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4 離れて眠る夜

4ー9 立太子

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 4ー9 立太子

 数日後、僕は、登城した。
 僕は、王の執務室へと通された。
 王は、僕にソファをすすめると自分も僕の前の椅子に腰を下ろした。
 「よく来たな、ルルシア」
 王は、僕に向かって微笑んだ。
 「お前のところの商会の活躍のおかげで王都の食料事情が改善されたようで、嬉しく思っている」
 「はぁ・・」
 僕は、じっと王のなんだか嘘臭い笑顔を見つめていた。
 「どうぞ」
 顔を上げるとかつて僕の執事をしてくれていたクリナドが立っていて、僕の方へとお茶を差し出していた。
 僕は、懐かしい気持ちがしていた。僕が王立学院を卒業してから、まだ、ほんの数ヵ月しか経っていないのだが、なんだか、もう、何年も時が過ぎたような気がしていた。
 僕は、お茶を受けとるとクリナドに礼を言った。クリナドは、僕に優しく微笑んだ。
 「ところで、お前に頼みがあるんだが」
 王が口を開く。
 「お前を王族に迎えて、立太子を行いたい」
 はい?
 僕は、きょとんとしていた。王は、こほん、と咳払いをすると、僕に話した。
 「実は、お前の弟である前王太子のアロイスなんだが、妙なことになってな」
 王がいうところによると、アロイスは、前代未聞のスキャンダルを起こしたために廃嫡されることになったとか。
 僕は、学院時代に数回見かけたことがある弟のことを思い出していた。
 クリスにきいたのだが、僕を女装して口説き落として、ほんとは男であるクリスに夢中になっている僕をみんなでバカにするとかいう頭の悪い作戦をたてたのは、アロイスだったらしい。
 それだけで十分愚かさは、証明されているのだが、なんと、アロイスは、町の娘に横恋慕して無理矢理その町娘を王宮に連れてきて側室にしようとしたんだとか。
 町娘の婚約者である青年が仲間を集めて王城前でデモを起こしてそれが、徐々に拡大されてきている、と王は、話してため息をつく。
 「このままでは、暴動が起きかねない。そこで、アロイスを廃嫡して兄のお前を王太子にということになった」
 なった、って・・
 僕は、なんだか嫌な予感中だった。
 だいたい、兄とか弟とかっていっても同い年だし。
 つまり、このおっさんがほぼ同時に僕たちの母さんたちにちょっかいだしてたってことで。
 だから、母さんは、きっとこのおっさんを身限ったんだろう。
 
 
 
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