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3 婚活どころじゃありません!
3ー6 ラムナ・リグニアス
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3ー6 ラムナ・リグニアス
「ずいぶんと奇遇だが・・君も本を買いに?」
エドワードに訊ねられて俺は、きっぱりと答えた。
「いえ、今日は、親しい友人の付き添いで来たんです」
俺は、エドワードににっこりと微笑んだ。エドワードは、いつもの無表情さを崩すこともなかったが、心の中が大変なことになっていた。
『親しい友人、だって?リチャードに騎士団以外に友人がいるのか?誰だ?まさか、どこかのご令嬢か?いや。そんなことはないだろう。リチャードには、特に噂されている相手もいないし。しかし、もしかしたら私の他にもリチャードの魅力に気づいている者がいないとも限らないし。ああっ、いったい誰と休日を過ごしているんだ?婚活もせずに過ごすほどの相手とは、いったい誰なんだ?』
そのとき、支払いをすませたラミリアが俺のもとに近づいてきた。
「お待たせしてしまってごめんなさいね、リチャード」
『なんだ?この令嬢は?』
思わず耳を塞ぎたくなるような大音声の思念に俺は、びくっとしてしまった。
俺と話していた客がエドワード・フィン・アデレイドだと気づいたラミリアがしまった、という様に口許を手で押さえる。
「私・・お話し中とは気づかなくて、失礼いたしました」
ラミリアが淑女の礼をとるとエドワードが微かに口許を緩ませる。
「これは、ジーナス公爵家のラミリア嬢。このような場所でお目にかかれるとは光栄です」
エドワードが紳士の礼をとるが実は、俺以外の男が苦手なラミリアは、硬直してしまっていた。
『ジーナス公爵家のラミリア嬢、か。確か、数年前に何度か夜会で会ったことがあったかな?なんでも男性が苦手とか聞いていたんだが・・あの彼女がなぜ、リチャードと一緒にいるんだ?それもかなり親しげにしているようだ。まさか、彼女がリチャードの恋人?そんなことは、信じられないが・・』
ふと、ラミリアがエドワードの持っている本に気づいてあっと、小さく声を上げた。
「それ・・『ラムナ・リグニアス』の新作では?」
ラミリアに指摘されたエドワードが頷いた。
「ああ、確かにそうだが。何か、問題でも?」
凍てつくような金色の瞳に射貫かれてラミリアが怯んだ。
俺は、ラミリアをかばうように前に出ると何気なくエドワードに訊ねた。
「あなたが、『ラムナ・リグニアス』の本を読まれるとは思っておりませんでした」
エドワードが珍しく眉をしかめた。
「少し、話せるかな?リチャード」
「ずいぶんと奇遇だが・・君も本を買いに?」
エドワードに訊ねられて俺は、きっぱりと答えた。
「いえ、今日は、親しい友人の付き添いで来たんです」
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そのとき、支払いをすませたラミリアが俺のもとに近づいてきた。
「お待たせしてしまってごめんなさいね、リチャード」
『なんだ?この令嬢は?』
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俺と話していた客がエドワード・フィン・アデレイドだと気づいたラミリアがしまった、という様に口許を手で押さえる。
「私・・お話し中とは気づかなくて、失礼いたしました」
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「これは、ジーナス公爵家のラミリア嬢。このような場所でお目にかかれるとは光栄です」
エドワードが紳士の礼をとるが実は、俺以外の男が苦手なラミリアは、硬直してしまっていた。
『ジーナス公爵家のラミリア嬢、か。確か、数年前に何度か夜会で会ったことがあったかな?なんでも男性が苦手とか聞いていたんだが・・あの彼女がなぜ、リチャードと一緒にいるんだ?それもかなり親しげにしているようだ。まさか、彼女がリチャードの恋人?そんなことは、信じられないが・・』
ふと、ラミリアがエドワードの持っている本に気づいてあっと、小さく声を上げた。
「それ・・『ラムナ・リグニアス』の新作では?」
ラミリアに指摘されたエドワードが頷いた。
「ああ、確かにそうだが。何か、問題でも?」
凍てつくような金色の瞳に射貫かれてラミリアが怯んだ。
俺は、ラミリアをかばうように前に出ると何気なくエドワードに訊ねた。
「あなたが、『ラムナ・リグニアス』の本を読まれるとは思っておりませんでした」
エドワードが珍しく眉をしかめた。
「少し、話せるかな?リチャード」
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