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11 新しい世界

11ー6 新年の祭り

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 11ー6 新年の祭り

 タリアさんが治療院にきてから二週間ほどしてフェブリウス領の領都クロイツに雪が降った。
 わたしは、その日、商業ギルドに持ち込んだゲームのことでギルド長のラミノフさんに呼び出されていた。
 すごく寒くて。
 屋敷の中は、薄暗くって気が滅入りそうだった。
 わたしは、一緒に行きたいといってきかないライザを連れてラミノフさんの寄越した迎えの馬車に乗り込んだ。
 「もうすぐ新年の祭りね、トガー」
 ライザがウキウキした様子で馬車から過ぎ行く景色を眺めていた。
 「トガーは、新年のパーティーでは、誰と踊るの?」
 「誰とも踊らないし」
 わたしが答えると、ライザは、少し考えるように小首を傾げた。
 「それは、まずいんじゃないかな?」
 はい?
 ライザは、説明してくれた。
 「新年のパーティーで踊ったらその2人は実質上婚約したと見なされるの。もし、トガーが誰とも踊らなかったらそれは、相手がいないってことだから、来年は、トガーに何人もの夫候補があらわれるでしょうね」
 マジですか?
 それも鬱陶しいな。
 わたしは、ため息をつく。
 「今は、それどころじゃねぇんだよ。いろいろ忙しいし」
 「なら!」
 ライザがわたしの方に身を乗り出した。
 「お父様と踊ったらいいわ。お父様なら一応、トガーの保護者みたいなものだし大丈夫よ」
 そうなの?
 わたしは、ライザに向かって頷いた。
 「なら、ご主人様と踊ろうかな」
 「約束よ、トガー!」
 ライザが笑顔を浮かべた。
 「絶対、絶対、お父様と踊ってね」
 クロイツの街は、なんだか浮き立っていた。
 この世界では、新年の祭りは、とても重要なものなのだという。
 確か、治療院でもパーティーを開くとか言ってたし。
 わたしは、ふと、ライナス先生のことを思い出した。
 ライナス先生は、この年末を実家で過ごしていた。
 ライナス先生の実家は、隣のオーキッド領にあるらしい。
 なんでも、オーキッド領の領主の3男とか。
 今頃、お貴族様のお付き合いで大変だろうな。
 まあ。
 わたしは、関係ないけれど。
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