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7 職業に貴賤なし、です。
7ー4 転職の神殿
しおりを挟む僕は、転職の神殿のある東部のジュークズへと向かうことにした。警備のためとかいってアーシェも一緒に来てくれることになった。
王都グリニッジからジュークズまでは、馬車で丸一日かかった。
馬たちを急き立てて、なんとか僕たちは、その日の夕方過ぎには、ジュークズへと到着した。
僕たちは、すでに薄暗くなっている町を馬車で走って、転職の神殿へと向かった。
神殿の回りには、誰もいなかった。
人どころか、子猫一匹いなかった。
無人で、周囲を囲んだ壁も崩れかけているし、所々にゴミのようなものも落ちている。
「ほんとに、大丈夫なのかな」
僕が恐る恐る神殿の中を覗き込んでいると、アーシェが言った。
「まあ、転職なんて、ほとんどする人はいないですからね」
マジか?
僕が躊躇するのを見て、アーシェは、僕の背を押した。
「さあ、行きましょう、ユヅキ」
「うん・・」
僕らは、無人で寂れた神殿の中へと入っていった。
薄暗い神殿の中には、灯りもともされてはおらず、神殿というよりどっかのダンジョンという感じだ。
「灯りよ、点れ!」
僕が言うと、ぼんやりと炎が空中を飛んで少し、通路が照らされて足元が見えるようになった。
うん。
ゴミだらけだよね。
何?
ここは、ヤンキーの溜まり場かなんかなの?
僕たちは、無言で神殿の奥へと入っていった。
しばらく歩くと、 少し、開けた場所に出た。
薄汚れた女神像には、とても口には出せないような落書きが書かれていたり、台座には、ゴミが一杯放置されていた。
僕は、ハンカチを出して、女神像を拭いた。アーシェもゴミを集めたりと手伝ってくれた。
僕らは、夜半過ぎまでかかって、辺りを掃除した。
ゴミを部屋の隅にまとめて、女神像をきれいに磨くとなかなかきれいになった。
満足して僕は、その女神像を見上げた。
うん。
ボンキュボンの美人さんだ。
僕は、女神像の前にひざまづくと祈りを捧げた。
多くは望みません。
僕は、祈った。
せめて、冒険者登録のできる職業を僕に与えてください。
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