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19 国民皆保険へ、レッツらゴー!
19ー1 ヒーロー
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19ー1 ヒーロー
「僕、僕、もう、どうしたらいいのか
、わからなくって・・ばあちゃんが、このまま死んじゃうんじゃないかって思ったら恐くって」
ジャッシュは、落ち着いてくるとポツポツと話し出した。
父が事故に遭い母がレートスの町へといっていて、彼には、頼れる者もいなかったらしい。
そんなときに祖母の病状が悪化してしまったのだという。
「僕、ばあちゃんが死んじゃうって思って・・・どうにかしなくちゃって思ったんだけど、医者を呼ぶような金もないし。ほんとに、もうだめだと思って」
わたしは、ジャッシュが話している間、ずっとゆっくりと背中を撫でてやった。
ジャッシュが落ち着いて用意した夕食を飢えた獣のように貪り食っているのを眺めていると、ラーズさんたちがやってきた。
ジャッシュのばあちゃんは、ラーズさんがつれてきた医者に見てもらった。
医者は、薬もくれたが、そっとわたしに告げた。
「老衰です。もう、長くはもちません。ここではなんだし、私の屋敷で看取りましょう」
その医者はそう言ってくれたが、ジャッシュは、それを断った。
「ここは、ばあちゃんがずっと何十年も暮らしてきたところです。死んじゃうんならここで死なせてやってください!」
ということで。
わたしは、しばらくジャッシュの家で暮らすことにした。
ばあちゃんの世話は、ジャッシュとわたしで交代にみた。
ばあちゃんは、だんだんと弱っていってそれから3日後の朝方に亡くなった。
わたしは、ジャッシュを手伝ってばあちゃんを弔った。
全てが終わってから戻ってきたジャッシュの両親は、ジャッシュに詫びていた。
「すまなかったな、ジャッシュ。全部、お前に任せきりで」
「おばあちゃんのこと、何もかも任せてしまってごめんね、ジャッシュ」
頭を下げる両親にジャッシュは、穏やかに微笑んだ。
「いいんだ。ばあちゃんを無事に見送れたし。トガー先生が助けてくれたから」
わたしは、礼を言う両親を手で制するとその場を辞した。
ジャッシュは、わたしを家まで送ってくれた。
「すまないな、ジャッシュ」
「いいんだ、トガー先生」
ジャッシュは、いい子だ。
あんなことがあっても少しも両親を責めようとはしなかった。
わたしたちは、のんびりと町を歩いた。
週末の町は、賑わっていた。
歩きながら、ぽつりとジャッシュが呟いた。
「トガー先生。先生は、僕のヒーローだよ」
はい?
わたしがきょとんとするとジャッシュは、笑顔で続けた。
「誰も助けてくれなくって。どうしようもなくなったとき、先生は、僕のことを助けてくれたんだ。ありがとう、トガー先生」
わたしを送り届けるとジャッシュは、走って去っていく。
駆けていくジャッシュを見送りながらわたしは、なんだか心が痛かった。
この子は、優しい。
そして、強い子だ。
悲しいくらいにな。
あのとき。
全てを捨てて逃げることだってできただろう。
なのに、この子は、ボロボロになっても全てを守ろうとした。
「ほんと、いい子だな」
わたしは、呟いてから手を振りながら叫んだ。
「ジャッシュ!来週からは、学校に来いよ!」
ジャッシュは、振り返って頷いた。
「僕、僕、もう、どうしたらいいのか
、わからなくって・・ばあちゃんが、このまま死んじゃうんじゃないかって思ったら恐くって」
ジャッシュは、落ち着いてくるとポツポツと話し出した。
父が事故に遭い母がレートスの町へといっていて、彼には、頼れる者もいなかったらしい。
そんなときに祖母の病状が悪化してしまったのだという。
「僕、ばあちゃんが死んじゃうって思って・・・どうにかしなくちゃって思ったんだけど、医者を呼ぶような金もないし。ほんとに、もうだめだと思って」
わたしは、ジャッシュが話している間、ずっとゆっくりと背中を撫でてやった。
ジャッシュが落ち着いて用意した夕食を飢えた獣のように貪り食っているのを眺めていると、ラーズさんたちがやってきた。
ジャッシュのばあちゃんは、ラーズさんがつれてきた医者に見てもらった。
医者は、薬もくれたが、そっとわたしに告げた。
「老衰です。もう、長くはもちません。ここではなんだし、私の屋敷で看取りましょう」
その医者はそう言ってくれたが、ジャッシュは、それを断った。
「ここは、ばあちゃんがずっと何十年も暮らしてきたところです。死んじゃうんならここで死なせてやってください!」
ということで。
わたしは、しばらくジャッシュの家で暮らすことにした。
ばあちゃんの世話は、ジャッシュとわたしで交代にみた。
ばあちゃんは、だんだんと弱っていってそれから3日後の朝方に亡くなった。
わたしは、ジャッシュを手伝ってばあちゃんを弔った。
全てが終わってから戻ってきたジャッシュの両親は、ジャッシュに詫びていた。
「すまなかったな、ジャッシュ。全部、お前に任せきりで」
「おばあちゃんのこと、何もかも任せてしまってごめんね、ジャッシュ」
頭を下げる両親にジャッシュは、穏やかに微笑んだ。
「いいんだ。ばあちゃんを無事に見送れたし。トガー先生が助けてくれたから」
わたしは、礼を言う両親を手で制するとその場を辞した。
ジャッシュは、わたしを家まで送ってくれた。
「すまないな、ジャッシュ」
「いいんだ、トガー先生」
ジャッシュは、いい子だ。
あんなことがあっても少しも両親を責めようとはしなかった。
わたしたちは、のんびりと町を歩いた。
週末の町は、賑わっていた。
歩きながら、ぽつりとジャッシュが呟いた。
「トガー先生。先生は、僕のヒーローだよ」
はい?
わたしがきょとんとするとジャッシュは、笑顔で続けた。
「誰も助けてくれなくって。どうしようもなくなったとき、先生は、僕のことを助けてくれたんだ。ありがとう、トガー先生」
わたしを送り届けるとジャッシュは、走って去っていく。
駆けていくジャッシュを見送りながらわたしは、なんだか心が痛かった。
この子は、優しい。
そして、強い子だ。
悲しいくらいにな。
あのとき。
全てを捨てて逃げることだってできただろう。
なのに、この子は、ボロボロになっても全てを守ろうとした。
「ほんと、いい子だな」
わたしは、呟いてから手を振りながら叫んだ。
「ジャッシュ!来週からは、学校に来いよ!」
ジャッシュは、振り返って頷いた。
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