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9 バサーラ王国からの使者

9ー4 エルム王子

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 9ー4 エルム王子

 女王陛下への謁見が終わり俺がほっと息をついていると声をかけてきた者がいた。
 それは、忘れもしない女だった。
 燃えるような赤髪の緑の目をした大女。
 ラーナ・クルシーア宰相だった。
 来たっ!
 俺は、緊張に口許をぎゅっと引き締めた。
 「お噂はかねてよりお聞きしています。我が娘が魔法学園で世話になっているそうでありがたく思っております」
 クルシーア宰相は、伺うように扇子越しに俺をみている。
 俺は、憎しみがよみがえってくるのを感じていた。
 この女だけは、許すことができない。
 「神殿の改革にも大変なご尽力をいただいたようでかねてより礼を伝えたいと思っておりました」
 俺は。
 言葉が出てこなかった。
 固まっている俺に横からバルトレット王女殿下が割り込んできた。
 「オルナムは、内気でな。人見知りするたちなのだ、ルクシーア卿」
 「そうですか」
 宰相が目を細める。
 「快活な方だとばかり思っていましたが。そんな一面もおありなのですね」
 「そんなことより、ルクシーア卿」
 バルトレット王女殿下が宰相を促す。
 「エルム殿下を紹介したいのだが」
 「おお、そうでございました」
 宰相が俺に隣に立っている若い男を紹介した。
 「このお方は、エルム・ガルド・フォン・バサーラ。バサーラ王国の第2王子殿下です。この度、我がルシナード王国に留学されることになりましたのでお見知りおきを」
 「紹介に預かったバサーラ王国から来たエルム、だ。よろしく頼む、オルナム殿」
 その男は、背が高くがっしりしていてこのルシナード王国の基準では、醜男と思われた。
 だが、前世の記憶を持つ俺からすれば男らしいハンサムな男だった。
 つまり、俺と似たタイプの男だ。
 なんでもバサーラ王国では、好まれる男のタイプがルシナード王国とは異なっているらしい。
 武勇を好むバサーラ王国では、こういうタイプの男が好まれるのだという。
 「これからあなたと同じ魔法学園で学ぶことになっている。同じ男としていろいろご教授願いたい」
 「滅相もない」
 俺は、頭を垂れた。
 「こちらこそ、よろしくお願い致します」
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