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9 野良は、愛を囁く

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    晩飯を食った後、リビングでチーちゃんがうとうとし始めた頃、半裸でタオルで体を拭きながら刈谷が風呂場から出てきた。
    マジで、いい体してやがる。
   中坊のくせに、きれいな、細マッチョっぷりだった。
   思わず、俺は、みとれてしまった。
   刈谷と目があって、慌てて俯く。カッと顔が熱くなるのを感じた。
   なんで、俺が、やつの裸を見て赤面してるんだよ。
   こんなのいつものことだし、男同士だし、平気じゃないか。
   「雅人」
    不意に名前を呼ばれて、俺は、ビクッと体を固くした。刈谷は、そんな俺を見て、くすっと笑っている。
    ほんとに、嫌な奴だ。
    ガキの癖に、生意気なんだよ。
   「風呂、入れよ」
    「お、おう」
     奴に言われて、俺は、立ち上がった。
    そして、風呂場に行くと、俺は、入り口でくるりと 振り向くと、リビングにいる刈谷の方へ、声をかけた。
    「覗くんじゃねぇぞ」
       「わかってるよ」
    妙にいい返事が返ってきて、なんか、怪しい感じがする。
    とにかく、俺は、脱衣場で服を脱ぐと、急いで風呂に入った。
   体を洗って、湯船に浸かった俺に、外から刈谷が声をかけた。
   「雅人、背中、流してやろうか?」
    「けっこうです。間に合ってます」
    俺が答えると、刈谷は、ドアから顔を覗かせて言った。
   「じゃあ、あそこ、洗ってやるよ」
    「あそこ?」
    あそこって、何?
   湯船に浸かって、体を隠している俺に、刈谷が言った。
   「あそこは、あそこ、だよ。こう」
    「はい、そこね」
     俺は、慌てて言った。
    「大丈夫、自分で洗えるから」
    「本当に?」
     「当たり前だ」
      俺は、なおも、食い下がる刈谷を追い払うと、ため息をついた。
   奴は、やる気だ。
   俺は、喧嘩なら刈谷に負ける気がしない。
   だが、ただの力比べとなると、奴は、侮れない。
   タッパが違いすぎる。
   俺は、自分が小柄なのを、久々に悔しいと思っていた。
   「ちくしょう・・」
   俺は、顎まで湯に浸かって考えていた。
   どうにかして、自分の身を守らなくてはならない。
   それも、刈谷を傷つけずに。
   俺には、もう、帰る場所はない。
   雇い主である刈谷を怒らせたくはなかった。
   「もう、いっそのこと・・」
     俺は、一瞬、刈谷に抱かれる自分を想像していた。
   うわぁっ。
   全身が朱色に染まっていく。
   だめだ。
   そんなの、ダメに決まってるじゃないか。
   しばらく、俺は、湯船の中で懊悩していた。
  「ぅん・・」
   次に気がついたとき、俺は、ベッドの上に横たわっていた。
   あれ?
   俺、なんで?
   確か、俺、風呂に入ってた筈じゃ。
   「気がついたのか、雅人」
    俺のことを刈谷が覗き込んできた。
   ちかっ!
   顔、近すぎ!
   狼狽えている俺に、刈谷がそっと手を伸ばして、額に触れてきた。
   「まだ、熱いな。大丈夫?雅人」
   「ああ」
    体を起こそうとして、俺は、たじろいだ。
   何、これ?
   俺は、全裸で、わずかに腰の辺りにバスタオルが申し訳程度にかけられていた。
   「な、なんで?」
   「覚えてないのか?雅人。お前、風呂でのぼせて、溺れかけたんだぞ。まったく、俺が覗いてなかったら、危なかったぞ」
   「マジで?」
    俺は、刈谷を見た。
   刈谷も、ほぼ、全裸だった。
   マジか?
   俺は、顔が火照ってくるのを感じた。
  ヤバイ。
   ヤバすぎるこの状態。
   俺がベッドから出ようとすると、刈谷は、俺の腕を掴んで俺を自分の方へと抱き寄せ、耳元で囁いた。
   「本当、危なっかしい奴」
    「か、刈谷・・」
       体を押し離し、逃れようとする俺を、刈谷は、抱き締めた。
   「もう、待てない」
    俺の下腹に、何か、固くて熱いものが触れていた。
   嫌な予感に、俺は、ぶるっと体が震えた。
   恐る恐る見下ろすと、それは、屹立した刈谷自身だった。
   でかっ!
   前から、思っていたけど、こいつの、でかっ!
   俺は、息を飲んだ。
   こんなの、無理だって!
  刈谷は、俺を押し倒すと、キスしてきた。
  「んぅっ!」
   刈谷は、俺の口中を舌で掻き回し、俺の舌を痛いぐらい強く吸い上げる。俺の頭は、気持ちよすぎて、だんだん、霞んできていた。
   刈谷にキスされたことは、あったけど、こんなキスは、初めてだった。
   まるで、餓えた獣みたいに、俺を貪り尽くそうとするようなキスだった。
   「ふぁっ・・」
    「雅人・・」
        刈谷は、体を下へとずらして、俺の首筋から胸の辺りへとキスの雨を降らせていった。俺は、くすぐったくって、身をくねらせた。
   「雅人のここ、かわいい。小さくって、きれいなピンク色してる」
   「んぅっ!」
    刈谷が、俺の胸の突起を舌で舐め、軽く噛んだ。俺の全身に、甘い痺れのような感覚が走った。そして、それは、俺の体の中心へと向かっていく。
   体の奥が、じんじんと、疼いていた。
  鎗屋は、しばらく、俺のそこを吸ったり、舐めたりしていたが、やがて、俺の下半身へと手を伸ばしてきた。
   「ふぁっ!」
    「雅人、もう、こんなになってる。感じてるの?」
   刈谷の手が俺の芯を持ったものを掴んで、擦った。ちゅくちゅくっといういやらしい音が聞こえる。
   「あっ・・そんな・・」
   俺は、刈谷の手から逃れようと奴の体を押し退けたが、無駄だった。刈谷は、するりと俺の下半身の方へと体をずらせると、そこを口に含んで、舌で舐めながら、強く吸った。
   「ひぁっ!やっ!」
          目が眩むような例えようもない、甘美な快楽の波に襲われ、俺は、身を捩って、息をあらげた。
    刈谷は、口淫をしながら、俺の後孔へと指を沿わせてくると、その回りを優しく、揉み解し始めた。
   「やっ、そこは・・!」
    きゅっと締め付けている俺のそこへと刈谷の指が侵入してくるのを感じて、俺は、身を強張らせた。痛みに、俺は、顔をしかめた。ずぶずぶと指を抽挿され、俺の体の奥へとその振動が甘く響く。俺は、前と後ろを同意に責められて、たまらず、体をそらせて、声を漏らした。
    「あぁっ!やぁっ・・そこ、だめぇっ!」
    「なんで?」
     俺のものを口から出すと、手で擦りながら、刈谷は、掠れた声で囁いた。
   「こんなに感じているくせに」
       「んぅっ!」
    刈谷の指で奥まで突かれて、俺は、びくっと体を痙攣させた。指は、いつの間にか、2本、3本と増えて、俺のそこは、押し拡げられていった。
    「やめっ・・も、だめっ!」
    「俺も」
    刈谷が俺の後孔へと昂りを押しあてて言った。
   「もう、我慢できない・・雅人、入れるよ」
   「あっ!む、むりぃっ!」
    刈谷のものが、俺の中へと押し入ってくるのを感じて、俺は、刈谷の背に爪をたてた。刈谷が低く呻く。刈谷の熱が俺の中を犯していく。その異物感に、俺は、喘いだ。
    「はっ・・あぁっ!・・やっ、も、もどれなくな・・」
    刈谷の腰が音をたてて、俺の下半身へとぶつかる。俺の中が刈谷で満たされているのがわかった。
   「んぁっ・・うぅっ・・」
    「全部、入ったよ・・雅人」
     「ぅんっ・・」
        刈谷は、しばらく、俺の中で留まっていた。その熱い質量に、俺は、内側から溶けだしそうになって、呻いた。
   「か、りや・・も・・だめ・・」
    「動くよ、雅人」
    刈谷は、俺の中を抽挿し始めた。奥へ。もっと、奥へと、俺を突き続ける刈谷に、俺は、堪らずよがり声をあげていた。
   「あっあぁっっ!も、だめぇっ!おく、あたってるぅっ!」
    「雅人、雅人の中、すごく、熱くって、絞まってて、気持ちいい」
   「あぁっ!・・かり、やっ!」
    俺は、堪らず精を吐いた。それに続いて、刈谷も、俺の中へと熱い迸りを放った。
   「ふぅ・・」
    俺は、息をついた。
   終わった。
   だが、刈谷は、まだ、俺の中に留まっていた。
   「よかった?雅人」
   「ん・・いいわけ、ないだろ」
    俺は、言った。すると、刈谷は、俺の体を持ち上げて、くるりと裏返すと、俺の腰を高くあげさせた。
   「な、にする」
    「俺だけ、気持ちよくなったら、雅人に悪いから、雅人がよくなるまで、やる」
       はい?
   「や、やめろっ!」
    刈谷のものは、俺の中でどんどん、膨張していった。俺は、奥を再び突かれて、堪えきれずに、声を漏らした。
   「んぁっ!も、だめっ!やめ!かり、や・・」
   「雅人、雅人が感じられるまで、俺、がんばるから」
   「んぅっ・・も、、いい、から」
    俺は刈谷に貫かれ、奥を責められ、達してしまった。
   「いいっ!・・っも、きもち、いい、からぁ」
   「本当に?」
    刈谷は、ずんっ、と俺の奥まで突きながら、嬉しそうに言った。
   「感じてる?雅人」
    「ぁあっ!かんじ、てるから」
    俺は、半泣きでシーツを握りしめて叫んだ。
   「も、いくっ!・・また、いっちゃうからぁっ!」
    「いくよ、雅人。受け止めて」
   「あっあーっ!」
     刈谷は、俺の奥で、また、精を放った。
   「ごめん、雅人。つい、雅人がかわいくって、我慢できなくって」
   刈谷は、申し訳なさそうに言って、俺の中から自分自身を引き抜いた。
   その瞬間、どろり、と白濁が俺の後孔から溢れだした。
  「あぁっ・・!」
   俺は、羞恥に体を震わせて、シーツに顔を埋めていた。
   こんな。
   こんなこと、俺は、知らなかった。
   刈谷は、そんな俺の背に口づけして、囁いた。
   「雅人、好きだよ」
   甘い囁きをききながら、俺は、眠りに落ちていった。
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