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7 職業に貴賤なし、です。

7ー3 そうだ!転職しよう!

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   「全くの杞憂ですよ、宰相閣下」
    ハヅキ兄さんが冷ややかな笑みを浮かべて言った。
   「ユヅキは、病弱故にあまり表に出ないだけで、ちゃんと存在します」
    「ならば、それを証明できるかね?」
    セイル老が言った。
   「誰にも知られていない存在であるユヅキ・マージナルがいることを、あなた方は証明できるのかな?」
    「もちろん、出来ます」
     ハヅキ兄さんがきっぱりと言った。
    セイル老は、ふむっとしばらく考え込んでいたがやがて応じた。
   「ならば、猶予を差し上げましょう。近日中には、ユヅキ・マージナル本人がその証しと共に王城へと登城するということでよいですかな?」
    セイル老が笑った。
    「私も、こんなことはしたくはないのですよ。うちは家族で『カピパランド』の
大ファンですからな」
    「ありがとうございます」
     ハヅキ兄さんが頭を下げると、セイル老は、微笑んだ。
   「では、失礼」
      セイル老が去った後、僕とハヅキ兄さんは、応接室のソファに腰を下ろして溜め息をついた。
    「こう来るとはな」
     ハヅキ兄さんが言ったので、僕は、うん、と頷いた。
   「今まで、姿を隠していたことが仇になったかな」
    「お前がユヅキだと証明しろ、と奴等は言っているようだが、どうしたものかな」
   「僕にあるのは、商業ギルドのカードだけだしな。冒険者ギルドでは、登録できなかったから」
    あれから、何度か冒険者ギルドに行ってみたけど、やはり、何度やっても登録はできなかったのだ。
    「この世界じゃ、自分の証明は、こういうカードだけだからな。できれば、冒険者ギルドの発行するカードがあればよかったんだけど。まあ、商業ギルドでも通用しない訳じゃないしな」
    「だが、アゼリアたちと我々は、通じていると思われている。そこをつかれかねないぞ」
    ハヅキ兄さんが言った。
   「ダメもとで、もう一度、冒険者登録してみるか?」
    「そうだな」
    僕は、答えた。
   「もう一度、試してみるかな」
    僕は、もう一度、冒険者ギルドへと行ってみることにした。
   だけど。
   僕のステータスは、『無職』のままだ。
   うん。
   たぶん、このままじゃ無理っぽいな。
   僕が考え込んでいると、たまたま、事務所を訪れたアーシェが僕に訊ねた。
    「どうしたんですか?ユヅキ」
     「実は・・」
     僕は、アーシェにセイル老のことやらを話した。すると、アーシェが唸った。
   「うーん。『無職』かぁ。難しい問題ですね。もし、なんか、職業があれば、転職の宮殿で転職することができるんですが」
    「それだ!」
    うん。
    僕は、そのとき、閃いた。
   そうだ!
   転職しよう!
     
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