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27 遠くて近い未来のお話
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気がついたとき、ボロボロになった魔道書の俺を抱いてアークが泣いていた。
「ユウ・・」
ああ。
俺は、薄れていく意識の中で呟いた。
アーク、俺は、ここにいるよ。
アーク。
俺は、ずっと、ずっと、あんたの側にいる。
ずっと。
「しかし、どうなんですかね」
茶髪に青い目をしたチャラそうな兄ちゃんが呆れたように言った。
「神になれるというのに、それを断ってもとの魔道書に戻りたいって」
俺は、暗闇の中にいた。
「もう、好きなようにしてください!」
チャラ兄ちゃんが叫んだ。
「それで、うんと幸せになっちゃえばいいんだ!」
暗闇の中に小さな光があった。
その光は、だんだんと大きくなっていって、やがて、俺を、世界を包み込んでいった。
この世界。
小さくて、広くって、不完全な、この世界。
「いつか、お前は、今日のこの決断を後悔する日がくるのかもしれない」
どこかの世界の、どこかの場所で、その男は、俺に言った。
「だが、私は、お前のその決断を誇りに思うよ、ヨシュア、いや、ユウ」
幸せにおなり。
どこかで誰かが言った。
どうか、幸せに。
ぽとり。
俺の頬に水滴が落ちてきた。
ぽとり、ぽとり。
それは、とてもあたたかいもので。
俺は、多幸感の内に微笑みながら目を開いた。
黒髪に深い緑の瞳の端正な顔立ちの男が目の前で泣いていた。
俺は、この男を知っている。
「・・アーク・・」
「ユウ・・?」
俺は、アークの腕の中で笑いながら泣いていた。
俺たちは、抱き合って笑い、泣いた。
それから、一年の月日が流れた。
俺は、ユウレスカ・ホソカーとして正式にアークの元へと嫁いだ。
そして。
今日。
一人の赤ん坊がこの世に生を受けた。
赤ん坊の名前は、ラーナ・ダンクール。
俺たちに似て黒い髪の可愛らしい女の子だ。
『R』シリーズの兄弟たちも、それぞれの子供たちをつれて祝福に駆けつけてくれた。
ディアン王子とその妻となったティルとその娘たち。
レイブンとコウとその息子たち。
そして。
『Rー7』ロイドと8才になったばかりのロキシス王。
俺には、未来を予知する能力はないけれど。
いつか、ロキシス王とラーナが、あの青い花の中で出会う日がくるような予感がしていた。
俺は、にっこり微笑みを浮かべて、ラーナを抱いていた。
それは、また、別の話。
遠くて近い、未来のお話。
「ユウ・・」
ああ。
俺は、薄れていく意識の中で呟いた。
アーク、俺は、ここにいるよ。
アーク。
俺は、ずっと、ずっと、あんたの側にいる。
ずっと。
「しかし、どうなんですかね」
茶髪に青い目をしたチャラそうな兄ちゃんが呆れたように言った。
「神になれるというのに、それを断ってもとの魔道書に戻りたいって」
俺は、暗闇の中にいた。
「もう、好きなようにしてください!」
チャラ兄ちゃんが叫んだ。
「それで、うんと幸せになっちゃえばいいんだ!」
暗闇の中に小さな光があった。
その光は、だんだんと大きくなっていって、やがて、俺を、世界を包み込んでいった。
この世界。
小さくて、広くって、不完全な、この世界。
「いつか、お前は、今日のこの決断を後悔する日がくるのかもしれない」
どこかの世界の、どこかの場所で、その男は、俺に言った。
「だが、私は、お前のその決断を誇りに思うよ、ヨシュア、いや、ユウ」
幸せにおなり。
どこかで誰かが言った。
どうか、幸せに。
ぽとり。
俺の頬に水滴が落ちてきた。
ぽとり、ぽとり。
それは、とてもあたたかいもので。
俺は、多幸感の内に微笑みながら目を開いた。
黒髪に深い緑の瞳の端正な顔立ちの男が目の前で泣いていた。
俺は、この男を知っている。
「・・アーク・・」
「ユウ・・?」
俺は、アークの腕の中で笑いながら泣いていた。
俺たちは、抱き合って笑い、泣いた。
それから、一年の月日が流れた。
俺は、ユウレスカ・ホソカーとして正式にアークの元へと嫁いだ。
そして。
今日。
一人の赤ん坊がこの世に生を受けた。
赤ん坊の名前は、ラーナ・ダンクール。
俺たちに似て黒い髪の可愛らしい女の子だ。
『R』シリーズの兄弟たちも、それぞれの子供たちをつれて祝福に駆けつけてくれた。
ディアン王子とその妻となったティルとその娘たち。
レイブンとコウとその息子たち。
そして。
『Rー7』ロイドと8才になったばかりのロキシス王。
俺には、未来を予知する能力はないけれど。
いつか、ロキシス王とラーナが、あの青い花の中で出会う日がくるような予感がしていた。
俺は、にっこり微笑みを浮かべて、ラーナを抱いていた。
それは、また、別の話。
遠くて近い、未来のお話。
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