私が悪かったわ。謝ります、リチャード様」
 頭を軽く下げるとミリア嬢が俺に訊ねた。
 「あなたは、本当にエドワード様の子を身ごもっておられるの?」
 「ああ」
 俺が頷くと、ミリア嬢が鼻を鳴らした。
 「やはり、助けるのではなかったわ。あなたなんて、お父様たちのおもちゃにされてしまえばよかったのに!」
 
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