転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~

トモモト ヨシユキ

文字の大きさ
上 下
24 / 28

23 他人の恋路を邪魔する者は

しおりを挟む
    「服を脱いでひざまづくんだ」
      その中年男に命じられるままに、コウは、震えながら服を脱いで全裸になるとベッドから降りて、男の前にひざまづいた。
    男は、コウに命じた。
   「まずは、奉仕してもらおうか」
   男がいうと、コウは、男のズボンの前へと手を伸ばし、そこから男のすでに半立ちになったものを取り出して口に含んだ。
    男は、コウの頭を押さえてぐぃぐぃと押し込む。コウが、苦しげにえづくがかまやしない。
   コウは、涙を流していた。
   しばらくすると、男は、言った。
  「出すぞ。一滴もこぼすんじゃないぞ」
   「うっ、ぐっ・・んっ・・」
    コウが呻いて、男の吐き出したものを飲み下した。
   「まぁ、いいだろう。後ろを向け」
    男は、コウが背を向けると腕を振り上げて鞭を振り下ろした。パァン、という乾いた音がして、こうが呻いた。
    男は、続けざまに何度もコウの背中を打った。
    「んぅっ・・ふっ・・」
    皮膚が破れて血が滲んで、コウが、顔を歪める。
   「はっ・・あっ・・」
    「この、役立たずの化け物が!」
    男は、息を荒らげて、なおも、コウを打ち続けた。コウは、声を殺して耐えている。
    なんで?
   俺は、もう、見ていられなくって、男に向けて念話を送った。
   なんで、こんなことするんだよ!
  もう、やめてくれ!
   俺の心の声が聞こえたわけではないようだが、男は、息を弾ませながら、頭を振った。
   「どうされましたか?」
    レイブンがきくと、男は、なおも、頭を振って、答えた。
   「少し、頭痛がしただけだ」
    男は、気を取り直したかのように、コウに向き直ると、命じた。
   「ベッドに横になれ」
    「お待ちください。陛下」
    レイブンが男に声をかけた。
    「陛下は、体調が優れないご様子。今日のところは、ここまでにされたほうが。それに、これもまだ、調整中です。少し、『Rー15』との戦いで無理をさせてしまったので」
    「何?」
    男が不満げにレイブンを睨み付けた。
   「私の命令に逆らう気か?」
    「いえ、違います」
    レイブンが答えた。
    「御身が大切であるから言っております。これは、所詮は、正体不明の魔導書です。無理をされれば、何が起こるかもわかりませんので」
    「ふん」
    男は、踵を返して部屋から出ていった。後には、傷ついたコウと、レイブンが残された。
   レイブンは、コウを抱き上げるとうつ伏せにベッドに寝かせるとベッドに腰かけて取り出した薬をコウの背中に塗った。
        コウは、たぶん、首輪に仕込まれている魔石のせいで、魔法が使えずに自分で傷を治すことができない。
    「気休めにすぎんが」
    レイブンがそっと手をコウの背にかざした。
   「ヒール」
    微かな光が手のひらから溢れる。
   ヨワっ!
   レイブン、魔力、弱すぎ!
   「お前、聞こえてるぞ!」
    えっ?
   俺は、きいた。
   俺の声がきこえてるのか?
   「それぐらいは、きこえるさ。俺だって、魔族の血が流れてるんだ」
    マジで?
   俺は、思わず言った。
   魔族の血が混じってて、その魔力なの?
   「魔族が皆、化け物みたいに強いわけじゃねぇんだよ」
   レイブンが俺に言った。
   「俺のお袋は、力ない魔族で、人に捕らえられて奴隷として売られ、この城にきた。そして」
   レイブンが憎々しげに顔を歪める。
   「あの男のペットとなった」
    ええっ?
  俺は、驚愕してきいた。
  じゃあ、もしかして、レイブンは・・
  「ああ」
    レイブンが頷く。
   「あれは、俺の父親、だ」
     マジか。
    俺は、レイブンにきいた。
   あんた、まさか・・
   「ふん」
    レイブンが鼻で笑った。
   「俺の存在は、認知されていない。俺の立場は、奴隷と変わらん」
   「レイブン」
   コウがレイブンの方を見て、力なく微笑んだ。
   「ありがと」
    「別に、お前をかばった訳じゃねぇし。本当に、お前を抱いてる途中であいつになんかあったら不味いしな」
    レイブンがそう言うと、コウは、くすっと微かに笑った。
   「レイブンは、優しいね」
   「なんで、そうなるんだよ、お前は。脳ミソ沸いてるのか?」
   レイブンは言いながら、そのヨワヨワしいヒールをコウの背に向かってかけ続けた。
    コウ、大丈夫か?
   俺は、コウにきいた。コウは、答えた。
   「平気、だよ。これぐらい、いつもに比べたら、全然、ましだよ」
   いつもに比べたら、って、こんなこといつも、されてるのかよ?
   俺にきかれて、コウが、逆に俺にきいた。
  「ユウは、されてないの?」
   俺は、そんなことは、されてないよ。
  「マジで?」
コウがきいた。
   「じゃあ、どんなことされてるの?」
   ええっ?
  俺は、口ごもった。
 どんなことって・・
      俺の脳裏にアークにされた、あんなことや、こんなことが浮かんできた。すると、コウがぽぅっと頬を真っ赤に染めてうつ向いた。
    「そ、そんなこと、してるんだ」
    コウも、レイブンとしてるんじゃねぇの?
  俺がきくと、コウだけじゃなくレイブンまで真っ赤になってしまった。
   「お前、そんなこと、してるわけがねぇだろうが」
   だって、抱いてるかって、アークにきいてたじゃん。
   俺が言うと、レイブン慌てて答えた。
  「そりゃ、言ったけど、俺が言ったのは」
   レイブンがコウを抱き締めた。
   「レイブン・・」
   「こういうことだよ!」
   何?
   俺は、しらけた気分できいた。
   ハグのことかよ?
  「悪いか?」
    「レイブン・・」
    コウがレイブンの腕にしがみついて、目を閉じたまま言った。
   「僕は、いいんだよ。レイブンになら何されても」
   「はい?」
    レイブンがコウを抱いたまま、キョトンとしている。
   「お前・・」
    「レイブン、僕のこと、抱いて」
    「抱いてるじゃないか」
    「こんなのじゃなくって、あの、ユウたちみたいに、して、ほしい」
    「バカなこと、いうな」
    レイブンがコウから体を離した。
  「俺にあいつと同じこと、お前にしろっていうのかよ?」
   「レイブン・・」
    「お、こ、と、わ、り、だ」
    レイブンは、コウにキッパリと言った。
   「俺は、あいつとは違う。お前を抱いたりしない」
   「レイブン」
    レイブンは、そのまま黙って部屋から出ていった。
   コウは。
   コウは、静かに涙を溢していた。

      俺が捕らえられて1週間の間、そんなことが毎日のように続いた。
   コウは、少し、頬が赤らんで、たぶん、熱が出てるんだと思う。
   レイブンは、コウの背中に薬を塗ってやったり、濡れた布でコウの体を拭いてやったりしている。
   けど。
   コウは、レイブンの手を振り払って言った。
   「僕のこと、好きでもないくせに、もう、僕に触れないで!」
   「お前」
    「僕の名前は、コウ、だよ。ユウがつけてくれたんだ」
   コウは、続けた。
   「僕のこと、本当に自分のものにしてくれもしないのに、優しくしないで!」
    「お前・・」
   「コウ、だよ!」
    コウは、言った。
   「僕は、お前じゃない!コウ、だよ!」
    「コウ・・」
    レイブンが突然、ぎゅっとコウを抱き締めた。
   「レイブン?」
    「コウ、お前は」
    レイブンが呻いた。
   「俺を獣に戻す気か」
    レイブンの体が震えたと思うと、巨大化していった。
   レイブンの金色の髪が伸びてタテガミになる。
   変化していく。
   レイブンは、獅子の姿になって、コウを抱いていた。
   「もう、止められんぞ、コウ」
   「うん」
    コウが、頷いた。
   「レイブン、僕を、あなただけのものにして」
   マジで?
   俺は、ベッドのすみに置かれたまま思っていた。
   俺、ここにいるんですけど!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

処理中です...