上 下
23 / 71
2 兄と弟

2ー9 父親

しおりを挟む
 2ー9 父親

 王都につくとすぐに僕は、王立学院へと連れていかれた。
 王立学院は、全寮制の学院で僕は、男子寮の最上階のフロアへと通された。
 僕と僕の荷物を持った御者がフロアへと入っていくと廊下の両側にずらっと並んだ使用人らしき人たちが僕に頭を垂れた。
 僕は、御者の後について行った。
 御者は、僕の荷物を持って奥まったところにある部屋へと向かった。
 そこは、すごく立派な部屋で。
 お高そうな家具が置かれた贅沢なリビングといった感じの部屋に大きな踏み机らしきものが置かれている。
 御者は、僕らの後をついてきていたメイドさんたちに僕の鞄を渡すと僕にソファに座るようにと促した。
 御者は、僕の前にたつと礼をとった。
 「ルルシア様、王都によくおいでくださいました。私は、これからあなたにお仕えする執事のクリナドと申します。どうぞ、お見知りおきを」
 僕は、目の前の執事と名乗った彼をまじまじと見ていた。
 この1ヶ月の旅の間、ずっと僕のことをかいがいしく世話してくれた彼のことは、なんとなく好ましくは思っていた。
 それが、まさか執事だったとは!
 僕は、彼をじっと見つめた。
 クリナドは、浅黒い肌をしたおっさんで、黒髪に黒い瞳をしているなかなかの美中年だ。
 執事のお仕着せらしいものを身にまとっている彼は、確かに、使用人の中では、一際目立つ存在だった。
 彼は、メイドに命じてお茶を用意してくれた。
 彼に給仕されお茶を飲んでいる僕のもとに見知らぬおっさんが現れた。
 なんだか、見覚えがあるような既視感を感じるそのおっさんは、僕の前のソファに腰を下ろすと僕のことをじろじろと眺めていたがやがて口を開いた。
 「ずいぶんと大きくなったな、ルルシア」
 その言葉で僕は、これが僕の本当の父親なんだと理解した。
 僕と同じ黒髪を肩まで伸ばした黒い瞳のおっさんは、なかなかの男前で。
 母さん、意外と面食いなんだ。
 僕は、魔王のおっさんの顔を思い浮かべていた。
 「なんでもカーブを育てているそうだな」
 目の前にいる父親だというおっさんが僕に話しかけてくるので、僕は、こくっと頷いた。
 おっさんは、僕に話し続けた。
 「かなりの遣り手の農場主だとロニアの領主からは聞いてる。なんでも手広く農産物やらカーブの製品やらを扱っているらしいな」
 僕は、じっとそのおっさんを見つめて話をきいていた。
 おっさんは、目を細めて僕を見た。
 「リリアは・・母さんをしっかり守ってくれたんだな。礼をいうよ、ルルシア」
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

王太子が護衛に組み敷かれるのは日常

ミクリ21 (新)
BL
王太子が護衛に抱かれる話。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...