転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~

トモモト ヨシユキ

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7 平和のための剣となろう

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    前世で俺は、いつも1人だった。
   自分の性癖を隠し、誰も愛さないように生きていた。
   だが。
   それでも俺は、恋をしてしまい、それは儚く散っていった。
   そして、今生でも、俺は1人だった。
    俺を創った人は、決して、俺を愛そうとはしなかった。
   俺は、悪夢のような戦いの日々の中で、いつしか、自分を殺すことを覚えていった。
   次に、闇があった。
   俺は、俺を創った魔導師の手で封じられ、眠り続けていた。
   ずっと1人。
   暗闇は、千年の寂寥、万年の虚無。
   それでも、俺は、それを受け入れていた。  
   俺は、どこまで行っても、とどのつまり、一人ぼっちでしかないのだと思っていた。
   なのに。
   今、俺は、この男に抱き締められている。
   この男。
   アークラント・ダンクールは、不思議な存在だ。
   アークは、俺を抱き締め、愛を乞う。
   人間ですらない、この今の俺に。
   俺は、宿屋の風呂場の脱衣場でアークに抱き締められ、キスされて陶然としていた。
   熱い。
   体の奥から奇妙な、初めて知る感覚が、渇望が沸き上がってくる。
   アークは、唇を下へと滑らせていき、俺の裸の胸へとキスを降らせた。
   そこには、すでに幾つも昨夜の営みの名残が残されていた。アークは、その跡をたどる様にして俺を味わっていた。
   「ん・・だ、だめ、だ・・人が・・」
    「かまわん」
     アークは、俺の胸の尖りを舌で舐め、嬲りながら言った。
   「俺たちは、女神の名の元に結ばれた夫婦だ。誰に咎められることもない」
   「でも・・」
   俺は、自分の胸にしゃぶりついている男をふわりと抱いて全身を朱色に染めていった。
   アークは、俺の頂を甘く噛み、吸った。俺は、びくびくっと体を痙攣させ、軽くいった。
    「これだけで、もう、いっちゃったのか?ユウ」
   アークは、俺の下半身へと触れ、低く笑った。
   「かわいい奴だな、お前は」
    「あぁっ!」
    俺は、中心に触れられその先端をくちゅくちゅっと音をたてて責められ、崩れ落ちそうになった。
      アークは、俺を抱き止めるとそっと脱衣場の床の上に横たえて俺にキスした。
   「好きだ、ユウ」
    「んぅっ・・」
    アークは、俺に囁く。
   「初めて、お前を見たときにわかった。これは、俺のためのものだ、と」
   マジでか。
   俺は、アークに触れられた場所が再び熱く滾ってくるのを感じていた。
   アークは、手で掴んだそこを擦りあげながら、俺に低く話しかける。
  「俺は、産まれた時から、全てを与えられていた。なのに、いつも満たされたことがなかった。だが、お前を昨夜抱いたとき、初めて心の穴が満たされた気がした」
    「アーク・・あっ!・・そ、そこは・・」
    アークは、俺の体を押し開き奥へと指を這わせてきた。そこは、昨夜の交わりのために緩んでいて、容易く奴の指を飲み込んだ。
   「ふぁっ!」
    俺は、なかを弄られ背を反らして声を漏らした。
   「いくぞ、ユウ」
    アークは、猛り立ったものを俺に押し付け、言った。俺がこくり、と頷くと、アークは、一気に奥まで貫いた。俺は、知ったばかりのこの快楽に身悶えした。
    「あぁっ!・・いきなり、そんな・・奥・・」
    「ふっ・・ユウ、お前の中は、熱い、な。それに、絡みついてくる」
   呼吸を乱してアークが俺を抱いて言った。
   「まるで、俺を離すまいとしているみたいで、愛しい」
    アークは、俺の上に覆い被さってゆっくりと動き出した。その抽挿に、俺は、体内を掻き乱されて内側から溶けていくような感じを味わっていた。
    蕩けていく。
   「はぁ・・あっ・・アーク・・」
    アークに責め立てられ、俺は、上り詰めていった。アークは、そんな俺を見下ろして、言った。
   「ユウ、愛している」
   「あっ、あぁ!アーク・・っ!」
     俺が精を放ち達してしまったのを見てから、アークが俺の中へと熱いものを放った。
   じんわりと拡がっていく熱に、俺は、アークにしがみついて全身を震わせた。
   「ユウ、もう離さない」
    「・・アーク・・」

     俺たちが風呂から部屋へと戻ると、クリスが部屋のドアの前で仁王立ちで待っていた。
   「遅いぞ、お前たち」
   「すまない、クリス」
    アークが言った。
    「風呂場が混んでたんだ」
    「嘘つけ」
     クリスは、溜め息をついた。
    「まあ、いいんだけどな」
    「あの二人は?」
     アークが何気にきくと、クリスがまたまた溜め息をついた。
   「お取り込み中、だ」
    「お取り込み中?」
    アークは、ききながら、ドアへと手を伸ばした。クリスがアークを押し止める。
   「ちょっ、止めとけよ、お前。今、私が言っただろうが、二人は、その、お取り込み中、だと」
    「ああ?」
    アークがクリスを押し退けてドアを開いた。
   「ん・・あっ・・はぁっ・・」
    中からあえぎ声が聞こえてきてアークが見ては行けないものを見たというような表情をして、慌ててドアを閉めた。
    アークは、クリスの方を見て、きいた。
   「マジ、か?」
    「ああ・・これは、現実だ」
    ええっ?
   俺は、アークの後ろからぴょこっと顔を出してクリスを見つめた。
   マジで?
       「いや、すまんな、お前たち」
    魔王ディエントスが全然悪びれる様子もなく言った。
    「つい、お前たちの気に当てられてな」
   「マジで?」
    俺は、魔王ディエントスの隣に腰かけて眠そうにアクビをしている光の精霊王アルカイドを見た。その首筋やら肩やらに情交の跡を残しているアルカイドは、俺の視線に気づくとにっこりと微笑んだ。
   「ああ、本当だ。主であるユウの気に当てられてしまった様だな」
   「当てられてしまった様だな、って」
    俺は、二人に言った。
   「魔王と光の精霊王ができちゃったの?」
    「案じるな、ユウ」
    魔王ディエントスが精霊王アルカイドのことをぎゅっと抱き寄せて言った。
   「我々は、お前に使える間をちょっとしたバカンスだと思うことにしたのだ。もちろん、お前のサーバントとしての務めは果たす。だが、その間、我々が番うことを許せ」
   つ、番っちゃうんだ。
   「俺は、別にいいけど」
    俺が答えるとクリスが叫んだ。
   「よくないぞ!全然、よくない!」
    「なんで?」
    俺がきくとクリスが興奮して言った。
   「いいわけがないだろ?この二人は、対極にあるんだぞ!魔王と光の精霊王がこんなことになっちゃって、大問題だろうが!」
    「別に、いいんじゃね?」
    俺が言うと、クリスが頭を抱えて言った。
  「ああ、神様。これは、すべて夢だと言ってください」
   「神様に会いたいのか?クリス」
   俺は、きいた。
   クリスには、アークが世話になっているからな。
    そんなちょっとした願い事くらい叶えてやってもいい、と俺は、思っていた。が、クリスは、俺のその気持ちを察して言った。
   「いらん!いいか、ユウ。余計な気遣いは、いらないからな!」
    「ええっ?」
    アークが詰まらなさそうに言った。
   「俺とユウの初めての共同作業だと思ったのに」
   「そんなこと、しなくていい!」
    クリスが、はぁっと吐息をついた。
   「とにかくお前たちは、もう、何もするな。大人しくしててくれ。いいな。くれぐれもこれ以上、変なものを召喚したりしてくれるな、ユウ、アーク」

       俺たち一行は、その日のうちに王都からほど近い小さな町クーナにある王家の別荘に移った。
    クーナは、小さな静かな町だった。
   気候がいい、山裾に広がる町で、王家の夏の間の避暑地でもあった。
    俺たちは、小高い丘の上にある山城へと向かった。
   質実剛健なその山城は、かつて、国王だった賢王クルスが愛した側室のために作った城だった。
   夏には、暑気から逃れるために王都から王族たちが訪れるのだが、今は、季節外れのため、城は、訪れるものもなくひっそりとしていた。
    「ここなら、誰にも知られることなく、しばらく身を隠すことができるだろう」
    クリスは、俺たちを日当たりのよいサンルームへと案内するとソファをそれぞれにすすめた。
    「考えれば、これは、千歳一遇のチャンス、だ。これを機に魔物と人類の和解をはかろうと俺は、思っている」
    「ほう」
    魔王ディエントスが片眉を上げて、クリスにきいた。
   「お前たち傲慢な人間どもが、我々と話し合いの席につこうというのか?」
    「ああ」
    クリスは、頷いた。
   「お互いに思うところはあるだろうが、いつまでも無益な戦いを続けているよりは、ましというものだ」
    「ふん」
    魔王ディエントスは、暗い笑いを浮かべた。
   「できるのか?お前に」
    「やり遂げてみせる」
    クリスは、力強く言った。
   「世界の平和のために」
    俺は、クリスをちらっと見つめて思っていた。
   これは、言うほど簡単なことじゃない。
   だけど、クリスが望むことなら、たぶん、アークもそれを望んでいるのだろう。
   俺は、番の願いを叶えることを厭わない。
   そのための剣となることが、俺には、できるのだから。

   
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