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7 全員変身!魔法乙男VSアビゲイル
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「伊崎君」
誰かが俺を呼んでいる。
「伊崎君」
もう、少し。
眠らせて。
「諭吉」
俺は、嫌な予感がして飛び起きた。
リリアンの唇が俺の唇に迫っていて、俺は、慌てて避けた。
リリアンが、ちっと、舌打ちする。
「これが、本当に、諭吉の夢の中なのか?」
礼二郎が辺りを見回す。
そこは、バラの花園だった。
ああ。
彼女の秘密の花園が。
俺は、溜息をついた。
リリアンが言った。
「で?あんたのアビゲイルは、どこ?」
俺は、黙って立ちあがり、歩き出した。
バラの咲き乱れる小道を、俺たちは、歩いた。
しはらく行くと、小さな庵のようなものがあった。
「あそこに」
俺は、指差した。
「彼女が」
「諭吉」
扉が開いて、彼女が現れた。
長い艶やかな黒髪。
陶器の様な白い肌。
涙が出そうになるほど、美しい乙女。
俺のアビゲイル。
アビゲイルは、はじめ、俺以外の人間たちがいることに戸惑いをみせたが、すぐに、俺の元へと駆け寄ってきた。
「逃げて、諭吉」
「えっ?」
いきなりの彼女の言葉に、俺は、驚きを隠せなかったが、かまわず、彼女は、必死に訴えた。
「あの人が」
アビゲイルが言った。
「夢魔の王が、あなたたちを殺そうとしている」
「夢魔の王?」
リリアンが言った。
「ボスキャラ?」
「なんのことだか、わからないけど、彼を怒らせては、いけない」
アビゲイルは、俺の手を取って、何かをそっと握らせた。
「これを」
俺は、手を開いてみた。
古いアンティークの指輪だった。
「これが、あなたを守ってくれるわ」
アビゲイルは、儚く、微笑んだ。
「さよなら、諭吉」
寂しそうに笑うアビゲイルに、俺は、彼女が、永遠の別れを告げていることに気づいた。
俺は、指輪を握りしめた。
もう、彼女に会えない。
そんなのは、嫌だった。
俺は、アビゲイルの手を取って歩き出した。
「諭吉?」
「行こう、一緒に」
俺が言うと、彼女は、複雑な表情をした。
俺は、きいた。
「どうしたんだ?」
「ううん」
彼女は、首を振った。
「何でもないの」
「諭吉!」
リリアンの声が聞こえた。
他のみんなが、バラの茂みから顔を出して手を振る。
「伊崎!」
「諭吉!」
「何、やってるんだ?」
俺は、きいた。
「バラが!」
アニータが、蔓にからめとられながら叫ぶ。
「あたしたち、異物を襲ってるのよ!」
異物?
確かに。
ここは、俺とアビゲイルの園。
他の誰にも、入って欲しくはない。
リリアンたちの悲鳴があがった。
バラが。
バラが、意思を持つように、みんなを襲っていた。
「諭吉、やめなさい」
アビゲイルが優しく言った。
「みんなを襲っては、いけないわ」
「何、言って」
俺は、アビゲイルを見た。
俺は、こいつらを疎ましく思っているが、別に、異物とまでは、思っていない。
まして、傷つけたいては。
だが。
蕀に襲われている彼等の姿に、俺は、微かな胸の痛みを覚えた。
「どうすれば、いい?」
俺は、アビゲイルにきいた。
「奴等を助けるには、どうすれば、いいんだ?」
「諭吉」
アビゲイルが言った。
「変身、して。私があげた、その指輪で」
変身?
俺は、嫌な予感がした。
だが、俺は、アビゲイルの言う通りに、右手の薬指に指輪をはめて、叫んだ。
「エンゲージ!」
暖かな、柔らかい光の渦に、俺は、包まれた。
「エターナル キューティー チェンジアップ!」
バラの花弁が舞い、俺の体を覆っていく。
ふわり。
優しい風が吹いて、俺の体が包まれる。
気がつくと、俺は、裾の長いドレス姿になっていた。
白いシルクのドレス。
りぼんが揺れている。
俺は、祈る様に両手を組み合わせて言った。
「あふれでる乙女心は、無限大。プリンセス キューティー ウォリアー!」
俺は、片手をバラに向かってかざした。
「ラブリー プリンセス テンペスト!」
嵐がおき、みんなを捕らえるバラの茂みを吹き飛ばした。
傷だらけになった礼二郎が叫んだ。
「諭吉、その女から離れろ!」
「危ない!諭吉!」
アニータが、叫ぶ。
「その女、危険よ!」
「危険?」
アビゲイル、が?
俺は、みんなの方に歩みよった。
見上が俺を見上げて、言った。
「伊崎君、すごく綺麗だ」
何?
「まるで、お姫様みたい」
見上の言葉に、俺は、少し、正気に戻ってきた。
俺は、何をしてたんだ?
ふと、足元を見る。
フリフリのドレスが目に入る。
「何じゃ、こりゃあ!」
「あら」
リリアンが言った。
「すごくキレイよ、プリンセス」
プリンセス?
俺が、プリンセス?
「やり直しを」
俺は、叫んだ。
「やり直しを要求する!」
背後でクスクス笑う声が聞こえた。
振り向くとアビゲイルが笑っていた。
「アビゲイル?」
「諭吉、遊びの時間は、もう、終わりよ」
アビゲイルが冷ややかに言った。
「夢魔の王は、あなたの死を望んでいるわ」
「アビゲイル?」
「死になさい、諭吉」
アビゲイルの言葉とともに、バラの茂みが何体もの黒い獣へと変化していった。
俺たちは、無数の獣たちに囲まれていた。
「アビゲイル!」
「危ない!プリンセス キューティー ウォリアー!」
礼二郎が俺を庇って黒い獣に飲み込まれる。
「礼二郎!」
礼二郎を飲み込んだ黒い獣の体から光が漏れた。
その光は、はじめ、一本だけだったが、すぐに、何本もの光の束になり、やがて、黒い獣は、粉々に吹き飛んだ。
「しびしび!」
「あふれでるラブパワー!」
そこには、チャイナドレス姿のがっしりした男がキュートなポージングで立っていた。
「あれは?」
武木田が眉をひそめた。
「変態?」
「ときめく心は、無限大!キューティー ファイター!」
「間違いなく」
リリアンが言った。
「ヘンタイ、ね」
「うるせぇ!」
キューティー ファイターが怒鳴る。
「俺だって、もっと、仮面○イダー的なものがよかったんだ。でも、アニータが、これしかないって言うから仕方なく、やってんだよ!」
「ええっ!」
山田がアニータにきいた。
「そうなの?」
「まあ、ね」
アニータが、言った。
「あの子がどうしてもって言うから。普通は、魔法少女になるのは、中学年ぐらいの女の子だから、あたしも、そういうフォーマットしか持ってないのよぉ」
「そうなんだ」
「納得すんなよ!」
俺は、黒い獣と戦いながら、突っ込んだ。
しかし。
敵の数が多すぎる!
俺とキューティー ファイターだけじゃ、殺られてしまう!
「リリアン!」
俺は、叫んだ。
「この数を二人ってのは、無理!」
「うーん」
リリアンは、少し考えていたが、言った。
「仕方ないわね。アニータ!」
「なによ?」
二人は、ちょっとの間、ぼそぼそ話していたが、やがて、頷きあった。
「いいかしら?みんな、今回は、非常事態なの!」
リリアンが叫んだ。
「あんたたち、一緒に、戦ってもらうわよ!」
「えっ?」
武木田が、すごく嫌な予感がするような顔をした。
「戦うって?」
「みんな、左手を掲げて!」
アニータが、叫ぶ。
「こう?」
見上と岡部が、手をあげる。
渋々、武木田と山田も手を上げた。
キラリ。
4人の左手の薬指にリングが煌めいた。
全員が、光に包まれる。
「エンゲージ!」
彼等は、叫んだ。
「エターナル スウィーティー チェンジアップ!」
光があふれる。
そこには。
四人の魔法少女の姿があった。
「愛と癒しの戦士!キューティー ソルジャー!」
可愛いらしいピンクのミニスカドレス姿の見上が叫ぶ。
続いて、イエローのミニスカドレス姿の岡部が、キュートなポージングで言った。
「ロマンスの戦士!キューティー カヴァリエーレ!」
「知と真実の戦士!キューティー イェーガー!」
ブルーのミニスカドレス姿の山田が叫んだ。
最後に、一人だけ、すごく女装の男感が溢れる着物ドレス姿の武木田が言った。
「情熱の炎!キューティー クリーガー!」
「ヘンタイが」
俺は、叫んだ。
「増えてる!」
「うるせぇ!」
武木田が叫んで、手にしていた日本刀で黒い獣を一刀両断した。
武木田に襲いかかろうとした獣を山田が弓で射る。
「そうだよ!今は、非常事態なんだから」
「みんなで戦うしか、ないじゃん!」
岡部と見上が二人手をつないで言った。
「ラブリー ビッグ トルネード!」
二人を中心に、嵐がおき、黒い獣が吹き飛んだ。
「みんな、手をつないで!」
アニータが、叫ぶ。
俺たちは、手をつないで、輪を作った。
「スウィーティー プリンセス ライジング スター!」
俺たちは、七色の光に包まれた。
光と化した俺たちは、流れる星となって敵を殲滅した。
どこまでも、何もない空間が広がっていた。
そこに、残っているのは、俺たちと、アビゲイルだけだった。
「アビゲイル」
俺は、呼びかけた。
「俺たちと、一緒に行こう」
「プリンセス キューティー ウォリアー」
アビゲイルは、諦めた様に言った。
「私を助けるのなら、きっと、あなたは、助けたことを後悔することになる」
「それでも」
俺は、言った。
「俺は、君を助けたい」
アビゲイルの手を、俺は、握りしめた。
俺たちは、現実世界へと帰ってきた。
目覚めた俺は、俺の横にいるアビゲイルに気づいて微笑んだ。
「アビゲイル」
俺たちは、繋いだ手を握りしめた。
強く。
「諭吉」
アビゲイルが微笑んだ。
「ありがとう」
さよなら。
彼女の唇が、そう、動いたのを、俺は、見た。
そして。
アビゲイルは、朝の露のように、消滅してしまった。
誰かが俺を呼んでいる。
「伊崎君」
もう、少し。
眠らせて。
「諭吉」
俺は、嫌な予感がして飛び起きた。
リリアンの唇が俺の唇に迫っていて、俺は、慌てて避けた。
リリアンが、ちっと、舌打ちする。
「これが、本当に、諭吉の夢の中なのか?」
礼二郎が辺りを見回す。
そこは、バラの花園だった。
ああ。
彼女の秘密の花園が。
俺は、溜息をついた。
リリアンが言った。
「で?あんたのアビゲイルは、どこ?」
俺は、黙って立ちあがり、歩き出した。
バラの咲き乱れる小道を、俺たちは、歩いた。
しはらく行くと、小さな庵のようなものがあった。
「あそこに」
俺は、指差した。
「彼女が」
「諭吉」
扉が開いて、彼女が現れた。
長い艶やかな黒髪。
陶器の様な白い肌。
涙が出そうになるほど、美しい乙女。
俺のアビゲイル。
アビゲイルは、はじめ、俺以外の人間たちがいることに戸惑いをみせたが、すぐに、俺の元へと駆け寄ってきた。
「逃げて、諭吉」
「えっ?」
いきなりの彼女の言葉に、俺は、驚きを隠せなかったが、かまわず、彼女は、必死に訴えた。
「あの人が」
アビゲイルが言った。
「夢魔の王が、あなたたちを殺そうとしている」
「夢魔の王?」
リリアンが言った。
「ボスキャラ?」
「なんのことだか、わからないけど、彼を怒らせては、いけない」
アビゲイルは、俺の手を取って、何かをそっと握らせた。
「これを」
俺は、手を開いてみた。
古いアンティークの指輪だった。
「これが、あなたを守ってくれるわ」
アビゲイルは、儚く、微笑んだ。
「さよなら、諭吉」
寂しそうに笑うアビゲイルに、俺は、彼女が、永遠の別れを告げていることに気づいた。
俺は、指輪を握りしめた。
もう、彼女に会えない。
そんなのは、嫌だった。
俺は、アビゲイルの手を取って歩き出した。
「諭吉?」
「行こう、一緒に」
俺が言うと、彼女は、複雑な表情をした。
俺は、きいた。
「どうしたんだ?」
「ううん」
彼女は、首を振った。
「何でもないの」
「諭吉!」
リリアンの声が聞こえた。
他のみんなが、バラの茂みから顔を出して手を振る。
「伊崎!」
「諭吉!」
「何、やってるんだ?」
俺は、きいた。
「バラが!」
アニータが、蔓にからめとられながら叫ぶ。
「あたしたち、異物を襲ってるのよ!」
異物?
確かに。
ここは、俺とアビゲイルの園。
他の誰にも、入って欲しくはない。
リリアンたちの悲鳴があがった。
バラが。
バラが、意思を持つように、みんなを襲っていた。
「諭吉、やめなさい」
アビゲイルが優しく言った。
「みんなを襲っては、いけないわ」
「何、言って」
俺は、アビゲイルを見た。
俺は、こいつらを疎ましく思っているが、別に、異物とまでは、思っていない。
まして、傷つけたいては。
だが。
蕀に襲われている彼等の姿に、俺は、微かな胸の痛みを覚えた。
「どうすれば、いい?」
俺は、アビゲイルにきいた。
「奴等を助けるには、どうすれば、いいんだ?」
「諭吉」
アビゲイルが言った。
「変身、して。私があげた、その指輪で」
変身?
俺は、嫌な予感がした。
だが、俺は、アビゲイルの言う通りに、右手の薬指に指輪をはめて、叫んだ。
「エンゲージ!」
暖かな、柔らかい光の渦に、俺は、包まれた。
「エターナル キューティー チェンジアップ!」
バラの花弁が舞い、俺の体を覆っていく。
ふわり。
優しい風が吹いて、俺の体が包まれる。
気がつくと、俺は、裾の長いドレス姿になっていた。
白いシルクのドレス。
りぼんが揺れている。
俺は、祈る様に両手を組み合わせて言った。
「あふれでる乙女心は、無限大。プリンセス キューティー ウォリアー!」
俺は、片手をバラに向かってかざした。
「ラブリー プリンセス テンペスト!」
嵐がおき、みんなを捕らえるバラの茂みを吹き飛ばした。
傷だらけになった礼二郎が叫んだ。
「諭吉、その女から離れろ!」
「危ない!諭吉!」
アニータが、叫ぶ。
「その女、危険よ!」
「危険?」
アビゲイル、が?
俺は、みんなの方に歩みよった。
見上が俺を見上げて、言った。
「伊崎君、すごく綺麗だ」
何?
「まるで、お姫様みたい」
見上の言葉に、俺は、少し、正気に戻ってきた。
俺は、何をしてたんだ?
ふと、足元を見る。
フリフリのドレスが目に入る。
「何じゃ、こりゃあ!」
「あら」
リリアンが言った。
「すごくキレイよ、プリンセス」
プリンセス?
俺が、プリンセス?
「やり直しを」
俺は、叫んだ。
「やり直しを要求する!」
背後でクスクス笑う声が聞こえた。
振り向くとアビゲイルが笑っていた。
「アビゲイル?」
「諭吉、遊びの時間は、もう、終わりよ」
アビゲイルが冷ややかに言った。
「夢魔の王は、あなたの死を望んでいるわ」
「アビゲイル?」
「死になさい、諭吉」
アビゲイルの言葉とともに、バラの茂みが何体もの黒い獣へと変化していった。
俺たちは、無数の獣たちに囲まれていた。
「アビゲイル!」
「危ない!プリンセス キューティー ウォリアー!」
礼二郎が俺を庇って黒い獣に飲み込まれる。
「礼二郎!」
礼二郎を飲み込んだ黒い獣の体から光が漏れた。
その光は、はじめ、一本だけだったが、すぐに、何本もの光の束になり、やがて、黒い獣は、粉々に吹き飛んだ。
「しびしび!」
「あふれでるラブパワー!」
そこには、チャイナドレス姿のがっしりした男がキュートなポージングで立っていた。
「あれは?」
武木田が眉をひそめた。
「変態?」
「ときめく心は、無限大!キューティー ファイター!」
「間違いなく」
リリアンが言った。
「ヘンタイ、ね」
「うるせぇ!」
キューティー ファイターが怒鳴る。
「俺だって、もっと、仮面○イダー的なものがよかったんだ。でも、アニータが、これしかないって言うから仕方なく、やってんだよ!」
「ええっ!」
山田がアニータにきいた。
「そうなの?」
「まあ、ね」
アニータが、言った。
「あの子がどうしてもって言うから。普通は、魔法少女になるのは、中学年ぐらいの女の子だから、あたしも、そういうフォーマットしか持ってないのよぉ」
「そうなんだ」
「納得すんなよ!」
俺は、黒い獣と戦いながら、突っ込んだ。
しかし。
敵の数が多すぎる!
俺とキューティー ファイターだけじゃ、殺られてしまう!
「リリアン!」
俺は、叫んだ。
「この数を二人ってのは、無理!」
「うーん」
リリアンは、少し考えていたが、言った。
「仕方ないわね。アニータ!」
「なによ?」
二人は、ちょっとの間、ぼそぼそ話していたが、やがて、頷きあった。
「いいかしら?みんな、今回は、非常事態なの!」
リリアンが叫んだ。
「あんたたち、一緒に、戦ってもらうわよ!」
「えっ?」
武木田が、すごく嫌な予感がするような顔をした。
「戦うって?」
「みんな、左手を掲げて!」
アニータが、叫ぶ。
「こう?」
見上と岡部が、手をあげる。
渋々、武木田と山田も手を上げた。
キラリ。
4人の左手の薬指にリングが煌めいた。
全員が、光に包まれる。
「エンゲージ!」
彼等は、叫んだ。
「エターナル スウィーティー チェンジアップ!」
光があふれる。
そこには。
四人の魔法少女の姿があった。
「愛と癒しの戦士!キューティー ソルジャー!」
可愛いらしいピンクのミニスカドレス姿の見上が叫ぶ。
続いて、イエローのミニスカドレス姿の岡部が、キュートなポージングで言った。
「ロマンスの戦士!キューティー カヴァリエーレ!」
「知と真実の戦士!キューティー イェーガー!」
ブルーのミニスカドレス姿の山田が叫んだ。
最後に、一人だけ、すごく女装の男感が溢れる着物ドレス姿の武木田が言った。
「情熱の炎!キューティー クリーガー!」
「ヘンタイが」
俺は、叫んだ。
「増えてる!」
「うるせぇ!」
武木田が叫んで、手にしていた日本刀で黒い獣を一刀両断した。
武木田に襲いかかろうとした獣を山田が弓で射る。
「そうだよ!今は、非常事態なんだから」
「みんなで戦うしか、ないじゃん!」
岡部と見上が二人手をつないで言った。
「ラブリー ビッグ トルネード!」
二人を中心に、嵐がおき、黒い獣が吹き飛んだ。
「みんな、手をつないで!」
アニータが、叫ぶ。
俺たちは、手をつないで、輪を作った。
「スウィーティー プリンセス ライジング スター!」
俺たちは、七色の光に包まれた。
光と化した俺たちは、流れる星となって敵を殲滅した。
どこまでも、何もない空間が広がっていた。
そこに、残っているのは、俺たちと、アビゲイルだけだった。
「アビゲイル」
俺は、呼びかけた。
「俺たちと、一緒に行こう」
「プリンセス キューティー ウォリアー」
アビゲイルは、諦めた様に言った。
「私を助けるのなら、きっと、あなたは、助けたことを後悔することになる」
「それでも」
俺は、言った。
「俺は、君を助けたい」
アビゲイルの手を、俺は、握りしめた。
俺たちは、現実世界へと帰ってきた。
目覚めた俺は、俺の横にいるアビゲイルに気づいて微笑んだ。
「アビゲイル」
俺たちは、繋いだ手を握りしめた。
強く。
「諭吉」
アビゲイルが微笑んだ。
「ありがとう」
さよなら。
彼女の唇が、そう、動いたのを、俺は、見た。
そして。
アビゲイルは、朝の露のように、消滅してしまった。
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