上 下
2 / 117
1 婚活始めました!

1ー2 女神の祝福

しおりを挟む
 1ー2 女神の祝福

 俺が祖母の屋敷に駆け込むと祖母は、危篤どころか優雅に薔薇の花びらを浮かべた紅茶を味わっていた。
 いつもと変わらないその美しい姿に俺がほっと胸を撫で下ろしつつも戸惑いを隠せずにいるのを見て祖母は、優美な笑みを口許に浮かべた。
 「私、そろそろひ孫が見たくなりました」
 はい?
 俺は、信じられずにぽっかーんとしていた。
 ひまご?
 何それ?
 うまいの?
 祖母は、立ち尽くしている俺に椅子をすすめ、祖母付きのメイドがお茶の入ったカップを置く。
 「あなたの兄たちは、ほんとに唐変木ばかり。待ってても、ひ孫なんて見せてはくれそうにないわ」
 俺は、落ち着くためにもいい香りがするお茶を一口飲んだ。祖母は、ふぅっとため息をつく。
 「このままだと私は、永遠にひ孫を見ることなくあの世へいくことになりそう。そこで、リチャード・ライナス。あなたを呼び戻すことにしたの」
 祖母は、ふふっと可愛らしく恥じらうように目を伏せた。
 「あなたは、女の子に免疫はないけれど、騎士団員ですもの。きっと、その気になれば嫁の一人や二人、すぐに見つけられるでしょう?」
 いや。
 俺は、口をはくはくとしていた。
 今まで女が近寄らなかった者が急に嫁を手に入れることなんて無理ですよ?
 騎士団員だから、って、ばあ様、いったい騎士団員をなんだと思っている?
 そりゃ、先輩たちの中には女をとっかえひっかえしてる人もいるが、俺には、無理!
 もともとが王立学園でも男ばかりの騎士科出身だし!
 ほぼほぼ男子校だし!
 しかも。
 俺には、ばあ様にも知らせてない秘密があった。
 それは。
 俺には、前世の記憶があるということ。
 しかも、俺の前世は、まったく今以上に女っ気がなかった。
 中学高校と男子校。
 そして、高校卒業の春に俺は、事故で死んだ。
 そう。
 俺は、生涯DTだった。
 それは、この現世でも同じだった。
 というのも俺には、女神の祝福が与えられていたから。
 女神の祝福。
 それは、いわゆる特殊な能力のことだ。
 あるものは、怪我や病気を癒す力を持ち、また、あるものは、とんでもない怪力を与えられたりしていた。
 俺に与えられたのは、もっとイヤな力だった。
 俺に与えられた女神の祝福は、他人の心が読める力だった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

英雄の恋人(♂)を庇って死ぬモブキャラですが死にたくないので庇いませんでした

月歌(ツキウタ)
BL
自分が適当に書いたBL小説に転生してしまった男の話。男しか存在しないBL本の異世界に転生したモブキャラの俺。英雄の恋人(♂)である弟を庇って死ぬ運命だったけど、死にたくないから庇いませんでした。 (*´∀`)♪『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』の孕み子設定使ってますが、世界線は繋がりなしです。魔法あり、男性妊娠ありの世界です(*´∀`)♪

義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)
BL
おそらく、ここはBLゲームの世界。義兄は攻略対象者だ。そして、僕は義兄に愛人関係を強要する悪役モブ。いや、不味いでしょ。この関係は明らかにヤバい。僕はゲーム主人公が登場したら、兄上から潔く身を引きます!だから、主人公さん、早く来て! ☆オメガバース(独自設定あり過ぎ) ☆男性妊娠あり ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】総受け主人公のはずの推しに外堀を埋められた!?

抹茶らて
BL
ソノア=ベルデ、子爵家次男でサムソン公爵家嫡男サムソン=シガンの護衛騎士であり、シガンを総受けとした小説『僕は総受けなんかじゃない!』の攻め要員の一人。そして、その作者である『俺』が転生した登場人物でもある。 最推しのシガンたんを見守るべく、奮闘する『俺』。シガンの総受けのはずの物語が、何故か書いたストーリー通りに進まず… どうして攻め要員がシガたんンを攻めないんだ?シガンたんはどうしてこっちへ迫って来るんだ? 『俺』は…物語は…どうなるんだ!? *R18は保険です(書き上げていないため…) *ノリと勢いで書いています *予告なくエロを入れてしまいます *地雷を踏んでしまったらごめんなさい… *ストックが無くなったら毎日更新出来ないかもしれないです

婚約破棄されるなり5秒で王子にプロポーズされて溺愛されてます!?

野良猫のらん
BL
侯爵家次男のヴァン・ミストラルは貴族界で出来損ない扱いされている。 なぜならば精霊の国エスプリヒ王国では、貴族は多くの精霊からの加護を得ているのが普通だからだ。 ところが、ヴァンは風の精霊の加護しか持っていない。 とうとうそれを理由にヴァンは婚約破棄されてしまった。 だがその場で王太子ギュスターヴが現れ、なんとヴァンに婚約を申し出たのだった。 なんで!? 初対面なんですけど!?!?

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

処理中です...