34 / 117
3 婚活どころじゃありません!
3ー6 ラムナ・リグニアス
しおりを挟む
3ー6 ラムナ・リグニアス
「ずいぶんと奇遇だが・・君も本を買いに?」
エドワードに訊ねられて俺は、きっぱりと答えた。
「いえ、今日は、親しい友人の付き添いで来たんです」
俺は、エドワードににっこりと微笑んだ。エドワードは、いつもの無表情さを崩すこともなかったが、心の中が大変なことになっていた。
『親しい友人、だって?リチャードに騎士団以外に友人がいるのか?誰だ?まさか、どこかのご令嬢か?いや。そんなことはないだろう。リチャードには、特に噂されている相手もいないし。しかし、もしかしたら私の他にもリチャードの魅力に気づいている者がいないとも限らないし。ああっ、いったい誰と休日を過ごしているんだ?婚活もせずに過ごすほどの相手とは、いったい誰なんだ?』
そのとき、支払いをすませたラミリアが俺のもとに近づいてきた。
「お待たせしてしまってごめんなさいね、リチャード」
『なんだ?この令嬢は?』
思わず耳を塞ぎたくなるような大音声の思念に俺は、びくっとしてしまった。
俺と話していた客がエドワード・フィン・アデレイドだと気づいたラミリアがしまった、という様に口許を手で押さえる。
「私・・お話し中とは気づかなくて、失礼いたしました」
ラミリアが淑女の礼をとるとエドワードが微かに口許を緩ませる。
「これは、ジーナス公爵家のラミリア嬢。このような場所でお目にかかれるとは光栄です」
エドワードが紳士の礼をとるが実は、俺以外の男が苦手なラミリアは、硬直してしまっていた。
『ジーナス公爵家のラミリア嬢、か。確か、数年前に何度か夜会で会ったことがあったかな?なんでも男性が苦手とか聞いていたんだが・・あの彼女がなぜ、リチャードと一緒にいるんだ?それもかなり親しげにしているようだ。まさか、彼女がリチャードの恋人?そんなことは、信じられないが・・』
ふと、ラミリアがエドワードの持っている本に気づいてあっと、小さく声を上げた。
「それ・・『ラムナ・リグニアス』の新作では?」
ラミリアに指摘されたエドワードが頷いた。
「ああ、確かにそうだが。何か、問題でも?」
凍てつくような金色の瞳に射貫かれてラミリアが怯んだ。
俺は、ラミリアをかばうように前に出ると何気なくエドワードに訊ねた。
「あなたが、『ラムナ・リグニアス』の本を読まれるとは思っておりませんでした」
エドワードが珍しく眉をしかめた。
「少し、話せるかな?リチャード」
「ずいぶんと奇遇だが・・君も本を買いに?」
エドワードに訊ねられて俺は、きっぱりと答えた。
「いえ、今日は、親しい友人の付き添いで来たんです」
俺は、エドワードににっこりと微笑んだ。エドワードは、いつもの無表情さを崩すこともなかったが、心の中が大変なことになっていた。
『親しい友人、だって?リチャードに騎士団以外に友人がいるのか?誰だ?まさか、どこかのご令嬢か?いや。そんなことはないだろう。リチャードには、特に噂されている相手もいないし。しかし、もしかしたら私の他にもリチャードの魅力に気づいている者がいないとも限らないし。ああっ、いったい誰と休日を過ごしているんだ?婚活もせずに過ごすほどの相手とは、いったい誰なんだ?』
そのとき、支払いをすませたラミリアが俺のもとに近づいてきた。
「お待たせしてしまってごめんなさいね、リチャード」
『なんだ?この令嬢は?』
思わず耳を塞ぎたくなるような大音声の思念に俺は、びくっとしてしまった。
俺と話していた客がエドワード・フィン・アデレイドだと気づいたラミリアがしまった、という様に口許を手で押さえる。
「私・・お話し中とは気づかなくて、失礼いたしました」
ラミリアが淑女の礼をとるとエドワードが微かに口許を緩ませる。
「これは、ジーナス公爵家のラミリア嬢。このような場所でお目にかかれるとは光栄です」
エドワードが紳士の礼をとるが実は、俺以外の男が苦手なラミリアは、硬直してしまっていた。
『ジーナス公爵家のラミリア嬢、か。確か、数年前に何度か夜会で会ったことがあったかな?なんでも男性が苦手とか聞いていたんだが・・あの彼女がなぜ、リチャードと一緒にいるんだ?それもかなり親しげにしているようだ。まさか、彼女がリチャードの恋人?そんなことは、信じられないが・・』
ふと、ラミリアがエドワードの持っている本に気づいてあっと、小さく声を上げた。
「それ・・『ラムナ・リグニアス』の新作では?」
ラミリアに指摘されたエドワードが頷いた。
「ああ、確かにそうだが。何か、問題でも?」
凍てつくような金色の瞳に射貫かれてラミリアが怯んだ。
俺は、ラミリアをかばうように前に出ると何気なくエドワードに訊ねた。
「あなたが、『ラムナ・リグニアス』の本を読まれるとは思っておりませんでした」
エドワードが珍しく眉をしかめた。
「少し、話せるかな?リチャード」
620
お気に入りに追加
1,252
あなたにおすすめの小説
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
薄幸な子爵は捻くれて傲慢な公爵に溺愛されて逃げられない
くまだった
BL
アーノルド公爵公子に気に入られようと常に周囲に人がいたが、没落しかけているレイモンドは興味がないようだった。アーノルドはそのことが、面白くなかった。ついにレイモンドが学校を辞めてしまって・・・
捻くれ傲慢公爵→→→→→貧困薄幸没落子爵
最後のほうに主人公では、ないですが人が亡くなるシーンがあります。
地雷の方はお気をつけください。
ムーンライトさんで、先行投稿しています。
感想いただけたら嬉しいです。
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する
竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。
幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。
白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる