上 下
47 / 68
5 俺と魔王の秘密の約束

5ー6 アルフォンス

しおりを挟む
 5ー6 アルフォンス

 『秤の悪魔』は、魔王アキセル・バルムドールによって追い払われた。
 俺が悪魔に拐われた夜から3日後、俺が娼館の掃除をしていると客がきた。
 その客は、俺の待ちかねていた人だった。
 「アルフォンス?」
 俺がモップを持ったまま呼び掛けるとアルフォンスは、いつもの柔らかな笑顔を浮かべて答えた。
 「ミコト様・・お待たせして申し訳ありませんでした」
 俺は、思わずアルフォンスに駆け寄り彼を抱き締めていた。
 「ミコト様?」
 「・・心配してたんだからな!」
 俺が震える声で話すと、アルフォンスは、ふふっと耳元で笑った。
 「それは、こちらの台詞では?」
 「アルフォンス」
 ラーが俺を引っ張ってアルフォンスから引き離しながら訊ねた。
 「王宮は?あの愚弟は、どうなっている?」
 「アルバート国王陛下」
 アルフォンスが冷たい眼差しでラーを見た。
 「あなたは、ほんと、無能ですね。私のミコト様をまた、泣かせましたね?」
 アルフォンスがラーの腕から俺を取り戻そうとするのをラーが拒み、2人で睨みあう。
 俺は、困ってクロムウェルを探した。
 クロムウェルは、レイモンドやリムと話していたが俺の救いを求める視線に気づいて慌ててやってきた。
 「2人とも、ミコト様が困っておられるではないですか。やるならミコト様のおられないところでやってください」
 いや!
 そういうことじゃないし!
 なんとかアルフォンスとラーに睨みあいを止めさせると俺たちは、クーラントの執務室へと向かった。
 俺は、アルフォンスに聞きたいことがいっぱいあったんだが、アルフォンスのクーラントへの話がすんでからと思っていた。
 久しぶりに見るアルフォンスは、なんだか青白い顔色をしてて俺は、ちょっと心配になる。
 アルフォンスは、人間ではない。
 人間の手によって作られた人造人間。
 『異界ゼータ』をあまねく支配する頭脳である本体のアルフォンスの分身であり、『異界ゼータ』の将来のために王のもとに嫁いだ俺に付き従ってくれている。
 今回は、王城を追われた俺のために離宮に残って王宮を探ってくれたりしてたんだろうけど、無理してなかったらいいんだが。
 クーラントは、自分のもとを訪れたアルフォンスたちを見ると表情を強ばらせた。
 「あんたが来たということは、揉め事はだいたい片付いたってことか?」
 クーラントに問われてアルフォンスは、頷いた。
 「クーラント殿には、大変世話になり感謝している。これは、些少だが」
 アルフォンスは、クーラントの執務机に皮の袋に入ったものをどさりと置いた。
 「金でこの恩を返せるとは思っていないが、とりあえずこれを受け取ってほしい」
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

三度目の人生は冷酷な獣人王子と結婚することになりましたが、なぜか溺愛されています

倉本縞
BL
エルガー王国の王子アンスフェルムは、これまで二回、獣人族の王子ラーディンに殺されかかっていた。そのたびに時をさかのぼって生き延びたが、三回目を最後に、その魔術も使えなくなってしまう。 今度こそ、ラーディンに殺されない平穏な人生を歩みたい。 そう思ったアンスフェルムは、いっそラーディンの伴侶になろうと、ラーディンの婚約者候補に名乗りを上げる。 ラーディンは野蛮で冷酷な獣人の王子と噂されていたが、婚約者候補となったアンスフェルムを大事にし、不器用な優しさを示してくれる。その姿に、アンスフェルムも徐々に警戒心を解いてゆく。 エルガー王国がラーディンたち獣人族を裏切る未来を知っているアンスフェルムは、なんとかそれを防ごうと努力するが……。

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

処理中です...