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2 婚活の邪魔をしないでくれよ!
2ー3 騎士の任務
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2ー3 騎士の任務
俺は、アデレイド公爵家での出来事をすべて忘れて騎士としての任務に専念していた。
王都の近くの街道で魔物が出現したため、俺の所属する第3騎士団が派遣されることになり、俺は、しばらく王都を離れていたのだ。
街道付近に現れた魔物は、牛のような魔物であるゴートだった。リィンたちは、目を血走らせて魔物を狩っていた。
無理もない。
ゴートの肉は、とても高値で取引されていて、ちょっとした小遣い稼ぎになるのだ。
王都の騎士団の団員が、と思うべからず。
騎士団の団員は、貴族の3男、4男が多い。
家を継ぐわけでもない者にとっては、自由にできる金はありがたいものだ。
「いいか!1頭たりとも逃すな!」
レイダース騎士団長が叫ぶと、みな、おうっ!と答えた。
普段は、ぐうたらで大酒飲みな連中とは思えない。みな、次々とゴートの群れに飛び込んで行く。
俺もすかさず後方から矢を射て仲間たちの援護をする。
騎士団員たちは、笑顔で巨大な獲物を倒していく。みな、口々に何やら叫んでいる。
「待っててくれよ!エリサ!」
「酒だ!王都に戻ったら酒盛りだっ!」
どっちが魔物だかわからないな。
俺は、押し寄せてくる淀んだ思念にため息をついた。
ふと、エドワードのことが浮かぶ。
『ただ、この私のためだけに哭かせたい』
彼の熱い思いが甦ってきて、俺は、ぶるっと震えた。
しっかりしろ!俺。
そのとき、前方からレイダース騎士団長の怒声が聞こえた。
「リチャード!何をぼうっとしている!」
俺は、はっとして前方を見た。
すぐそばにゴートが迫ってきていた。
しまった!
俺は、慌てて弓をつがえるが間に合わない。
俺は、思わず目を閉じて身を固くした。
そのとき、ざん、と鈍い音が聞こえた。
血の臭い。
俺は、恐る恐る目を開いた。
「怪我はないか?リチャード」
巨大な魔物の死骸のそばに燃えるような赤毛の大男が立っていた。俺は、弾かれるように答えた。
「はいっ!レイダース騎士団長!」
「ならいいが」
レイダース騎士団長がぎん、と俺を冷ややかな目で見下ろした。
「戦場で気を抜けば死ぬことになるぞ!」
俺は、レイダース騎士団長の覇気に思わず後ずさった。
そのとき。
『俺は、なんてバカなんだ』
それは、レイダース騎士団長の思念だった。
俺は、ぎょっとしていた。
いや。
本来、俺のこの心を読む力は、そんな強いものではない。だいたいが、気配を察知できるといったぐらいのものでこんなはっきりと思念が読めることはない。
まあ、エドワードは、特別だが。
俺にもなんで彼の思念だけがあんなにもくっきりはっきり伝わってくるのかわからない。
それが、今、レイダース騎士団長の思念がびんびん伝わってきている?
『俺は、ほんとになんて間抜けなんだ。ここで優しい言葉の一つもかけてやれればリチャードのためにもなるのに。いつも、俺は、リチャードに辛く当たってしまう。こんなにも愛おしく思っているのに』
はい?
俺は、まじまじと目の前の強面を見上げていた。
「なんだ?俺の顔に何かついてるのか?」
『リチャードが!こんなにも、俺を見つめてくれている!なんだ?この胸のときめきは!落ち着け!俺。今は、任務中だぞ!俺がこんな浮わついていては、リチャードを守ることなどできん!』
俺は、首を傾げた。
これは、幻聴か?
まさか、騎士の中の騎士であるレイダース騎士団長がこんなこと考えてるわけがないし!
俺は、アデレイド公爵家での出来事をすべて忘れて騎士としての任務に専念していた。
王都の近くの街道で魔物が出現したため、俺の所属する第3騎士団が派遣されることになり、俺は、しばらく王都を離れていたのだ。
街道付近に現れた魔物は、牛のような魔物であるゴートだった。リィンたちは、目を血走らせて魔物を狩っていた。
無理もない。
ゴートの肉は、とても高値で取引されていて、ちょっとした小遣い稼ぎになるのだ。
王都の騎士団の団員が、と思うべからず。
騎士団の団員は、貴族の3男、4男が多い。
家を継ぐわけでもない者にとっては、自由にできる金はありがたいものだ。
「いいか!1頭たりとも逃すな!」
レイダース騎士団長が叫ぶと、みな、おうっ!と答えた。
普段は、ぐうたらで大酒飲みな連中とは思えない。みな、次々とゴートの群れに飛び込んで行く。
俺もすかさず後方から矢を射て仲間たちの援護をする。
騎士団員たちは、笑顔で巨大な獲物を倒していく。みな、口々に何やら叫んでいる。
「待っててくれよ!エリサ!」
「酒だ!王都に戻ったら酒盛りだっ!」
どっちが魔物だかわからないな。
俺は、押し寄せてくる淀んだ思念にため息をついた。
ふと、エドワードのことが浮かぶ。
『ただ、この私のためだけに哭かせたい』
彼の熱い思いが甦ってきて、俺は、ぶるっと震えた。
しっかりしろ!俺。
そのとき、前方からレイダース騎士団長の怒声が聞こえた。
「リチャード!何をぼうっとしている!」
俺は、はっとして前方を見た。
すぐそばにゴートが迫ってきていた。
しまった!
俺は、慌てて弓をつがえるが間に合わない。
俺は、思わず目を閉じて身を固くした。
そのとき、ざん、と鈍い音が聞こえた。
血の臭い。
俺は、恐る恐る目を開いた。
「怪我はないか?リチャード」
巨大な魔物の死骸のそばに燃えるような赤毛の大男が立っていた。俺は、弾かれるように答えた。
「はいっ!レイダース騎士団長!」
「ならいいが」
レイダース騎士団長がぎん、と俺を冷ややかな目で見下ろした。
「戦場で気を抜けば死ぬことになるぞ!」
俺は、レイダース騎士団長の覇気に思わず後ずさった。
そのとき。
『俺は、なんてバカなんだ』
それは、レイダース騎士団長の思念だった。
俺は、ぎょっとしていた。
いや。
本来、俺のこの心を読む力は、そんな強いものではない。だいたいが、気配を察知できるといったぐらいのものでこんなはっきりと思念が読めることはない。
まあ、エドワードは、特別だが。
俺にもなんで彼の思念だけがあんなにもくっきりはっきり伝わってくるのかわからない。
それが、今、レイダース騎士団長の思念がびんびん伝わってきている?
『俺は、ほんとになんて間抜けなんだ。ここで優しい言葉の一つもかけてやれればリチャードのためにもなるのに。いつも、俺は、リチャードに辛く当たってしまう。こんなにも愛おしく思っているのに』
はい?
俺は、まじまじと目の前の強面を見上げていた。
「なんだ?俺の顔に何かついてるのか?」
『リチャードが!こんなにも、俺を見つめてくれている!なんだ?この胸のときめきは!落ち着け!俺。今は、任務中だぞ!俺がこんな浮わついていては、リチャードを守ることなどできん!』
俺は、首を傾げた。
これは、幻聴か?
まさか、騎士の中の騎士であるレイダース騎士団長がこんなこと考えてるわけがないし!
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