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7 新しい命
7ー12 メイド
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7ー12 メイド
冬の王都は、社交の季節だ。
俺は、その日、ジーナス公爵家が開いたお茶会に参加していた。
アデレイド公爵家に嫡男の妻としてはいる以上は、俺もこういった集いに参加していかなくてはならない。
俺は、もともと田舎の男爵家の3男で、貴族としての嗜みなどには詳しくない。
そこでラミリアの母が俺をお茶会に招いてくれたというわけだった。
社交界の令嬢やらマダムたちは、俺に興味をもってくれていたので、かなり好意的に迎えられた。
それでも時には、世間の冷たい風を感じることがあった。
お茶会で出会った豪奢な金髪の令嬢が俺を見て囁いた。
「男娼のくせに!」
はい?
俺は、その令嬢から押し寄せる黒い思念に驚いていた。
それは、なんともおどろおどろしいもので、とても20歳やそこらの少女のものとは思えなかった。
彼女は、俺に持っていた果実水のグラスを投げつけると頭からずぶ濡れになった俺に笑顔を向けた。
「あら、ごめんなさいね。小さいからそこにいるのがわかりませんでしたわ」
「ミリア様!」
ラミリアの母が駆けつけてくれて俺をかばってくれた。
「私のお客様が何かご無礼を?」
アミリアは、その隙に俺を連れ出して空いている客室へと通してくれた。
「ごめんなさいね、リチャード。ミリア様は・・ちょっと事情があって」
「なんの事情だよ?」
俺は、使用人が持ってきてくれた布で髪を拭きながらラミリアに訊ねた。
俺は、頭から果実水をかけられ服までずぶ濡れだった。
「すぐにお湯と着替えを用意させるから待っててくださる?」
ラミリアは、そう言って部屋を出ていった。
俺は、ソファに座るわけにもいかずに立ったまま待っていた。すると、妙に大柄なメイドが入ってきた。
彼女は、ハスキーな声で俺に囁いた。
「お湯をどうぞ、お使いください」
お湯の入った桶を床に置くと彼女は俺の服を脱がせようとした。
俺は、慌てて彼女の手を止めた。
「自分でするから!」
俺は、彼女に背を向けると濡れたシャツを脱いでべたべたしている体を濡らした布で拭っていった。
なんだか視線を感じて振り向くとメイドがじろじろとぶしつけな視線を俺に向けていた。
たぶん、男でありながら妊娠している俺が珍しいのだろう。
俺は、そう思って失礼なメイドを放っておいた。
メイドは、俺の背につぅっと指で触れるとそのハスキーな声で俺に囁いた。
「美しい肌・・羨ましいですわ、リチャード様」
うん?
俺は、ちらっとメイドの方をうかがった。
彼女は、すごく背が高くて黒髪が美しい、まさに大輪の花というような女性だった。
冬の王都は、社交の季節だ。
俺は、その日、ジーナス公爵家が開いたお茶会に参加していた。
アデレイド公爵家に嫡男の妻としてはいる以上は、俺もこういった集いに参加していかなくてはならない。
俺は、もともと田舎の男爵家の3男で、貴族としての嗜みなどには詳しくない。
そこでラミリアの母が俺をお茶会に招いてくれたというわけだった。
社交界の令嬢やらマダムたちは、俺に興味をもってくれていたので、かなり好意的に迎えられた。
それでも時には、世間の冷たい風を感じることがあった。
お茶会で出会った豪奢な金髪の令嬢が俺を見て囁いた。
「男娼のくせに!」
はい?
俺は、その令嬢から押し寄せる黒い思念に驚いていた。
それは、なんともおどろおどろしいもので、とても20歳やそこらの少女のものとは思えなかった。
彼女は、俺に持っていた果実水のグラスを投げつけると頭からずぶ濡れになった俺に笑顔を向けた。
「あら、ごめんなさいね。小さいからそこにいるのがわかりませんでしたわ」
「ミリア様!」
ラミリアの母が駆けつけてくれて俺をかばってくれた。
「私のお客様が何かご無礼を?」
アミリアは、その隙に俺を連れ出して空いている客室へと通してくれた。
「ごめんなさいね、リチャード。ミリア様は・・ちょっと事情があって」
「なんの事情だよ?」
俺は、使用人が持ってきてくれた布で髪を拭きながらラミリアに訊ねた。
俺は、頭から果実水をかけられ服までずぶ濡れだった。
「すぐにお湯と着替えを用意させるから待っててくださる?」
ラミリアは、そう言って部屋を出ていった。
俺は、ソファに座るわけにもいかずに立ったまま待っていた。すると、妙に大柄なメイドが入ってきた。
彼女は、ハスキーな声で俺に囁いた。
「お湯をどうぞ、お使いください」
お湯の入った桶を床に置くと彼女は俺の服を脱がせようとした。
俺は、慌てて彼女の手を止めた。
「自分でするから!」
俺は、彼女に背を向けると濡れたシャツを脱いでべたべたしている体を濡らした布で拭っていった。
なんだか視線を感じて振り向くとメイドがじろじろとぶしつけな視線を俺に向けていた。
たぶん、男でありながら妊娠している俺が珍しいのだろう。
俺は、そう思って失礼なメイドを放っておいた。
メイドは、俺の背につぅっと指で触れるとそのハスキーな声で俺に囁いた。
「美しい肌・・羨ましいですわ、リチャード様」
うん?
俺は、ちらっとメイドの方をうかがった。
彼女は、すごく背が高くて黒髪が美しい、まさに大輪の花というような女性だった。
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