上 下
116 / 230
10 ボディメイカー

10ー9 助けてください!

しおりを挟む
 10ー9 助けてください!

 大公閣下は、じっと燃えるような瞳でわたしを見詰めていた。
 「答えてくれ、トガー殿。あなたは、人工の肉体の研究をしておられるとか?」
 ほえっ?
 わたしは、ひきつった笑いを浮かべて凍りついていた。
 バレてるのね!
 「あのっ!それは、決して大公閣下が思われているような、戦争に使うためのものではなくっ!ただの体の不自由な人のための研究であって、しかも、わたしは、ただの発案者であって技師ですらありませんからっ!」
 わたしの言葉をきいて大公閣下と連れの女性が顔を見合わせて頷きあった。
 「君にちょっと会って欲しい人がいるんだよ」
 はい?
 大公閣下とその連れの女性に促されてわたしは、奥のベッドへと連れていかれた。
 待ってください!
 わたしは、びびりまくっていた。
 何?
 この人たちは、何をするつもり?
 だが。
 奥のベッドの上を見てわたしは、絶句した。
 そのベッドの上には痩せ細った一人の女性が横たわっていた。
 あれ?
 どういうこと?
 わたしがぽかんとしているとその女性が目を開いてわたしを見つめた。
 青い美しい瞳だ。
 「お父様、その方が、トガー様、なの?」
奇妙に固い小さな声に大公閣下は頷いた。
 「そうだ。タリア」
 「トガー様」
 その女性は、わたしを呼んだ。
 わたしは、彼女の全身をそっと見回した。
 彼女は、呼吸が止まらないようにか、何かの魔術的な装置を喉元に取り付けられていた。
 全身は、ピクリとも動かない。
 「タリアは、病気だ」
 大公閣下が低い声で話した。
 「タリアは、この子は、身体中が動かなくなる病なのだ」
 まさか。
 わたしは、大公閣下にきいた。
 「それは、手足が徐々に動かなくなり、今では、呼吸も止まりかねない病ということですか?」
 大公閣下が頷く。
 うん。
 たぶん、この女の人は、筋萎縮性側索硬化症、いわゆるALSだ。
 それも、かなり具合がわるいらしい。
 「この女性は?」
 「この子は、私と側室であるこのレイアとの間に生まれた子でタリアという。今年で28才になるがもう10年ほど前から徐々に全身が動かなくなったきた。国中の名医と呼ばれる者たちを呼び寄せたがどうすることもできなかった。今では、この装置で呼吸だけは止まらないように守っている」
 マジですか?
 わたしは、嫌な予感中だった。
 そして、それは的中した。
 大公閣下は、わたしに頭を垂れた。
 「頼む!この子を助けて欲しい。トガー殿!」
 「お願いします、トガー様。とうか、この子を助けてください!」
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹、異世界にて最強

海鷂魚
ファンタジー
妹へ届いたのは、異世界へのチケット。 巻き込まれる兄と最強である妹の物語。

コミュ障、異世界転生で存在消失す ~透明人間はスローなライフも思いのままでした~

好きな言葉はタナボタ
ファンタジー
早良尻(さわらじり)エリカは23才の女子大生。 人嫌いが原因で自殺した彼女は、神様に人嫌いを咎(とが)められ異世界に飛ばされてしまう。「お前を誰にも気づかれない存在に生まれ変わらせてやろう。 人恋しいという気持ちが生まれるまで人の世で孤独を味わい続けるがいい」 ところがエリカは孤独が大好物だった。 誰にも認識されない存在となった彼女は、神様の思惑に反して悠々自適の生活を送ることに。

婚約破棄された聖女がモフモフな相棒と辺境地で自堕落生活! ~いまさら国に戻れと言われても遅いのです~

銀灰
ファンタジー
生まれながらに、その身に聖なる女神の力を宿した現人神、聖女。 人生に酷烈たる天命を負った、神と人に献身の奉じを約束した存在――聖女ルールゥは、己の存在意義をそのようなものであると固く信じていたのだが……。 ある日ルールゥは、婚約を結んでいた皇子から婚約破棄を言い渡されてしまう。 曰く、昨今の技術発展に伴い聖女の力が必要とされなくなり、その権威が失墜の一途を辿っているからだという。 罵詈雑言と共に婚約破棄を言い渡されただけではなく――近く、聖女としての責務も解かれると宣告される。 人々に忘れ去られ、天命の意味を失い――ルールゥは追われるように国を後にする。 聖女に寄り添う神獣のミハクを旅の共に、艱難辛苦を乗り越え、住み良い辺境の地を発見し、そこで新たな生活が始まろうとしていたのだが――。 その地で待っていたのは、もふもふな相棒と過ごす、自堕落な生活だった!? 与えられた天命を捨て、心を取り戻し、新たな天命の意味を見出す物語。 働くって、クソです!?

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

乙女ゲームのヒロインなんてやりませんよ?

メカ喜楽直人
ファンタジー
 一年前の春、高校の入学式が終わり、期待に胸を膨らませ教室に移動していたはずだった。皆と一緒に廊下を曲がったところで景色が一変したのだ。  真新しい制服に上履き。そしてポケットに入っていたハンカチとチリ紙。  それだけを持って、私、友木りんは月が二つある世界、このラノーラ王国にやってきてしまったのだった。

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

最強幼女のお助け道中〜聖女ですが、自己強化の秘法の副作用で幼女化してしまいました。神器破城槌を振り回しながら、もふもふと一緒に旅を続けます〜

黄舞
ファンタジー
 勇者パーティの支援職だった私は、自己を超々強化する秘法と言われた魔法を使い、幼女になってしまった。  そんな私の姿を見て、パーティメンバーが決めたのは…… 「アリシアちゃん。いい子だからお留守番しててね」  見た目は幼女でも、最強の肉体を手に入れた私は、付いてくるなと言われた手前、こっそりひっそりと陰から元仲間を支援することに決めた。  戦神の愛用していたという神器破城槌を振り回し、神の乗り物だと言うもふもふ神獣と旅を続ける珍道中! 主人公は元は立派な大人ですが、心も体も知能も子供です 基本的にコメディ色が強いです

《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~

芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。 案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが 思うのはただ一つ 「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」 そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。 エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず 攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。 そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。 自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する これは異世界におけるスローライフが出来る? 希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。 だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証? もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ! ※場所が正道院で女性中心のお話です ※小説家になろう! カクヨムにも掲載中

処理中です...