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8 拐われて

8ー7 再会

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 8ー7 再会

 「なんで?つまんない!」
 イーサンは、唇を尖らせた。
 「せっかく僕がリチャードのこと隅々まできれいにしてあげようと思ったのに」
 俺は、なんとかイーサンを追い払うと水で身体を洗った。
 水は、氷が浮かんでいてすごく冷たかったけど、今の俺にはありがたかった。
 俺は、凍えるほどに冷たい水で身体を清めるとゆっくりと水に浸かった。
 寒い。
 でも、騎士団の遠征で寒い地方に行ったときもよく水で身体を洗うことがあったし俺は、平気だった。
 俺は、水風呂に浸かって考えていた。
 この屋敷からどうすれば逃げられるか。
 イーサンには悪いが俺は、ここから逃げることしか考えてなかった。
 できれば、イーサンも一緒に逃げられたらいいんだが。
 しかし、今の状態ではそれは、難しいかもしれない。
 父親を盲信しているイーサンに俺がいくら真実を説いたところでどうにもならないだろう。
 俺は、首輪から延びている鎖を手に取った。
 イーサンは、鎖を壁の突起に繋いで俺を1人にしていた。
 俺は、鎖を手にそっと風呂桶からでるとそのまま扉へと歩みよった。
 向こうをうかがうが物音1つしない。
 俺は、そっとドアを開けて様子を伺った。
 イーサンは、ベッドに横たわって眠っていた。
 俺は、ほっと胸を撫で下ろすと足音を潜めて部屋の外へと向かった。
 裸のまま手足に枷をつけ首輪をつけられた俺は、そっと廊下を進んだ。
 と、廊下の向こう側から誰かが歩いてくる足音が聞こえた。
 まずい!
 俺は、とさに近くの扉を開いて飛び込んだ。
 その部屋は、物置のようでいくつかの棚には使用人用のお仕着せが置かれていた。
 俺は、それを身にまとうとそっと部屋の窓から外を眺めた。
 広い庭には雪が降り積もり、世界は、寒々としていた。
 俺は、窓を開けると外に出ようとした。
 「誰?」
 突然、女の声がきこえて俺は、身構えた。
 そこには豪奢な金髪の令嬢の姿があった。
 俺は、その令嬢に見覚えがあった。
 確か、ラミリアの屋敷であったお茶会の席で俺に果実水をかけた令嬢だった。
 
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