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32 神々の愛し子
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俺は、レイモンドに頼んで絵の具を用意してもらった。
新しい物語を描くためだった。
物語の題名は、『白雪姫』
これは、母と子の物語だった。
別の男を愛しながら、他の男のもとに嫁ぎ、その子供を産んだ母は、自分の子供なのにその子を愛することができなかった。
母は、そんな自分を責め続けた。
子供もまた、母に愛されない自分を悲しんでいた。
そんな2人の前に現れた異国の王子。
愛されなかった子供は、初めて愛されることを知る。
嫁いでいく子供を見送って、1人、残された母は、涙を流す。
彼女は、決して、子供を愛せなかったのではなかったのだ。
彼女は、狂おしいほど子供を愛していた。
それを認められなかっただけ。
俺は、この物語をフローラさんのために描くことにした。
王城の方でレイモンドと政についての仕事をしているために、あまり離宮を訪れることができずにいたセレビスとテレビスは、暇を見つけては、俺に手紙を書いてくれていた。
『アマヤが絵を描くとは、知らなかった』
セレビスがある日の手紙の中に書いていた。
『きっと、お前の描く絵は、美しいのだろう』
「色が足りない」
俺は、二人が離宮を訪れるのを待って、言った。
「もっと、いっぱい色が欲しい。龍仙国の俺のアトリエになら、絵の具が揃っているんだが」
二人は、顔を見合わせて、そして、俺に向かって頷いた。
「任せろ、アマヤ」
二人は、すぐに手配してくれ、龍仙国へと使者を送ってくれた。
俺は、その使いの者が、レイモンドでなければいいと思っていた。
奴に任せていいことなんて何もないのだ。
二日後。
聖獣の姿になったカースの背に乗った月花が魔王城へと降臨した。
「アマヤ!」
二人は、そのまま、真っ直ぐに俺のいる離宮へとやって来た。
皆が金色に輝く巨大な猫に乗った少年に驚きを隠せなかった。
俺は、二人が離宮の中庭に降りてくるのを見て、すぐに、2人のもとへと走った。
「カース!月花も!なんで、ここに?」
二人が、俺に抱きついてきた。
「心配してたんだぞ!アマヤ。急に、いなくなったから」
「今ごろ、酷い目にあってるんじゃないかって、夜も眠れなかった」
「ああ」
俺は、二人にぎゅっと抱き締められて、なんだか、その感触が懐かしく思われていた。
俺は、2人の手から逃れると、言った。
「話せば、長くなるんだが、いろいろあってな」
「もしかして」
月下が俺の項の辺りをくんくん嗅いでいたと思うと、顔をあげてきいた。
「アマヤ、身籠ったのか?」
「あー、それは」
黙り込んだ俺に、月下は、がっくりと肩を落とした。
「本当に?絶対、アマヤを1番最初に孕ませるのは私だと思っていたのに」
「私だって!」
カースも項垂れていた。
「まさか、あの機械オタクの兄弟に先を越されるなんて」
「誰が、オタク、だ!」
聖獣が飛来したとの報告を受けて駆けつけたテレビスとセレビスが言って、カースの頭をこつん、と小突いた。
「本当に、お前は、いくつになってもしょうがない奴だな」
「いきなり、聖獣の姿で現れる奴があるか」
セレビスもカースに呆れたように言った。
「何事かと、皆が、驚くではないか」
「兄上たち」
カースがぶつくさ言った。
「酷いじゃないか。私たちの方が先に、アマヤを見つけたのに!」
「もともと、アマヤを呼び寄せたのは、私たちだ」
セレビスが俺を抱き寄せた。
「なんで、お前たちのもとに行ってしまったのか、こっちが聞きたい」
「おそらく、『名を持たぬ者』が我々の動きを感づいて、それが、あの双子に伝わったのか。それか、龍仙国の間者が魔界の動きを察知したのか。だが、あの双子には、礼を言わねばならんな」
テレビスが信じられないことを口にした。
「もし、いち早く、アマヤをあの二人が手元に置かなければ、アマヤは、『名を持たぬ者』によって消されていたかもしれない」
「そういえば、なぜ、お前たちがここに来れたんだ?」
セレビスは、カースたちにきいた。
「お前たちは、あの山を越えて、魔界へ入ることは許されない筈だ」
「神羅が」
カースが答えた。
「通してくれたんだよ」
「兄上が?」
テレビスが妙な表情を浮かべた。
「あの神羅兄が他の神を自分の神域へと入れたというのか?」
「ああ」
月花が頷いた。
「神羅兄上は、アマヤの願いを叶えるために私たちを通してくれたんだ」
「なるほど」
テレビスは、納得した表情で俺を見つめた。
「神羅兄も、今回は、神妃にご執心なのだな」
「当たり前だ!アマヤは、こんなにかわいいんだからな」
カースがセレビスから俺を奪って、抱き寄せた。
「このかわいいアマヤを孕ませるなんて、信じられない」
「離せ!」
俺は、ぐぃっとカースを押しやった。
「お前ら、人のことをごちゃごちゃとうるさいんだよ!」
「アマヤ、これ」
月花が背負っていた荷物を下ろして俺に差し出した。
「カイから預かってきた」
「わぁっ!サンキューな」
俺は、その荷を受け取った。
「助かったよ月花、カース、ありがとうな」
「アマヤ、また、作品を描いているんだな」
「ああ」
俺が認めると、月花が身を乗り出した。
「本当か?はやく、読ませてくれ!」
「私も!」
カースが俺の腰に手を回して、俺を引き寄せた。
「アマヤ、お前の新作を1番最初に読むのは、私だ!」
こいつら。
俺は、ぐぃぐぃせまってくるカースを横目に見ていた。
「お前の作品の1番のファンは、私なんだからな!」
何いってんだか。
俺は、カースの手から逃れようと抗っていたが、カースは、俺を離そうとはしなかった。
「当たり前だ!アマヤは、こんなにかわいい んだからな」
俺は、全力でもがいて、なんとか、カースの腕から逃れ、自分の作業用のテーブルへと荷物を運んだ。
それは、俺が普段使っている絵の具入れだった。
中を確かめながら、俺は、カースたちにきいた。
「あの二人は?」
「えっ?」
とぼけた顔をしている二人に、俺は、ちっと舌打ちした。
「だから」
俺は、そっぽを向いて聞いた。
「黒龍と、永良、だよ」
「ああ、あの二人、か」
カースと月花が面白くもなさげな感じで応えた。
「あの双子なら、樹理たちと一緒に、お前が留守の間、一生懸命、会社を守ってくれてたよ」
「マジで?」
「ああ」
カースが、心の底から嫌そうな顔をした。
「こつこつ、点数稼いで、本当に、嫌な奴らだ」
「そうか」
俺は、呟いた。
「あの二人が?」
てっきり、あの二人が1番最初にここへ、飛んでくるかと思っていたのに。
なんでだ?
俺は、ちょっと、もやもやした気持ちになっていた。
ホッとしたような、肩透かしをくったような、複雑な気持ちだった。
「アマヤにとっては、あの双子は、特別なのだな」
セレビスが感慨深げに言ったから、俺は、振り返って叫んだ。
「特別なんかじゃねぇし!お前ら、用がすんだら、さっさと出てけよ!うるさくって、集中できないだろ!」
俺は、部屋にたむろしている神々を追い出すと、溜め息をついた。
俺は、その冬の間、『白雪姫』の物語を描き続けた。
その間に、いろいろなことがあった。
結局、カースと月花は、魔王城にいついてしまった。
「アマヤが出産するのに立ち会わないわけにはいかない」
とかなんとか、ぬかしていた。
本当に、うざい連中だぜ。
俺は、毎日が戸惑いの連続だった。
だんだん、膨らんでいく腹。
動きにくくなるし、少しのことで息が切れてしまう。
変わってしまう自分の体に、俺は、戸惑いを隠せなかった。
「本当に、嫌になるわね」
フローラさんが大きなお腹を抱えて、うんざりした様子で言った。
「もう、はやく、産んでしまいたいわ」
そんな風に言えるなんて、女は、強いな、と俺は、感心していた。
俺は、大きくなっていく腹に、恐怖を感じていた。
だって、俺は、男だから。
自分からいったい、何が産まれてくるのか、不安で仕方がなかった。
臨月に近づくにつれて、俺は、不安で眠れない夜が増えていった。
テレビスとセレビスは、そんな俺の手を握って、一緒に眠ってくれた。
「大丈夫だ、アマヤ」
「私たちの子だ。きっと、いい子が生まれるぞ」
なんて、能天気な。
男って、きっと、いつもこんな感じなんだろうな。
俺は、そう思いながら、二人の温もりの中で、ゆっくりと眠りに落ちていった。
魔界に春が来る頃。
フローラさんと俺は、子供を産んだ。
フローラさんの方が、わずかに早かったが、ほぼ同じ頃に産まれた二人の赤ん坊は、それはそれは、対照的な子供たちだった。
金髪で青い目の天使のようなフローラさんの子と、親の俺が見ても、ちょっとあれな三白眼の、銀髪に菫色の瞳の、うちの子。
だけど。
変だな。
なんか、この可愛いげのない子供が、俺は、いとおしかった。
世界中に、何百、何千の赤ん坊が生まれているのに、その中で、この子は、特別だった。
「これは、私の子だ」
セレビスが宣言した。
「私が、アマヤの第一の夫、だ」
「もう、どうでもいいよ、そんなこと」
俺は、赤ん坊を抱いて、セレビスに言った。
「誰が、父親でも、これが俺の子であることには変わりないし」
「私たち、みんなの子だ」
テレビスが赤ん坊の額に祝福のキスをした。
「我々の愛し子、だ」
赤ん坊がくしゅん、とくしゃみをした。
本当に。
俺は、思ったのだ。
この子のためなら、なんだって出来るような気がする。
新しい物語を描くためだった。
物語の題名は、『白雪姫』
これは、母と子の物語だった。
別の男を愛しながら、他の男のもとに嫁ぎ、その子供を産んだ母は、自分の子供なのにその子を愛することができなかった。
母は、そんな自分を責め続けた。
子供もまた、母に愛されない自分を悲しんでいた。
そんな2人の前に現れた異国の王子。
愛されなかった子供は、初めて愛されることを知る。
嫁いでいく子供を見送って、1人、残された母は、涙を流す。
彼女は、決して、子供を愛せなかったのではなかったのだ。
彼女は、狂おしいほど子供を愛していた。
それを認められなかっただけ。
俺は、この物語をフローラさんのために描くことにした。
王城の方でレイモンドと政についての仕事をしているために、あまり離宮を訪れることができずにいたセレビスとテレビスは、暇を見つけては、俺に手紙を書いてくれていた。
『アマヤが絵を描くとは、知らなかった』
セレビスがある日の手紙の中に書いていた。
『きっと、お前の描く絵は、美しいのだろう』
「色が足りない」
俺は、二人が離宮を訪れるのを待って、言った。
「もっと、いっぱい色が欲しい。龍仙国の俺のアトリエになら、絵の具が揃っているんだが」
二人は、顔を見合わせて、そして、俺に向かって頷いた。
「任せろ、アマヤ」
二人は、すぐに手配してくれ、龍仙国へと使者を送ってくれた。
俺は、その使いの者が、レイモンドでなければいいと思っていた。
奴に任せていいことなんて何もないのだ。
二日後。
聖獣の姿になったカースの背に乗った月花が魔王城へと降臨した。
「アマヤ!」
二人は、そのまま、真っ直ぐに俺のいる離宮へとやって来た。
皆が金色に輝く巨大な猫に乗った少年に驚きを隠せなかった。
俺は、二人が離宮の中庭に降りてくるのを見て、すぐに、2人のもとへと走った。
「カース!月花も!なんで、ここに?」
二人が、俺に抱きついてきた。
「心配してたんだぞ!アマヤ。急に、いなくなったから」
「今ごろ、酷い目にあってるんじゃないかって、夜も眠れなかった」
「ああ」
俺は、二人にぎゅっと抱き締められて、なんだか、その感触が懐かしく思われていた。
俺は、2人の手から逃れると、言った。
「話せば、長くなるんだが、いろいろあってな」
「もしかして」
月下が俺の項の辺りをくんくん嗅いでいたと思うと、顔をあげてきいた。
「アマヤ、身籠ったのか?」
「あー、それは」
黙り込んだ俺に、月下は、がっくりと肩を落とした。
「本当に?絶対、アマヤを1番最初に孕ませるのは私だと思っていたのに」
「私だって!」
カースも項垂れていた。
「まさか、あの機械オタクの兄弟に先を越されるなんて」
「誰が、オタク、だ!」
聖獣が飛来したとの報告を受けて駆けつけたテレビスとセレビスが言って、カースの頭をこつん、と小突いた。
「本当に、お前は、いくつになってもしょうがない奴だな」
「いきなり、聖獣の姿で現れる奴があるか」
セレビスもカースに呆れたように言った。
「何事かと、皆が、驚くではないか」
「兄上たち」
カースがぶつくさ言った。
「酷いじゃないか。私たちの方が先に、アマヤを見つけたのに!」
「もともと、アマヤを呼び寄せたのは、私たちだ」
セレビスが俺を抱き寄せた。
「なんで、お前たちのもとに行ってしまったのか、こっちが聞きたい」
「おそらく、『名を持たぬ者』が我々の動きを感づいて、それが、あの双子に伝わったのか。それか、龍仙国の間者が魔界の動きを察知したのか。だが、あの双子には、礼を言わねばならんな」
テレビスが信じられないことを口にした。
「もし、いち早く、アマヤをあの二人が手元に置かなければ、アマヤは、『名を持たぬ者』によって消されていたかもしれない」
「そういえば、なぜ、お前たちがここに来れたんだ?」
セレビスは、カースたちにきいた。
「お前たちは、あの山を越えて、魔界へ入ることは許されない筈だ」
「神羅が」
カースが答えた。
「通してくれたんだよ」
「兄上が?」
テレビスが妙な表情を浮かべた。
「あの神羅兄が他の神を自分の神域へと入れたというのか?」
「ああ」
月花が頷いた。
「神羅兄上は、アマヤの願いを叶えるために私たちを通してくれたんだ」
「なるほど」
テレビスは、納得した表情で俺を見つめた。
「神羅兄も、今回は、神妃にご執心なのだな」
「当たり前だ!アマヤは、こんなにかわいいんだからな」
カースがセレビスから俺を奪って、抱き寄せた。
「このかわいいアマヤを孕ませるなんて、信じられない」
「離せ!」
俺は、ぐぃっとカースを押しやった。
「お前ら、人のことをごちゃごちゃとうるさいんだよ!」
「アマヤ、これ」
月花が背負っていた荷物を下ろして俺に差し出した。
「カイから預かってきた」
「わぁっ!サンキューな」
俺は、その荷を受け取った。
「助かったよ月花、カース、ありがとうな」
「アマヤ、また、作品を描いているんだな」
「ああ」
俺が認めると、月花が身を乗り出した。
「本当か?はやく、読ませてくれ!」
「私も!」
カースが俺の腰に手を回して、俺を引き寄せた。
「アマヤ、お前の新作を1番最初に読むのは、私だ!」
こいつら。
俺は、ぐぃぐぃせまってくるカースを横目に見ていた。
「お前の作品の1番のファンは、私なんだからな!」
何いってんだか。
俺は、カースの手から逃れようと抗っていたが、カースは、俺を離そうとはしなかった。
「当たり前だ!アマヤは、こんなにかわいい んだからな」
俺は、全力でもがいて、なんとか、カースの腕から逃れ、自分の作業用のテーブルへと荷物を運んだ。
それは、俺が普段使っている絵の具入れだった。
中を確かめながら、俺は、カースたちにきいた。
「あの二人は?」
「えっ?」
とぼけた顔をしている二人に、俺は、ちっと舌打ちした。
「だから」
俺は、そっぽを向いて聞いた。
「黒龍と、永良、だよ」
「ああ、あの二人、か」
カースと月花が面白くもなさげな感じで応えた。
「あの双子なら、樹理たちと一緒に、お前が留守の間、一生懸命、会社を守ってくれてたよ」
「マジで?」
「ああ」
カースが、心の底から嫌そうな顔をした。
「こつこつ、点数稼いで、本当に、嫌な奴らだ」
「そうか」
俺は、呟いた。
「あの二人が?」
てっきり、あの二人が1番最初にここへ、飛んでくるかと思っていたのに。
なんでだ?
俺は、ちょっと、もやもやした気持ちになっていた。
ホッとしたような、肩透かしをくったような、複雑な気持ちだった。
「アマヤにとっては、あの双子は、特別なのだな」
セレビスが感慨深げに言ったから、俺は、振り返って叫んだ。
「特別なんかじゃねぇし!お前ら、用がすんだら、さっさと出てけよ!うるさくって、集中できないだろ!」
俺は、部屋にたむろしている神々を追い出すと、溜め息をついた。
俺は、その冬の間、『白雪姫』の物語を描き続けた。
その間に、いろいろなことがあった。
結局、カースと月花は、魔王城にいついてしまった。
「アマヤが出産するのに立ち会わないわけにはいかない」
とかなんとか、ぬかしていた。
本当に、うざい連中だぜ。
俺は、毎日が戸惑いの連続だった。
だんだん、膨らんでいく腹。
動きにくくなるし、少しのことで息が切れてしまう。
変わってしまう自分の体に、俺は、戸惑いを隠せなかった。
「本当に、嫌になるわね」
フローラさんが大きなお腹を抱えて、うんざりした様子で言った。
「もう、はやく、産んでしまいたいわ」
そんな風に言えるなんて、女は、強いな、と俺は、感心していた。
俺は、大きくなっていく腹に、恐怖を感じていた。
だって、俺は、男だから。
自分からいったい、何が産まれてくるのか、不安で仕方がなかった。
臨月に近づくにつれて、俺は、不安で眠れない夜が増えていった。
テレビスとセレビスは、そんな俺の手を握って、一緒に眠ってくれた。
「大丈夫だ、アマヤ」
「私たちの子だ。きっと、いい子が生まれるぞ」
なんて、能天気な。
男って、きっと、いつもこんな感じなんだろうな。
俺は、そう思いながら、二人の温もりの中で、ゆっくりと眠りに落ちていった。
魔界に春が来る頃。
フローラさんと俺は、子供を産んだ。
フローラさんの方が、わずかに早かったが、ほぼ同じ頃に産まれた二人の赤ん坊は、それはそれは、対照的な子供たちだった。
金髪で青い目の天使のようなフローラさんの子と、親の俺が見ても、ちょっとあれな三白眼の、銀髪に菫色の瞳の、うちの子。
だけど。
変だな。
なんか、この可愛いげのない子供が、俺は、いとおしかった。
世界中に、何百、何千の赤ん坊が生まれているのに、その中で、この子は、特別だった。
「これは、私の子だ」
セレビスが宣言した。
「私が、アマヤの第一の夫、だ」
「もう、どうでもいいよ、そんなこと」
俺は、赤ん坊を抱いて、セレビスに言った。
「誰が、父親でも、これが俺の子であることには変わりないし」
「私たち、みんなの子だ」
テレビスが赤ん坊の額に祝福のキスをした。
「我々の愛し子、だ」
赤ん坊がくしゅん、とくしゃみをした。
本当に。
俺は、思ったのだ。
この子のためなら、なんだって出来るような気がする。
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