411 / 491
9
410.不躾な平民
しおりを挟む
「平民と申されたか?」
「違いまして?」
ヒタリと僕に凍えた目を向ける教皇に、微笑みながら問い返せば、ピリリとした空気が……。
「まだ言うか!」
「この罰当たり!」
ああ、本当にそろそろ鬱陶しいし、見苦しいね。
上位神官だと言い張るなら、もっと落ち着くべきではないかな?
もうこの2人は自称神官でいいか。
ベルヌが押さえてはいるけれど、ちょっとイラッてしちゃうよ。
「ベルヌ、立場をわきまえない、その煩い平民達を追い出しなさい。
平民達がもし、他国の貴族である私に魔法も含め、これ以上の暴言はもちろん、何かしらの攻撃を行うようなら、その兆候を見せた時点で斬り殺す許可を与えます。
もちろん護衛であるお前に抵抗する場合も、同義としてかまいません」
「「な?!」」
冷たく微笑んであげながら伝えれば、中年の男女は青くなって絶句した。
今更だ。
本来なら、僕に不躾な顔を見せた時点で退室させても良かったんだ。
そしてそれに気づいていた目の前の、社会科の教科書で見た宣教師に激似な教皇がそれをすべきだった。
逆にそれをせず、暴言を許し続けた時点で、責任者だという教皇諸共追い出しても問題無かったんだよ。
僕から退室?
する必要、ある?
気に入らなければ口先だけで相手を動かす。
それが本来貴族の身分社会だよ。
ベルヌは軽く頷くと、そのままつまみ出してから、僕の背後に戻る。
自称神官達は上司の顔をチラチラ見ながらも、さすがに抵抗はしなかった。
「何か話があって、私を呼び出したのでは?
気まぐれに応じてみたけれど、これ以上不快になる理由もないと、わかっているのかしら?」
「私はこのザルハード国の国教である、聖フェルメシア教の教皇ですぞ」
「それで?」
顔を顰めるのを隠さなくなった教皇に、しかし僕は涼しい顔をしておく。
「この国の貴族も含めた崇高な教会の信者達が、令嬢の暴挙を許しません」
「だから?」
「態度を改めよ!」
おや、突然カッと目を見開いて、威圧してきたね。
……ヤバい、記憶にある宣教師の絵がリンクして、笑いそうだ。
「改めるのは平民である、お前だと言っているのがまだわからない?」
けれど、何とかとてつもない努力をして、貴族らしい冷たい微笑みを向ける。
でもきっと努力の方向性がおかしい。
「な、に……」
自称神官達程ではないけれど、教皇はまったく意に介さない僕にたじろぐ。
第3王子やティキー、お世話係の神官を連れて来なくて、正解だ。
あの3人は自国の国教と教皇という存在に縛られているから、これからの会話に何かと邪魔になる。
「まず、お前が教皇であろうと、何の信者であろうと関係ない。
私はアドライド国という他国の、それも公爵と同等の家格であるグレインビル侯爵家の令嬢であり、この身分を保証するとザルハード国の王妃、側妃の連名で書を交わしている。
そしてそれを教皇にも教会にも伝えたと一筆書いているけれど、これに覚えはない?」
「それは……」
教皇……もうエセ教皇でいいか。
エセ教皇の強ばる表情を見て、覚えはあると確信する。
「無いなら無いと、はっきり言いなさい。
その時点でこれはザルハード国王家の失態。
当然、私と直接話した側妃、第3王子を1番に言及する事になるわ。
お前の発言1つで他国が介入する事になるけれど、その意味が正しく理解できている?
身分でいえば、私が王家より下にはなるけれど、他国の王族という立場の者が、その印章をもって保証したとなれば、話は違う。
更に言うならば、聖フェルメシア教はわが国の国教にあらず。
教皇という地位がこの国のいかなる地位であろうと、立場をもって礼を守っていたのならまだしも、先に礼を失したのはそちら。
突然連絡も無くお前達がこの教会に来たまでは、私と関わりない事。
とはいえ当然のように先ぶれも出さず、当日になって今から私にこの場へ来るよう指図した。
そこからして既にこちらを明らかに軽んじ、不躾を態度で示したと何故わからないの?
その時点で他国の高位貴族たる私が、お前達を不躾な平民だと判断するのは当然では?」
「……それは……いえ、聞いております。
しかし、ならば令嬢にも、それ相応の態度が必要では?
少なくともそれにより、コッヘル=ネルシス侯爵令息の待遇も変わりましょう」
一瞬しおらしくなったかと思えば、人質がいるからこその強気発言かな?
僕には無意味だって解っていないみたい。
「違いまして?」
ヒタリと僕に凍えた目を向ける教皇に、微笑みながら問い返せば、ピリリとした空気が……。
「まだ言うか!」
「この罰当たり!」
ああ、本当にそろそろ鬱陶しいし、見苦しいね。
上位神官だと言い張るなら、もっと落ち着くべきではないかな?
もうこの2人は自称神官でいいか。
ベルヌが押さえてはいるけれど、ちょっとイラッてしちゃうよ。
「ベルヌ、立場をわきまえない、その煩い平民達を追い出しなさい。
平民達がもし、他国の貴族である私に魔法も含め、これ以上の暴言はもちろん、何かしらの攻撃を行うようなら、その兆候を見せた時点で斬り殺す許可を与えます。
もちろん護衛であるお前に抵抗する場合も、同義としてかまいません」
「「な?!」」
冷たく微笑んであげながら伝えれば、中年の男女は青くなって絶句した。
今更だ。
本来なら、僕に不躾な顔を見せた時点で退室させても良かったんだ。
そしてそれに気づいていた目の前の、社会科の教科書で見た宣教師に激似な教皇がそれをすべきだった。
逆にそれをせず、暴言を許し続けた時点で、責任者だという教皇諸共追い出しても問題無かったんだよ。
僕から退室?
する必要、ある?
気に入らなければ口先だけで相手を動かす。
それが本来貴族の身分社会だよ。
ベルヌは軽く頷くと、そのままつまみ出してから、僕の背後に戻る。
自称神官達は上司の顔をチラチラ見ながらも、さすがに抵抗はしなかった。
「何か話があって、私を呼び出したのでは?
気まぐれに応じてみたけれど、これ以上不快になる理由もないと、わかっているのかしら?」
「私はこのザルハード国の国教である、聖フェルメシア教の教皇ですぞ」
「それで?」
顔を顰めるのを隠さなくなった教皇に、しかし僕は涼しい顔をしておく。
「この国の貴族も含めた崇高な教会の信者達が、令嬢の暴挙を許しません」
「だから?」
「態度を改めよ!」
おや、突然カッと目を見開いて、威圧してきたね。
……ヤバい、記憶にある宣教師の絵がリンクして、笑いそうだ。
「改めるのは平民である、お前だと言っているのがまだわからない?」
けれど、何とかとてつもない努力をして、貴族らしい冷たい微笑みを向ける。
でもきっと努力の方向性がおかしい。
「な、に……」
自称神官達程ではないけれど、教皇はまったく意に介さない僕にたじろぐ。
第3王子やティキー、お世話係の神官を連れて来なくて、正解だ。
あの3人は自国の国教と教皇という存在に縛られているから、これからの会話に何かと邪魔になる。
「まず、お前が教皇であろうと、何の信者であろうと関係ない。
私はアドライド国という他国の、それも公爵と同等の家格であるグレインビル侯爵家の令嬢であり、この身分を保証するとザルハード国の王妃、側妃の連名で書を交わしている。
そしてそれを教皇にも教会にも伝えたと一筆書いているけれど、これに覚えはない?」
「それは……」
教皇……もうエセ教皇でいいか。
エセ教皇の強ばる表情を見て、覚えはあると確信する。
「無いなら無いと、はっきり言いなさい。
その時点でこれはザルハード国王家の失態。
当然、私と直接話した側妃、第3王子を1番に言及する事になるわ。
お前の発言1つで他国が介入する事になるけれど、その意味が正しく理解できている?
身分でいえば、私が王家より下にはなるけれど、他国の王族という立場の者が、その印章をもって保証したとなれば、話は違う。
更に言うならば、聖フェルメシア教はわが国の国教にあらず。
教皇という地位がこの国のいかなる地位であろうと、立場をもって礼を守っていたのならまだしも、先に礼を失したのはそちら。
突然連絡も無くお前達がこの教会に来たまでは、私と関わりない事。
とはいえ当然のように先ぶれも出さず、当日になって今から私にこの場へ来るよう指図した。
そこからして既にこちらを明らかに軽んじ、不躾を態度で示したと何故わからないの?
その時点で他国の高位貴族たる私が、お前達を不躾な平民だと判断するのは当然では?」
「……それは……いえ、聞いております。
しかし、ならば令嬢にも、それ相応の態度が必要では?
少なくともそれにより、コッヘル=ネルシス侯爵令息の待遇も変わりましょう」
一瞬しおらしくなったかと思えば、人質がいるからこその強気発言かな?
僕には無意味だって解っていないみたい。
0
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる