上 下
56 / 91
5 初恋

5ー4 あい

しおりを挟む
 5ー4 あい

 「ばかだな、レリアス」
 ハジメは、僕の髪に優しい口づけを落とした。
 「俺もお前を失いたくない。ずっとずっと一緒にいよう」
 「ハジメ」
 「愛している、レリアス」
 「誰が、誰を愛してるって?」
 はい?
 突然に現れた気配に僕とハジメが身構えると、そこには、仁王立ちのリリアンが立っていた。
 「私は、言ったわよね?レリアスお兄様に無体なことするなって」
 「リリアン!?」
 僕は、慌ててシーツの中に潜り込んだ。
 顔に熱が集まる。
 リリアンに見られるなんて、恥ずか死ぬ!
 「なんでここに?」
 ハジメがきいた。
 「この家の周囲には魔除けの障壁を張り巡らしていたのに」
 「何が、魔除けじゃ!」
 リリアンが激怒する。
 「そんなもの、私が解除できないとでも?というか、障壁解除されたのにも気がつかないなんて!やっぱり、あんたのことレリアスお兄様の守護騎士として認められないわ!」
 「くっ!」
 リリアンに言われてハジメが悔しそうに歯噛みした。
 てか。
 僕の寝室に勝手に入ってきてるなんて、リリアン、ご令嬢としてあれだよ!
 あれ!
  
 「で?」
 1階の食堂で僕とハジメは、リリアンの前に正座させられていた。
 リリアンが僕たちに笑顔で訊ねた。
 「報告は?」
 「異常なし!」
 ハジメが答える。
 リリアンは、微笑みを深める。
 「異常なし?」
 僕たちは、こくこくと頷いた。
 リリアンは、はぁっとため息をつく。
 「なんで、そんなこと言えるわけ?」
 リリアンが僕たちに告げた。
 「たった今、ラクウェルから使いがきたわ」
 ラクウェル兄から?
 僕は、ハジメを見た。
 ハジメは、リリアンにきいた。
 「何て言ってきたんだ?」
 「ラクウェル兄は、正式にレリアスお兄様を妃にしたいと申し込んできたのよ」
 はいっ?
 僕は、ぎょっとしてしまった。
 なんでラクウェル兄が僕を妃に?
 「ラクウェルの使者である宰相のリトアール公爵が言うには」
 リリアンが額を押さえて怒りを堪えながら話した。
 「ラクウェルは、レリアスお兄様への愛に目覚めたそうよ」
 あい
 僕は、ぽかんとしていた。
 あいって、何?
 「断る!」
 ハジメが僕がぼぅっとしているときっぱりと応じた。
 「すでにレリアスは、俺の婚約者だ。ふざけたことを言わないでもらいたい」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

そこにワナがあればハマるのが礼儀でしょ!~ビッチ勇者とガチムチ戦士のエロ冒険譚~

天岸 あおい
BL
ビッチ勇者がワザと魔物に捕まってエッチされたがるので、頑張って戦士が庇って大変な目にあうエロコメディ。 ※ビッチ勇者×ガチムチ戦士。同じ村に住んでいた幼馴染コンビ。 ※魔物×戦士の描写も多め。戦士がエロい災難に遭いまくるお話。 ※エッチな描写ありの話は話タイトルの前に印が入ります。勇者×戦士『○』。魔物×戦士『▼』。また勇者視点の時は『※』が入ります。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

騎士調教~淫獄に堕ちた無垢の成れ果て~

ビビアン
BL
騎士服を溶かされ、地下牢に繋がれ、淫らな調教を受け続ける―― 王の血を引きながらも王位継承権を放棄し、騎士として父や異母兄たちに忠誠を誓った誇り高い青年リオ。しかし革命によって王国は滅びてしまい、リオもまた囚われてしまう。 そんな彼の目の前に現れたのは、黒衣の魔術師アーネスト。 「革命の盟主から、お前についての一切合切を任されている。革命軍がお前に求める贖罪は……『妊娠』だ」 そして、長い雌化調教の日々が始まった。 ※1日2回更新 ※ほぼ全編エロ ※タグ欄に入りきらなかった特殊プレイ→拘束(分娩台、X字磔、宙吊りなど)、スパンキング(パドル、ハンド)、乳首開発、睡眠姦、ドスケベ衣装、近親相姦など

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

処理中です...