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1 母の再婚
1ー4 魔王
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1ー4 魔王
僕が11歳の冬。
母さんが旅人を泊めたいとかいって僕に相談してきた。
うん。
間違いなくこれは、あれだ。
たぶん、結婚が決まったんだな。
それで、僕に引き合わせようと。
僕は、ちょっとだけ複雑な気持ちだったが、笑顔で受け入れることにした。
どんな嫌なおっさんであろうとも母さんが幸せになれるのなら僕は、受け入れるつもりだった。
たぶん、うらぶれたおっさんなんだろう、そう、僕は、思っていた。
だが。
現れたのは、どこの俳優さん?ってぐらい男前のしゅっとしたおっさんだった。
というか。
サムライ?
髪を後で結ったそのおっさんは、まったく隙がない動きをしていた。
おっさんは、僕ににっこりと笑いかけると意味ありげに告げた。
「ずいぶんと立派な農場だね、ルルシア」
うん?
僕は、嫌な予感がしておっさんをじっと凝視していた。
なんか。
おっさんに見つめられると力が抜ける感じがする?
こいつ、なんか、変!
僕は、深呼吸して腹にぐっと力を入れる。
母さんが僕たちに声をかけた。
「2人とも、ご飯にしましょう!」
母さんとおっさんが腰かけた前に僕は、1人座って上目使いにおっさんを見ていた。
おっさんは、母さんといちゃこらしていたが、時々、すっと凍えるような目で僕のことを見ていた。
その日の夜。
母さんが寝てしまってからおっさんが僕のところにきた。
僕は、牛(カーブ)小屋の近くの部屋を自分用の部屋にもらっていた。
そこにやってきたおっさんが僕に訊ねた。
「君は、何者なんだ?」
「あんたこそ」
僕は、おっさんに聞き返した。
「ただの旅人なんかじゃないだろ?」
僕は、自分のチートな力を戦いに使ったことはなかったし、使いたいとも思っていなかった。
だが、もしも、このおっさんがダメなヤツなら。
母さんにとって良くないものなら、僕は、こいつをなんとかして追い払おうと心を決めていた。
僕たちの間には、一触即発の雰囲気ができあがっていた。
だが。
ふいにおっさんの殺気が消えた。
「どうでもいい」
おっさんが僕に話した。
「君は、見たところリリアにとって悪ではないようだし」
「僕は、どうでもよくない!」
僕は、おっさんに声を荒げた。
だって、そうだろう?
母さんの好きな相手だし!
できれば母さんには幸せでいて欲しいし!
おっさんは、僕をみてふはっと笑った。
「いいだろう」
僕とおっさんは、それから腹を割って話すことにした。
僕は、転生者であること。
おっさんは、魔王であること。
そして。
僕たちは、協定を結ぶことにした。
それは、母さんのため。
僕は、母さんとおっさんの結婚を認めるかわりにこの農場を守ることをと母さんの絶対的な幸せを。
おっさんは、僕の持っている農業や畜産の知識を魔王国に広めることを。
こうして母さんのために僕は、魔王と母さんの結婚を認めることにしたんだ。
僕が11歳の冬。
母さんが旅人を泊めたいとかいって僕に相談してきた。
うん。
間違いなくこれは、あれだ。
たぶん、結婚が決まったんだな。
それで、僕に引き合わせようと。
僕は、ちょっとだけ複雑な気持ちだったが、笑顔で受け入れることにした。
どんな嫌なおっさんであろうとも母さんが幸せになれるのなら僕は、受け入れるつもりだった。
たぶん、うらぶれたおっさんなんだろう、そう、僕は、思っていた。
だが。
現れたのは、どこの俳優さん?ってぐらい男前のしゅっとしたおっさんだった。
というか。
サムライ?
髪を後で結ったそのおっさんは、まったく隙がない動きをしていた。
おっさんは、僕ににっこりと笑いかけると意味ありげに告げた。
「ずいぶんと立派な農場だね、ルルシア」
うん?
僕は、嫌な予感がしておっさんをじっと凝視していた。
なんか。
おっさんに見つめられると力が抜ける感じがする?
こいつ、なんか、変!
僕は、深呼吸して腹にぐっと力を入れる。
母さんが僕たちに声をかけた。
「2人とも、ご飯にしましょう!」
母さんとおっさんが腰かけた前に僕は、1人座って上目使いにおっさんを見ていた。
おっさんは、母さんといちゃこらしていたが、時々、すっと凍えるような目で僕のことを見ていた。
その日の夜。
母さんが寝てしまってからおっさんが僕のところにきた。
僕は、牛(カーブ)小屋の近くの部屋を自分用の部屋にもらっていた。
そこにやってきたおっさんが僕に訊ねた。
「君は、何者なんだ?」
「あんたこそ」
僕は、おっさんに聞き返した。
「ただの旅人なんかじゃないだろ?」
僕は、自分のチートな力を戦いに使ったことはなかったし、使いたいとも思っていなかった。
だが、もしも、このおっさんがダメなヤツなら。
母さんにとって良くないものなら、僕は、こいつをなんとかして追い払おうと心を決めていた。
僕たちの間には、一触即発の雰囲気ができあがっていた。
だが。
ふいにおっさんの殺気が消えた。
「どうでもいい」
おっさんが僕に話した。
「君は、見たところリリアにとって悪ではないようだし」
「僕は、どうでもよくない!」
僕は、おっさんに声を荒げた。
だって、そうだろう?
母さんの好きな相手だし!
できれば母さんには幸せでいて欲しいし!
おっさんは、僕をみてふはっと笑った。
「いいだろう」
僕とおっさんは、それから腹を割って話すことにした。
僕は、転生者であること。
おっさんは、魔王であること。
そして。
僕たちは、協定を結ぶことにした。
それは、母さんのため。
僕は、母さんとおっさんの結婚を認めるかわりにこの農場を守ることをと母さんの絶対的な幸せを。
おっさんは、僕の持っている農業や畜産の知識を魔王国に広めることを。
こうして母さんのために僕は、魔王と母さんの結婚を認めることにしたんだ。
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