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5 2人の番
5ー13 特技
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5ー13 特技
王都の冬がきた。
本格的な社交シーズンが始まろうとしていた。
俺は、本来なら嫁探しをしなくてはいけないのだが兄達によって家に隠されるようにして過ごしていた。
まるで深窓の令嬢だな。
俺は、苦笑いしていた。
兄達は、俺を過保護に扱っていた。
そんな兄達がある夜、俺を夜会に連れ出した。
それは、ラミリアの家で開かれる夜会で。
ラミリアとその婚約者のためのお披露目のパーティーだった。
俺は、気がのらなかったが行くことにした。
例えふられたとはいえ、今でもラミリアは、俺の大切な友人だった。
きちんと婚約を祝ってやりたい。
俺は、ラミリアのために兄達に台所を借りて焼菓子を作った。
木の実の粉を練り込んだ焼菓子だ。
兄達が甘い香りに誘われて厨房に顔を出したので俺は、試食を頼むことにした。
これは、俺が前世で覚えた菓子の作り方をアレンジして作った菓子だ。
俺がドキドキしていると一口齧ったクリストファー兄が驚いた顔で俺に告げた。
「うまい!」
「ああ、こんなうまい菓子食べたことがない」
ロベルト兄も頷いた。
まあ、ロベルト兄の言葉はちょっと大袈裟だけど俺は、満足して菓子を紙で包むと可愛らしい箱に詰めて美しいレースで包装しピンクのリボンをかけた。
兄達は、俺の隠れた特技に驚いていた。
俺は、夜会に向かう馬車の中で兄達に笑って話した。
「菓子作りだけじゃないよ。ぬいぐるみも作れるし」
「そうなのか?」
ロベルト兄が感心した様子で俺を見ていた。
「ばあ様の影響か?お前は、ばあ様にべったりだったしな」
まあ、それもあるかもしれない。
俺は、プレゼントの箱を見つめて微笑んだ。
「ばあ様には、返しきれないほどの恩があるから。なんとかばあ様にひ孫をみせてやりたいな」
はっと兄達が顔を見合わせる。
俺もはっと息を飲んだ。
まるで、俺が番の子を産みたがってるみたいだし!
「いや、これは!」
俺が慌てて言いかけると兄達は、俺に向かってこくこくと頷いた。
「わかっている。安心しろ、リチャード」
「私たちは、常に一番のお前の味方だ」
クリストファー兄が俺に微笑みかけた。
王都の冬がきた。
本格的な社交シーズンが始まろうとしていた。
俺は、本来なら嫁探しをしなくてはいけないのだが兄達によって家に隠されるようにして過ごしていた。
まるで深窓の令嬢だな。
俺は、苦笑いしていた。
兄達は、俺を過保護に扱っていた。
そんな兄達がある夜、俺を夜会に連れ出した。
それは、ラミリアの家で開かれる夜会で。
ラミリアとその婚約者のためのお披露目のパーティーだった。
俺は、気がのらなかったが行くことにした。
例えふられたとはいえ、今でもラミリアは、俺の大切な友人だった。
きちんと婚約を祝ってやりたい。
俺は、ラミリアのために兄達に台所を借りて焼菓子を作った。
木の実の粉を練り込んだ焼菓子だ。
兄達が甘い香りに誘われて厨房に顔を出したので俺は、試食を頼むことにした。
これは、俺が前世で覚えた菓子の作り方をアレンジして作った菓子だ。
俺がドキドキしていると一口齧ったクリストファー兄が驚いた顔で俺に告げた。
「うまい!」
「ああ、こんなうまい菓子食べたことがない」
ロベルト兄も頷いた。
まあ、ロベルト兄の言葉はちょっと大袈裟だけど俺は、満足して菓子を紙で包むと可愛らしい箱に詰めて美しいレースで包装しピンクのリボンをかけた。
兄達は、俺の隠れた特技に驚いていた。
俺は、夜会に向かう馬車の中で兄達に笑って話した。
「菓子作りだけじゃないよ。ぬいぐるみも作れるし」
「そうなのか?」
ロベルト兄が感心した様子で俺を見ていた。
「ばあ様の影響か?お前は、ばあ様にべったりだったしな」
まあ、それもあるかもしれない。
俺は、プレゼントの箱を見つめて微笑んだ。
「ばあ様には、返しきれないほどの恩があるから。なんとかばあ様にひ孫をみせてやりたいな」
はっと兄達が顔を見合わせる。
俺もはっと息を飲んだ。
まるで、俺が番の子を産みたがってるみたいだし!
「いや、これは!」
俺が慌てて言いかけると兄達は、俺に向かってこくこくと頷いた。
「わかっている。安心しろ、リチャード」
「私たちは、常に一番のお前の味方だ」
クリストファー兄が俺に微笑みかけた。
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