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2 婚活の邪魔をしないでくれよ!

2ー9 秘密

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 2ー9 秘密

 「それで?」
 ラミリアがぎらぎらした目で俺を見つめて促した。
 「彼は、あなたにどう答えたの?」
 あれから数日が過ぎていた。
 俺は、次の休日にラミリアのもとを訪ねていた。それは、例の計画についてラミリアに相談するためだったのだが、話は、いつの間にかこの前の失敗に終わった見合いの話になっていた。
 「それは・・秘密、だ」
 いいながら俺は、頬が熱くなるのを感じていた。俺は、ラミリアから顔を隠すようにうつむいて布を縫う手を動かし続けた。
 今、俺が縫っているのは、ミミアちゃんの洋服だった。ミミアちゃんというのは、俺がこの前作ったうさぎのぬいぐるみの名前だ。
 ラミリアは、俺がミミアちゃんの洋服を縫っているのを黙って見ていたが、やがて優しい声音で話した。
 「正直に話してくださいませ、リチャード。さもなくば、あなたの相談にものることができませんから」
 「嘘、だな、ラミリア。君は、俺の話を聞きたいだけだろう?」
 俺は、縫っていた布をテーブルに置くとラミリアから逃れるように立ち上がり部屋の隅に置かれたワゴンまで行きカップに熱い紅茶を注いだ。
 二人分用意するとそれを持ってソファに戻りラミリアに一つ手渡す。
 「ありがとう、リチャード」
 ラミリアは、カップを受けとるとごくっと紅茶を飲み干し、カップをテーブルに乱暴に置いた。
 「質問を変えるわ、リチャード」
 ラミリアが俺に指先を突きつけると言い放った。
 「あなたとエドワード様の間にいったい何があったの?馬車の中、二人っきり。そして、二人は愛し合っている!もう、何があっても不思議ではないわ!」
 「いやっ!何かあったら不思議だよ!第一、俺たちは、愛し合ってなんてないし!」
 俺は、思わず声をあげていた。ラミリアが俺を見つめて訊ねた。
 「では、二人の間には何もなかった、とおっしゃるのね?リチャード・ライナス」
 俺は、言葉につまっていた。
 それを見て、ラミリアは、鼻の穴を広げてんふぅっと興奮した様子で俺に迫った。
 「やっぱり、何かありましたのね?」
 ラミリアの思念がぶわっと俺に押し寄せる。
 「正直にお話しなさいな!そうすれば、少しは、胸のつかえもとれるというものですわ!」
 俺は、テーブルの上にカップを置くとミミアちゃんの洋服をとり針を刺しながら小声で言った。
 「・・・ス・・」
 「なんですって?」
 ラミリアに問われて俺は、慌てて答えた。
 「いや、なんでもない、から!」
 
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