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3.
30.あちきの肉ー!!!!
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「……あ」
目が合ったのは生き物。
金色の瞳をした黒いトラ猫ちゃん。
ですが蝙蝠のような黒い翼がついております。
時折ふとした時に出くわす妖の類いかもしれません。
しかし今はそんなのどうでも良いこと……。
「あちきの肉ー!!!!
返すでありんすー!!!!」
__どうでも良うござんせんのは猫が齧りつくその肉でありんすよー!!!!
猫はビクッと高く跳ね、バサッと翼を羽ばたかせます。
「逃しんせん!!!!」
懐に手をやり延べ棒をサッと掴み、魔力を纏わせて翼を目がけて全力投擲。
「フギャッ」
猫らしい悲鳴を上げてお肉が地面にボトリ。
「んっふっふっふっ。
逃しんせんよ、子猫ちゃん」
すぐさまちょこっと齧られたお肉と近くに落ちた延べ棒に飛びついて拾いん……コホン、拾います。
「フーッ、フーッ」
それにしても随分と威嚇しまくりな子猫ちゃんですね。
毛が逆立ってトゲトゲで、今にも飛びかかって来そう。
牙もさることながら、何だか刺さりそうなほどに毛が硬そう。
あ、葉っぱが突き刺さっております。
それに翼……あら、手加減を間違えてしまいましたか。
魔力を物に纏わせて投げると的中率がアップするだけでなく、威力が少しばかり上がります。
もちろんこれにはかなりの鍛錬と繊細な魔力の調整力が必要なので誰彼とはできません。
色々器用なんですよ、私。
ですが今回ばかりはやりすぎましたね。
片翼から血が出ております。
これではこのように威嚇されても致し方ございません。
「けれど、人様の獲物を強奪する方が悪いのですよ?
このいたずらっ子。
め、ですよ」
「フーッ、フーッ」
「まあ言葉は通じませんよね」
「フガオッ、ガオッ」
話しかけたものの自嘲気味に呟けば、何だか言葉が通じたような?
「あら、わかるのかしら?
お肉欲しいですか?」
「ガウッ」
「そうですか。
では半分……」
「フーッ」
あら、何とも反抗的。
「では一欠片として差し上げません」
「ガ、ガウッ」
「元よりこれは私のお肉ですよ。
子猫ちゃんならもっと愛想を振りまきなさい」
プイッと踵を返してそのままスタスタと歩き、鉄鍋とお肉を魔法で洗って再び水を満たして火にかけます。
私もこれくらいの魔法は日常的に使えるんですよ。
鳥の脚を持って表面の産毛を焼いてから懐にしまっておいた小刀と葉っぱを取り出して葉っぱはまな板代わりに。
お肉をパパッと切り分けて食べられない内臓は火に焚べ、お肉は鍋に入れてしまいます。
「んふふ、鳥出汁を取ったら焼きましょう。
せめて塩か醤があれば……」
「ガウッ」
おやおや?
諦めてどこかに消えたかと思ったのですが、戻ってまいりましたね。
口に陶器でできた瓢箪を咥えておりますが……私の前に置くと、少し下がって腰を下ろしました。
毛は普通の柔らかそうなものに変わっているので、何かしらの仕組みがあるのでしょう。
「この離宮にあった物ですか?」
「ガウッ」
子猫ちゃんは空腹が過ぎるのでしょうか。
最初と比べて本当に従順です。
埃を被ったそれを手に取り軽く払れば、シャラシャラと乾いた音。
しかし中が少し固まっているかのような感覚もしますね。
グルリと観察すれば、古ぼけた底に玄武の焼き印。
ここの所有物で間違いないようです。
口の栓を抜いて臭いを嗅げば、これは唐辛子をブレンドした特有の香りでしょうか。
恐らく1度も栓を引き抜かなかったからこそ長年の保存にも劣化の進みが遅かったか、もしかしたら何者かが保存魔法を掛けて幾年月かは劣化そのものが起こらなかったのでしょう。
わざわざ玄武の焼き印を押したという事は、当時の水仙宮の夫人が口にする物だったかもしれません。
保存魔法は誰でもかけらものではありませんし、それがかけられた品物は高額商品です。
栓をし直して縦に振ってみれば、固まった粉がちゃんとバラバラになる手応え。
念の為少し手に出してから口に含みます。
塩と唐辛子、乾燥薬味を配合した万能調味料のようですが……。
「美味しい。
これは調合した者の腕の良さがうかがい知れますね。
私にくれるのですか?」
「ガウッ」
返事をすると、それとなく煮ているお肉を見ていますね。
目が合ったのは生き物。
金色の瞳をした黒いトラ猫ちゃん。
ですが蝙蝠のような黒い翼がついております。
時折ふとした時に出くわす妖の類いかもしれません。
しかし今はそんなのどうでも良いこと……。
「あちきの肉ー!!!!
返すでありんすー!!!!」
__どうでも良うござんせんのは猫が齧りつくその肉でありんすよー!!!!
猫はビクッと高く跳ね、バサッと翼を羽ばたかせます。
「逃しんせん!!!!」
懐に手をやり延べ棒をサッと掴み、魔力を纏わせて翼を目がけて全力投擲。
「フギャッ」
猫らしい悲鳴を上げてお肉が地面にボトリ。
「んっふっふっふっ。
逃しんせんよ、子猫ちゃん」
すぐさまちょこっと齧られたお肉と近くに落ちた延べ棒に飛びついて拾いん……コホン、拾います。
「フーッ、フーッ」
それにしても随分と威嚇しまくりな子猫ちゃんですね。
毛が逆立ってトゲトゲで、今にも飛びかかって来そう。
牙もさることながら、何だか刺さりそうなほどに毛が硬そう。
あ、葉っぱが突き刺さっております。
それに翼……あら、手加減を間違えてしまいましたか。
魔力を物に纏わせて投げると的中率がアップするだけでなく、威力が少しばかり上がります。
もちろんこれにはかなりの鍛錬と繊細な魔力の調整力が必要なので誰彼とはできません。
色々器用なんですよ、私。
ですが今回ばかりはやりすぎましたね。
片翼から血が出ております。
これではこのように威嚇されても致し方ございません。
「けれど、人様の獲物を強奪する方が悪いのですよ?
このいたずらっ子。
め、ですよ」
「フーッ、フーッ」
「まあ言葉は通じませんよね」
「フガオッ、ガオッ」
話しかけたものの自嘲気味に呟けば、何だか言葉が通じたような?
「あら、わかるのかしら?
お肉欲しいですか?」
「ガウッ」
「そうですか。
では半分……」
「フーッ」
あら、何とも反抗的。
「では一欠片として差し上げません」
「ガ、ガウッ」
「元よりこれは私のお肉ですよ。
子猫ちゃんならもっと愛想を振りまきなさい」
プイッと踵を返してそのままスタスタと歩き、鉄鍋とお肉を魔法で洗って再び水を満たして火にかけます。
私もこれくらいの魔法は日常的に使えるんですよ。
鳥の脚を持って表面の産毛を焼いてから懐にしまっておいた小刀と葉っぱを取り出して葉っぱはまな板代わりに。
お肉をパパッと切り分けて食べられない内臓は火に焚べ、お肉は鍋に入れてしまいます。
「んふふ、鳥出汁を取ったら焼きましょう。
せめて塩か醤があれば……」
「ガウッ」
おやおや?
諦めてどこかに消えたかと思ったのですが、戻ってまいりましたね。
口に陶器でできた瓢箪を咥えておりますが……私の前に置くと、少し下がって腰を下ろしました。
毛は普通の柔らかそうなものに変わっているので、何かしらの仕組みがあるのでしょう。
「この離宮にあった物ですか?」
「ガウッ」
子猫ちゃんは空腹が過ぎるのでしょうか。
最初と比べて本当に従順です。
埃を被ったそれを手に取り軽く払れば、シャラシャラと乾いた音。
しかし中が少し固まっているかのような感覚もしますね。
グルリと観察すれば、古ぼけた底に玄武の焼き印。
ここの所有物で間違いないようです。
口の栓を抜いて臭いを嗅げば、これは唐辛子をブレンドした特有の香りでしょうか。
恐らく1度も栓を引き抜かなかったからこそ長年の保存にも劣化の進みが遅かったか、もしかしたら何者かが保存魔法を掛けて幾年月かは劣化そのものが起こらなかったのでしょう。
わざわざ玄武の焼き印を押したという事は、当時の水仙宮の夫人が口にする物だったかもしれません。
保存魔法は誰でもかけらものではありませんし、それがかけられた品物は高額商品です。
栓をし直して縦に振ってみれば、固まった粉がちゃんとバラバラになる手応え。
念の為少し手に出してから口に含みます。
塩と唐辛子、乾燥薬味を配合した万能調味料のようですが……。
「美味しい。
これは調合した者の腕の良さがうかがい知れますね。
私にくれるのですか?」
「ガウッ」
返事をすると、それとなく煮ているお肉を見ていますね。
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