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6 それぞれの選ぶ未来
6ー9 僕たちの罪
しおりを挟むマリアンヌが傷つき、僕の前に現れたときのことだった。
彼女は、傷が回復した頃に僕に話した。
「わたしは、あなたを好きだけども、もう、愛してはいない」
彼女は、言った。
「わたしは、別の人を愛してしまった」
それは、アウデミスのことだった。
彼女は、奴を愛している。
あんな風に傷ついた彼女を捨て去った奴のことを。
マリアンヌであるマチカは、アウデミスのことを愛しているのだ。
「アウデミス様は」
マリアンヌは、夢見るように微笑んだ。
「わたしのことを必要だと言ってくださった」
彼女は、言った。
「その言葉だけで、わたしは、生きていける」
僕は。
アウデミスと戦わなければならないのか?
それは、この世界の意思なのか?
それとも。
僕にかけられた呪いの発動なのか。
「まだ、だ」
僕は、拳を握ると1人呟いた。
「まだ、僕は、生きなくてはならない」
まだ。
この世界の人々は、僕のことを必要としてくれている。
まだ、この世界でやりたいことがある。
「マチカも、そう思っていたんじゃないのか?」
はっとして振り向くとそこには、僕とそっくりな誰かが立っていた。
意地の悪そうなそいつは、にやりと笑った。
「他の悪神に取り憑かれた人たちだって、そうだ」
それを、お前は、殺したんだ。
僕の頭の中で、そいつは、言った。
「やめろ!」
僕は、叫んだ。
「僕が悪いんじゃない!全ては、悪神が、奴が悪いんだ!」
「なぜ?」
もう1人の僕は、僕に訊ねた。
「なぜ、いったい、誰が悪神を悪とした?誰が、悪神を創ったんだ?」
「知らない・・」
僕は、頭を振った。
「僕は、何も知らない」
「本当に?」
そいつは、言った。
「悪神の対極にいたお前が、ほんとにそれを知らないのか?」
ああ。
僕は、耳を押さえて叫んだ。
「僕は、知らない!何も、何も、知らないんだ!」
「嘘」
闇の中からマチカが現れた。
「あなたは、知っている筈」
「何を?」
「悪神は、言霊使いと対極に存在するもの。つまり、言霊使いが悪神を生んだってことを」
そんな!
僕は、驚愕した。
僕たちが、悪神を作り出していたのか?
「気がついたか?言霊使いよ」
僕の姿をしたそいつは、言った。
「お前たちは、自らが産み出したものを、自らの手で滅ぼしていたのだ」
「お前たち、言霊使いの罪、それは」
そいつは、にやりっと笑った。
「悪神を創り、そして、滅ぼしたこと」
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