乙女系モブ騎士は、只今絶賛婚活中～子作りを前提にお付き合いを希望しているのになぜか男ばかりに執着されています～

3 婚活どころじゃありません！

3ー10 エチュード

　３ー１０　エチュード

　次の休暇に俺は、エドワードに誘われて王立劇場に観劇に訪れていた。
　俺は、王都から離れた場所に領地がある男爵家の三男だし、王立劇場など来るのは初めてだった。
　昼過ぎにアデレイド公爵家に来るようにエドワードから告げられていたので俺は、昼頃に貴族街にあるアデレイド公爵家に足を運んだ。
　ドアをノックすると若い金髪の優男の執事見習いが俺を向かえ、すぐにエドワードの部屋へと案内してくれた。
　エドワードは、熱心にピアノの演奏をしていて、俺たちが部屋に入ってくるのにも気づかないようだった。
　それは、古い楽聖が作曲したエチュードで俺でも聞いたことがあるような有名な曲だった。
　俺は、エドワードが演奏している背後の椅子に腰かけるように執事見習いにいわれて座って演奏しているエドワードを眺めていた。
　肩まで伸びた黒髪がエドワードが力強く鍵盤を叩く度にふわりと揺れる。
　エドワードは、完全に自分の世界に集中しているらしくいつも駄々漏れの思念もきこえることはなかった。
　『魔王』ともいわれる凍えるほどに美しい横顔に俺は、みいっていた。
　劇的なフョルテッシモで曲が終わると俺は、思わず拍手をしていた。
　一瞬、エドワードは、ここがどこなのかもわからないという様子でぼんやりと楽譜を眺めていたが、俺の拍手の音に我にかえって背後を振り向いた。
　「リチャード？」
　「すみません。演奏中に失礼しました。素晴らしい演奏でした、エドワード様」
　俺が言うとエドワードがほのかに頬を赤らめた。
　俺は、その艶やかな様に驚きを隠せなかった。
　同じ男であり、キスなどもされた間柄だったが、今までただの公爵家のお坊っちゃんとしか思っていなかったのだが、こんな色気のある人物だったとは。
　というかこれならどんな令嬢だって５秒で落とせるに違いない。
　俺がそう思っているとエドワードが立ち上がってこちらに歩いてきた。
　『そんな熱い眼差しで私を見つめて。なんて、可愛らしい表情をしているのか。うっすらと頬を薔薇色に染めて私を見つめる様は、まるで恋に落ちたばかりの妖精のように可憐だ』
　恋に落ちた？
　そんなことがあるわけがないだろう！
　俺は、近づいてくるエドワードのいつもと変わらない無表情な顔をまじまじと見上げていた。
　「あの・・今日は、観劇にお誘いいただいてありがとうございます。ですが、俺、は、観劇は初めてでして。無作法をしてしまったら申し訳ない」