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6 聖者なんかじゃありません!

6ー9 慣れ

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 6ー9 慣れ

 それは、俺に毒耐性ができるまで続けられた。
 「すごいですね、オルナム様」
 ロタが感心したように言った。
 「調べてみたらあの毒は、ホブゴブリンだって殺せるような猛毒でしたよ。そんな猛毒に耐性ができるとは」
 「慣れだな、慣れ」
 俺は、神殿の周囲をロタと走りながら話していた。
 神殿は、暇だ。
 聖者見習いの俺は、何もすることがない。
 だから、こうして走ることにした。
 「俺には、サヤが犯人とは思えないんだが」
 「でしょうね」
 ロタが俺の後ろを走りながら相づちを打つ。
 「だって、犯人は、ライナスですから」
 「あいつか」
 俺は、走りながらロタを振り向く。
 「なんでサヤが関わっているんだ?」
 「サヤは、ライナスの幼馴染みですから」
 うん。
 なんだかロタに言われると納得できるような気がした。
 ロタなら俺が頼んだら女王陛下でも暗殺しそうで怖い。
 「どうにかしてサヤを守りつつライナスとグーズリー神官長を断罪したいんだが」
 「あれ?ああいうのが好みでしたっけ?オルナム様」
 ロタがからかうように笑った。
 俺は、ぷいっとそっぽを向いた。
 「知ってるだろう?俺の好みは」
 「ええ。確か、アウラ王女殿下みたいにお胸が立派な方が好みなんでしたよね?」
 アウラ王女殿下か。
 それはそれで頭痛の種だな。
 俺の横に並んだロタは、息を軽く弾ませていた。
 「とにかく、オルナム様は、証拠の毒を押さえてください。あとは、私がなんとかしますから」
 俺たちは、神殿の中庭につくと足を止めて地面に座り込んだ。
 息をあえがせている俺に何度目かのサヤが登場した。
 「お疲れさまです、オルナム様」
 サヤは、俺にだけ木椀に入ったミルクを差し出した。
 「神殿で飼っているヤギの乳です。冷たくっておいしいですよ」
 「ああ、ありがとう」
 俺は、サヤから木椀を受け取った。 
 サヤの手は、やはり震えていた。
 俺にとっては、もう慣れた光景だがサヤにとっては、相変わらず初めての毒殺だしな。
 俺は、一口毒要りのヤギの乳を飲んだ。
 サヤの頬がこわばる。
 
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