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3 冒険者になれなくたって、大丈夫!

3ー5 営業は、笑顔でね。

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   僕は、翌日、商業ギルドを訪れていた。
   ギルドに行くと、僕は、受付で言った。
   「胡椒を売り出したいんだけど」
    「はい?こしょう、ですか?」
     受付のお姉さんは、意味がわからないという表情を浮かべていたが、すぐに応じた。
   「少し、お待ちください」
    5分ほど待たされてから、僕は、奥にある簡素な応接室のような場所へと通された。
   僕は、ソファに腰かけて待った。
   待っている間に、僕は、商品の入った革袋をいくつか取り出してテーブルの上に置いた。
    これは、くしゃみ花の種から作った胡椒だった。
   昨日、宿屋の女の子に聞いたところでは、この国には、胡椒というものはないようだった。
   実際に、料理は、ほとんど塩だけで味つけられている。
   その塩すらも貴重品で庶民は、なかなか手のでないものらしかった。
    マジで?
      これなら、僕らの村の調味料は、どれも、高く売れるんじゃね?
   僕は、気長に待ち続けていたが、なかなか、ギルドの人は現れなかった。
   もう、2時間は待ってるぞ。
   僕は、溜め息をついた。
   やっぱり、胡椒なんて売れないのかな。
   そのとき、ドアが開いて背の高い迫力のある黒髪の美女が入ってきた。
   「待たせしてしまい、申し訳なかった」
    美女は、僕の前の椅子に腰かけると、言った。
    「私は、ここのギルド長をしているアゼリア・ローエンタールだ」
     「僕は、ユヅキといいます」
     僕らは、握手を交わした。
    アゼリアさんは、早速テーブルの上に置かれた革袋に目を止めた。
    「これが、こしょう、とかいうものなのか?」
    彼女は、僕が答える前に袋を開いて中を覗き込んだ。
   あっ!
   僕が止める間もなく、アゼリアさんは、胡椒を吸い込んでしまった。
   彼女は、顔を背けてくしゃみをした。
   「なんだか、鼻がむずむずするな」
    アゼリアさんは、くしゃみを繰り返した。
    僕は、言った。
    「これは、料理に使う調味料です。これを使えば料理がとても美味しくなります」
    「本当に?」
     アゼリアさんは、ハンカチを取り出して鼻を拭きながらきいた。
   「塩のようなものか?」
    「いえ・・」
     僕は、言った。
    「まずは、味をみてもらってもいいですか?」
    僕は、ストレージの中からみんなに用意してもらっていた、焼いたポルクの肉に塩胡椒で味付けしたものののった皿を取り出してテーブルの上に置いた。
    アゼリアさんは、目を細めた。
   「ほう、ストレージ持ち、か」
    「このポルクの肉は、塩と胡椒で味をつけています。どうぞ、召し上がってみてください」
    アゼリアさんは、クンクンと怪しむように肉の匂いを嗅ぐと恐る恐る一口肉を摘まんで口に放り込んだ。
    そして。
   「うんまい!」
     アゼリアさんは、感激した様子で言った。
   「なんだ?このえもいわれぬ味は。ぴりっとした刺激に、食欲をそそる香り。これが、こしょう、なのか?」
    アゼリアさんは、あっという間に皿の上のポルクの肉を平らげた。
   「うむ。このポルクの肉の旨さもなかなかのものだが、この味は。今までに食べたことのないもの、だ」
    アゼリアさんは言った。
   「こしょう、とやらあるだけ買い取ろう」
     「いや、これは、とても貴重なものなので、今は、この袋の分しかないので」
    僕は、胡椒は2袋しか用意していなかった。
   「胡椒が気に入っていただけたなら、こちらのハーブはいかがですか?」
   「ハーブ?」
    アゼリアさんは、身を乗り出して僕が開いた袋を覗き込んだ。
   
   
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