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2 兄と弟

2ー7 甘い苦しみ

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 2ー7 甘い苦しみ

 「毎日、眠る前に必ず、私のことを考えてくれ」
 それがアーキライトの願いだった。
 僕は、毎日、アーキライトのその願いを叶えることを彼に約束した。
 そして、僕にアーキライトは、そっと囁いた。
 「もちろん、今日の願い事は、別に叶えてもらう」
 僕が弾かれたように顔をあげてアーキライトを見ると、彼は、ふっと微笑んだ。
 反則!
 これ、反則だから!
 アーキライトの微笑みに僕は、息を飲んでぼぅっと見つめていた。
 その夜。
 アーキライトは、添い寝する僕を
そっと背後から抱き締めて囁いた。
 「寂しくなるな」
 アーキライトのその言葉に僕は、胸が締め付けられた。
 でも、僕は、わざとそっけなく呟いた。
 「どうせ、また、別の男を連れ込むんだろ?」
 「誰も、ここには連れてこない」
 アーキライトが僕をぎゅっと抱き込んだ。
 「私がこの部屋に連れ込むのは、お前だけだ」
 「・・この部屋に連れ込まなくても、他の男と寝るんだろ?」
 僕は、口がカラカラに乾いていた。アーキライトは、僕の首もとに顔を埋めると囁いた。
 「望むがいい、ルルシア。お前が望むなら私は、お前以外の誰にも抱かれないし、抱くこともない」
 「でも・・」
 僕は、頭がぼぅっとしていた。アーキライトの香りに包まれて、僕は、震える声できいた。
 「アーキライトは・・そういうことせずには、いられないんじゃ?」
 「そうだ」
 アーキライトは、僕の問いに答えた。
 「私の呪われたこの体は・・常に誰かの精を求めずにはいられない。だが、お前が私のために、夜、ベッドに入るときに私のことを考えてくれるのなら」
 アーキライトが僕の髪に口づけした。
 「私は、お前のために堪えてみせよう」
 「でも、それって、アーキライトにとって苦しいことなんじゃ?」
 僕は、アーキライトに抱き締められたまま胸がきゅうっとなっていた。
 「僕は、アーキライト・・兄さんを苦しませたくない」
 「確かに苦しいかもしれない」
 アーキライトがくすっと笑う吐息が僕の耳にかかって僕は、思わず身を竦めて熱い吐息を漏らした。
 アーキライトは、僕を抱いたまま続けた。
 「しかし、その苦しみは、甘い」
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