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20 魔王国開拓史?

20ー7 労働の味

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 20ー7 労働の味

 「仕方がない!やるぞ、皆のもの!」
 魔王様が自ら鍬を手にすると慣れない手付きで大地を耕し始めた。
 魔族たちは、魔王様自らが農作業をはじめたのを遠巻きにして見守っていたが、やがて、一人また一人と農具を手に取り始めた。
 「早く、大地のマナを回復させてダンジョン暮らしに戻るぞ!」
 魔族たちは、そういいながら鍬を振るった。
 こうして。
 わたしたちは、手に豆を作りながら毎日痩せた土地を耕し続けた。
 みな、手に豆を作り、汗と土にまみれて働いた。
 数週間たつとだんだんと畑が出現してきた。
 魔族たちの手のひらの豆は破れ血が流れた。
 痛みにみな耐えながら、開拓を続けた。
 わたしは、みなで耕した土地に人間の村で買ってきた豆の種を植えた。
 キエが畑に水魔法で出した水をやりながらため息をついた。
 「こんなことしてていいんでしょうか?トガー様」
 「騙されたと思って続けるんだ!」
 わたしは、キエたちに話した。
 「もし、この豆が実る頃にやっぱり騙されたと思ったならわたしを殺せばいい!」
 わたしは、この土地の開拓に精霊の力を使うつもりはなかった。
 力を使おうにもこの辺りの精霊たちは疲弊していてダメだったし。
 魔族たちは、仕方なく開拓生活を続けていた。
 口々に大地の力が戻ってダンジョンが復活するまでだ、と呟きながら。
 しかし。
 そんな毎日が続いていくうちに、魔族たちの中にも変化が現れ始めた。
 何よりも魔王様自身が先頭に立って開拓をしていたのがでかかった。
 魔族たちは、慣れない労働に悲鳴をあげながらも歯を食いしばり耐えていた。
 「こんなこと土魔法でやっちまえばいいじゃないか!」
 そういう者もいた。
 だが、今の魔王国では、大きな魔法も使えなかった。
 それに、わたしもここで魔法を使わせる気はなかったしな。
 「この大地の開拓は、あんたたちだけの手でやりとげなくてはならないんだよ!」
 開拓した土地の周辺に小さな村ができる頃、最初の収穫があった。
 わたしは、収穫した豆を煮てスープを作った。
 魔族たちは、恐々そのスープに口をつけた。
 うっすい味の糞不味いスープだ。
 それを魔族たちは食べながらいつしか、みな涙を流していた。
 「まずい!けど、うまい!」
 「信じられないくらいおいしいですぅ」
 キエは、わたしにおかわりの椀を差し出した。
  わたしは、キエのためにスープを注いでやった。
 「これが労働の味なんですね、トガー様」
 
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