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477.醜悪な2人〜ジルコミアside
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「ちょっと!
私も一緒に閉じこめて、どういうつもりよ!」
女王の言葉を待っていたかのように、ここ、ザルハード国の側妃であるマーガレットが早口で吠える。
相変わらず耳に不快な、キンキンした声だ。
どうやら女王が魔法を解いて、声が届くようになってしまったらしい。
「ええ、もちろん」
マーガレットは無視し、女王の問いに答えたのは教皇。
「はあ?!
ふざけないでよ!
今まで教会の為に私がどれだけ力になってきたと思っているのよ!」
自分が消される事を仲間であるはずの教皇が同意した途端、ガシャンという音と共に鉄格子を両手で握り、更に煩く吠える。
場所が場所だけに、まるで見世物小屋の動物のようだ。
もっとも動物の方が、まだ可愛げがある。
「ふん、お前がしたのは誰でもできる事ばかりだ。
王子を生んだだけ。
イグドゥラシャ国の王太女となられたスティリカ王太女様、いや、ミシェリーヌ王女様に助言いただいたとはいえ、お前を貴族にしてやったのも、王妃の生家を牽制しつつ没落させたのも、誰がやったと思っている。
全ては聖フェルメシア教会の偉大なる教皇、この儂!
大した力も持たず、誰を敬うべきかも理解せずに賢く立ち回る事ができぬ小物が、調子に乗るでない!
置かれた状況すらも正確に把握でずに図々しく喚くでない!」
それは教皇も同じだろう。
むしろ私の女王の手腕があってこその成果を、我が物顔で自分の手柄にする教皇の方がもっと醜悪だな。
高圧的な口調はともかく、愉悦に歪ませる顔も含めて、何もかもが気に入らない。
「何ですって!!
エリザベートや護衛を誘き寄せてやったのは私よ!
大体、エリザベートが生んだ王子達にアンタが差し向けた暗殺者を手引きしてやったのも私じゃない!」
「ふん、結局殺せたのは第2王子のみであったのに、何を偉そうに。
お前が時と場所をもっと相応しいものに整えておけば、どちらも殺せた」
「闇の精霊に気に入られた第二王子を殺せただけで良いって言ったのはアンタじゃない!
闇の精霊王なんていう、教会が1番隠したがった建国の祖となる精霊の存在が明るみに出そうだからと、私の都合も聞かずに慌てて暗殺者を送りつけたのはアンタでしょう!
責任をなすりつけて、手柄をだけ一人占めしようとしないでちょうだい!」
同じ国の、立場が確実に上となるエリザベート王妃を指さして喚き散らす様も、口にしている話の内容も本当に醜悪だ。
しかし建国の祖である精霊は光の精霊王だったはず。
闇の精霊王もいたのか?
それとも闇の精霊王と光の精霊王がどこかで入れ代わった?
「ふん、どちらにしてもお前は結局中途半端だ。
幼い王子2人の内、片方しか消せていない。
今も魔力が強そうな者達の大半を逃し、魔力0であるグレインビル侯爵令嬢すらも側妃という肩書きがありながら呼び寄せられておらん」
食事会と称して呼び寄せようとしたのは、そこに転がっているエリザベート王妃とその護衛の2人だけではない。
黒豹属の護衛も当然についてくるとふんでいたし、何よりゼストゥウェル第1王子の他に、クレインビル侯爵令嬢も呼んでいた。
が、目論見は外れたようだ。
長年に渡り何かと煩わされた白銀の髪の少女が来なかった事には、少なからずほっとし……。
いや、安堵など覚えてどうする。
私の女王が、あの少女と会う事を望まれているというのに。
マーガレットを見やる。
元は平民だったらしく、聖女候補でしかなかった女。
聖女候補としては魔力があったものの、聖女になれるほどのものではなかったらしい。
ただ野心は強く、そこが権力欲の強い教皇とウマが合ったみたいだ。
恐らくこの気持ちの悪い男を、教皇としてその地位に就かせたのは私の女王。
その頃から女王にはお考えがあったに違いないが、教皇は女王にマーガレットを紹介し、あの特別な魔具を使って年齢を調節しながら駒として操作していった。
人属にしては長く生きているし、見た目も大きく変わらず若さを保っているから、そういう事だろう。
としても女王の持つ特別な魔具のお陰で若さを保ち、側妃にまでなれたというのに。
怒りが灯り、早く殺してしまいたくなる。
私の女王に耳に障るキンキンした声を聞かせるのも、不遜な言動も見逃せない。
腰に帯びた剣の柄に手をやれば、私と同じく無言で立っているベルヌがそっと柄にかけた手を握ってきた。
※※後書き※※
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
更新の間があいてしまいましたが、お待たせしました。
更新が止まっている間もお気に入り登録していただける方が増えていて、とても励みになりました。
まだ見直しきれていない所もあるので、毎日更新までは難しいかもしれませんが、ストーリーは進めていくつもりですのでお付き合いいただけると嬉しいです(*^^*)
そして別作品とはなりますが、昨日【稀代の悪女、三度目の人生で無才無能を楽しむ】2巻が無事発売となりました。
カドカワBOOKS様が書籍紹介ページを充実させて下さったので、よろしければご覧下さい。
テレビCM動画も作っていただけて、感無量です。
私も一緒に閉じこめて、どういうつもりよ!」
女王の言葉を待っていたかのように、ここ、ザルハード国の側妃であるマーガレットが早口で吠える。
相変わらず耳に不快な、キンキンした声だ。
どうやら女王が魔法を解いて、声が届くようになってしまったらしい。
「ええ、もちろん」
マーガレットは無視し、女王の問いに答えたのは教皇。
「はあ?!
ふざけないでよ!
今まで教会の為に私がどれだけ力になってきたと思っているのよ!」
自分が消される事を仲間であるはずの教皇が同意した途端、ガシャンという音と共に鉄格子を両手で握り、更に煩く吠える。
場所が場所だけに、まるで見世物小屋の動物のようだ。
もっとも動物の方が、まだ可愛げがある。
「ふん、お前がしたのは誰でもできる事ばかりだ。
王子を生んだだけ。
イグドゥラシャ国の王太女となられたスティリカ王太女様、いや、ミシェリーヌ王女様に助言いただいたとはいえ、お前を貴族にしてやったのも、王妃の生家を牽制しつつ没落させたのも、誰がやったと思っている。
全ては聖フェルメシア教会の偉大なる教皇、この儂!
大した力も持たず、誰を敬うべきかも理解せずに賢く立ち回る事ができぬ小物が、調子に乗るでない!
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それは教皇も同じだろう。
むしろ私の女王の手腕があってこその成果を、我が物顔で自分の手柄にする教皇の方がもっと醜悪だな。
高圧的な口調はともかく、愉悦に歪ませる顔も含めて、何もかもが気に入らない。
「何ですって!!
エリザベートや護衛を誘き寄せてやったのは私よ!
大体、エリザベートが生んだ王子達にアンタが差し向けた暗殺者を手引きしてやったのも私じゃない!」
「ふん、結局殺せたのは第2王子のみであったのに、何を偉そうに。
お前が時と場所をもっと相応しいものに整えておけば、どちらも殺せた」
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同じ国の、立場が確実に上となるエリザベート王妃を指さして喚き散らす様も、口にしている話の内容も本当に醜悪だ。
しかし建国の祖である精霊は光の精霊王だったはず。
闇の精霊王もいたのか?
それとも闇の精霊王と光の精霊王がどこかで入れ代わった?
「ふん、どちらにしてもお前は結局中途半端だ。
幼い王子2人の内、片方しか消せていない。
今も魔力が強そうな者達の大半を逃し、魔力0であるグレインビル侯爵令嬢すらも側妃という肩書きがありながら呼び寄せられておらん」
食事会と称して呼び寄せようとしたのは、そこに転がっているエリザベート王妃とその護衛の2人だけではない。
黒豹属の護衛も当然についてくるとふんでいたし、何よりゼストゥウェル第1王子の他に、クレインビル侯爵令嬢も呼んでいた。
が、目論見は外れたようだ。
長年に渡り何かと煩わされた白銀の髪の少女が来なかった事には、少なからずほっとし……。
いや、安堵など覚えてどうする。
私の女王が、あの少女と会う事を望まれているというのに。
マーガレットを見やる。
元は平民だったらしく、聖女候補でしかなかった女。
聖女候補としては魔力があったものの、聖女になれるほどのものではなかったらしい。
ただ野心は強く、そこが権力欲の強い教皇とウマが合ったみたいだ。
恐らくこの気持ちの悪い男を、教皇としてその地位に就かせたのは私の女王。
その頃から女王にはお考えがあったに違いないが、教皇は女王にマーガレットを紹介し、あの特別な魔具を使って年齢を調節しながら駒として操作していった。
人属にしては長く生きているし、見た目も大きく変わらず若さを保っているから、そういう事だろう。
としても女王の持つ特別な魔具のお陰で若さを保ち、側妃にまでなれたというのに。
怒りが灯り、早く殺してしまいたくなる。
私の女王に耳に障るキンキンした声を聞かせるのも、不遜な言動も見逃せない。
腰に帯びた剣の柄に手をやれば、私と同じく無言で立っているベルヌがそっと柄にかけた手を握ってきた。
※※後書き※※
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更新の間があいてしまいましたが、お待たせしました。
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