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1ー11 胸の高鳴り?
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1ー11 胸の高鳴り?
アデレイド公爵家の舞踏会の夜。
俺がエドワードから送られた金縁のある濃い藍色の礼服に着替えて騎士団の寮を出るとそこには漆黒の闇から抜け出てきたような黒い馬車が待ち構えていた。
薄い金髪の中年の御者が俺に向かって礼をした。
「リチャード・ライナス・トマソンズ様、お迎えに上がりました」
抵抗する間もなく馬車に押し込まれ、俺がはっと我にかえるとすでに馬車は、走り出していた。
馬車の中は、赤いビロード張りの豪華な造りになっていた。
俺は、ふかふかの座面に腰かけて落ち着かずにきょろきょろとしていた。
男爵家にだって馬車はあるが、こんな乗り心地がいいもんじゃない。
ばあ様の馬車以外は、とても乗れたもんじゃなかった。
それに。
この馬車は、なんだかいい匂いがする。
俺は、知らず知らずにエドワード・フィン・アデレイドのことを考えていた。
少し甘い麝香のような香りは、彼との晩餐のときにも感じた匂いだった。
この馬車に彼も乗ることがあるのだろうか。
そんなことを考えている内に貴族街にあるアデレイド公爵家に到着し、馬車が停車した。
ドアが開き俺が外に出ると、そこにはエドワードの姿があった。
黒い礼服を身にまとった彼は、まるで魔王のような威厳があって、俺は、ごくっと息を飲んだ。
エドワードは、俺に手を差し出して俺に笑顔を向けた。
「よく来てくれたね、リチャード」
『ああ。
やっぱり君には、この色が似合う。というか気づかれてる?そっと私の色を忍ばせているが、彼は、気づいているのかな?』
はい?
俺は、エドワードの手をとり体をふるっと震わせた。
いやいやいや!
ありえないし!
エドワードの色、だって?
俺は、服の袖を縁取る金色の刺繍を見た。
確かに。
これは、エドワードの瞳の色だが、誰がこんな抜いとり的なものにまで気がつくってんだ?
馬車から降りたときに、少しよろけてしまった俺をエドワードが抱き止める。
『ふわっ!
天使が私の腕の中に!』
俺は、ぎょっとしてエドワードを見上げた。が、エドワードは、表情一つ変えずに俺に訊ねた。
「どうかした?リチャード」
「いや・・」
俺は、体勢を建て直すとエドワードから体を離して彼に礼をとった。
「今夜はお招きいただきありがとうございます、それに、過分な贈り物までいただき・・感謝しております、エドワード、様」
思わずいつもの感じで呼び捨てにしそうになって俺は、慌てていた。
まずかったかな?
いや。
ぜんぜん、大丈夫だった。
エドワードは、表情は、いつもと変わりなかったが、心の中は、すごいことになっていた。
『もしかして、今、リチャードが私のことを名前で呼んだ?信じられない!なんだ?この感じ。今まで感じたことがないこの胸のときめきは、なんだ?ああ、胸が高鳴る!』
アデレイド公爵家の舞踏会の夜。
俺がエドワードから送られた金縁のある濃い藍色の礼服に着替えて騎士団の寮を出るとそこには漆黒の闇から抜け出てきたような黒い馬車が待ち構えていた。
薄い金髪の中年の御者が俺に向かって礼をした。
「リチャード・ライナス・トマソンズ様、お迎えに上がりました」
抵抗する間もなく馬車に押し込まれ、俺がはっと我にかえるとすでに馬車は、走り出していた。
馬車の中は、赤いビロード張りの豪華な造りになっていた。
俺は、ふかふかの座面に腰かけて落ち着かずにきょろきょろとしていた。
男爵家にだって馬車はあるが、こんな乗り心地がいいもんじゃない。
ばあ様の馬車以外は、とても乗れたもんじゃなかった。
それに。
この馬車は、なんだかいい匂いがする。
俺は、知らず知らずにエドワード・フィン・アデレイドのことを考えていた。
少し甘い麝香のような香りは、彼との晩餐のときにも感じた匂いだった。
この馬車に彼も乗ることがあるのだろうか。
そんなことを考えている内に貴族街にあるアデレイド公爵家に到着し、馬車が停車した。
ドアが開き俺が外に出ると、そこにはエドワードの姿があった。
黒い礼服を身にまとった彼は、まるで魔王のような威厳があって、俺は、ごくっと息を飲んだ。
エドワードは、俺に手を差し出して俺に笑顔を向けた。
「よく来てくれたね、リチャード」
『ああ。
やっぱり君には、この色が似合う。というか気づかれてる?そっと私の色を忍ばせているが、彼は、気づいているのかな?』
はい?
俺は、エドワードの手をとり体をふるっと震わせた。
いやいやいや!
ありえないし!
エドワードの色、だって?
俺は、服の袖を縁取る金色の刺繍を見た。
確かに。
これは、エドワードの瞳の色だが、誰がこんな抜いとり的なものにまで気がつくってんだ?
馬車から降りたときに、少しよろけてしまった俺をエドワードが抱き止める。
『ふわっ!
天使が私の腕の中に!』
俺は、ぎょっとしてエドワードを見上げた。が、エドワードは、表情一つ変えずに俺に訊ねた。
「どうかした?リチャード」
「いや・・」
俺は、体勢を建て直すとエドワードから体を離して彼に礼をとった。
「今夜はお招きいただきありがとうございます、それに、過分な贈り物までいただき・・感謝しております、エドワード、様」
思わずいつもの感じで呼び捨てにしそうになって俺は、慌てていた。
まずかったかな?
いや。
ぜんぜん、大丈夫だった。
エドワードは、表情は、いつもと変わりなかったが、心の中は、すごいことになっていた。
『もしかして、今、リチャードが私のことを名前で呼んだ?信じられない!なんだ?この感じ。今まで感じたことがないこの胸のときめきは、なんだ?ああ、胸が高鳴る!』
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