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19 国民皆保険へ、レッツらゴー!

19ー7 闇の『聖女』

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 19ー7 闇の『聖女』

 それから国は、大変な騒ぎになった。
 何人もの貴族が投獄されたり国外追放になったりした。
 それでも宰相閣下は、この改革を断行した。
 わたしのことは、宰相閣下たちの手で隠し通された。
 「この国に聖女はいらない」
 それが表向きの宰相閣下たちの考え方だった。
 国民たちも戸惑いはあった。
 特に、大商人や貴族たちには、この改革は不評だった。
 それでも宰相閣下は、譲らなかった。
 アルノルド王もわたしたちの考えに同意してくれた。
 もちろん王妃様の協力があったことはいうまでもない。
 こうして、このグレングルド王国は、この世界で初の国民皆保険制度を取り入れた国となった。
 
 夏がきて秋がすぎていった。
 王都は、例の社交シーズンに入った。
 マックス様とラーズさんは、この度の医療改革の旗印としてもてはやされた。
 我が『メルクリウス商会』もまた浮島ラピュータスと共に人々の話題になった。
 みなが忙しく過ごしていた。
 わたしは、というと。
 わたしは、相変わらず気ままな教師暮らしをしていた。
 まあ、たまにマックス様とラーズさんに呼び出されたりしていたが、たいていは穏やかな生活を続けていた。
 それでもどこからか噂が流れ、宰相閣下たちの背後には『聖女』がいるとかいわれていた。
 それは、神と神の『教団』に敵対する存在として噂された。
 『教団』は、この闇の『聖女』に生死に関わらずということで懸賞金をかけていた。
 「あなたも大変ね」
 シーラさんが放課後の職員室でのんびりとお茶しながら話した。
 「すっかり神に仇なす闇の『聖女』として指名手配されてるじゃない」
 「大丈夫だよ」
 わたしは、鷹揚に答えた。
 今のところは、女神の怒りを特にかっているというわけでもないし、命の危機までは感じてないしな。
 だが。
 いつまでこの平穏が続くのか。
 わたしにも、誰にもわからなかった。
 だが。
 世界は、確実により良い方へと進んでいた。
 いろんな意見はあるし、これが最善とはいえないのかもしれない。
 けれど。
 何もせずにいるよりは、ずっとましだ。
 
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