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1 お兄ちゃん!転生先までついてこないで!
1ー4 出られずの森と役立たずの僕
しおりを挟む僕は、魔の森にある村で暮らしている。
その森は、一度入ると出られないと言われていた。
僕は、その森の入り口に捨てられていたのだという。
僕を拾ってくれたのは、村の一員であるゴブリンのホブゴブだった。
ホブゴブは、5人の子供を育てる母親で、僕や、兄さんたちのことも一緒に育ててくれた。
ホブゴブが言うには、僕は、子フェンリルと子竜と、子カピパラじゃなくって、子プーティに守られていたらしい。
「守るっていっても、この連中だってほんの子供だったからね。でも、どう見てもあんたを守ってる様だったよ」
ホブゴブは、僕を拾うと村に連れ帰った。
そんな彼女の後ろを子フェンリルたちもついてきたのだと言う。
僕らは、村で育てられた。
村には、この森に迷い込んで出られなくなってしまった人々が暮らしていた。
ゴブリンのホブゴブたちに、オークのみなさん、それに人間が何人か。
まあ、村と言っても小さな、寄せ集めの集落にすぎなかった。
森に囚われ出られなくなった人々がそっと寄り添いあって暮らしていた。
僕は、そこで15才になるまで暮らしていた。
ラック爺は、ずいぶん昔からこの村に住んでいる神官で、一応、みんな、15になれば種族に関わらず、成人の儀をすませるのだった。
といっても子供は、人数が少なくって、僕の他には、3才ぐらい年下の猫耳族のオルガぐらいしか、村にはもう子供は、いなかった。
みな、子供が成人の儀を行うときは、すごく期待感が高まるのだった。
この森を出られるような能力を与えられるのではないかと思おうからだった。
だが。
今までに、誰もそんな力を得られることはなかった。
もちろん、僕も含めて。
「はぁ」
僕は、村の中央にある巨木の上に登って村を見渡しながら溜め息をついた。
「無職、かぁ」
「気にするな、ユヅキ」
僕の服の胸元からカピパラ、じゃなくってプーティのカヅキ兄ちゃんが顔を出した。
「お前は、この世界では何にも縛られることなく生きていける。それだけのことだ」
「うん」
僕は、カヅキ兄さんを服の上から抱いて頷いた。
村人たちは、僕とこの3体の魔物たちを兄弟として育ててくれた。
大きくなるとフェンリルとレッドドラゴンの兄たちは、村を魔物から守ってくれるようになった。
カピパラによく似たプーティは、村の守り神として崇められている。
プーティは、非常に珍しい聖獣だったからだ。
僕は、前世を思い出してから、余計にこの村に感謝の念を持つようになった。
誰にも知られず、そっと僕を生かしてくれたこの村の人たちには、感謝しかない。
だが。
僕になんのお礼ができるのか。
なんのスキルも持たない。
僕は、この世界じゃ役立たずだ。
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