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374.発想がサイコパス!

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「お前、何者?
せっかく私が時間をかけて魅縛していったのに、片方は解呪されかけていて、もう片方は完全に解呪だなんて」

 背中越しに明らかに不快感を出したアレが声をかけてくる。

 だけど僕の方も心底不快だからね。

「ただの狸じゃないわよね?」
「グルァ?!」

 ムササビなんだけど?!

 魔眼を閉じて振り向きざまにつっこむ。
もちろんアリー式ムササビ語で。

 久々に対峙したソレは、やはり思っていたよりいくらか若い。
きっとの力を使っている。

「そういえばグレインビルの使い魔に白い動物がいたって聞いたけど、それかしら?」

 いつ聞いても、改めて聞いても、不愉快!
動物らしく威嚇しそうだ。

 珊瑚色の髪に灰色の目をした、貴族令嬢としてはやや平凡な顔立ち。
どちらかと言えば可愛らしい印象を与える。

 彼女の周りにいくつか浮いてるドス黒い短刀は全く可愛らしくないけど。

 視界の端にあの短刀のせいで蒸発した苔の残骸が映る。
溶け損なったのがあったのか。

「どういう事かしら?
鑑定ができない?」

 そりゃそうだよ。
今の僕は絶対ガード君(改)と認識阻害機能のついた巾着で守られている。

 でもまともに対峙しているのに鑑定魔法が使えないと言う事は、その程度の魔法しか使えてないって事だよね。

 もしこれがどこぞの王太子や僕の家族達なら鑑定できるもの。

 なんて思いつつ、ソロリと横へ移動して動物らしさを装って苔をツンツンしてみる。

 あ、触るのは大丈夫みたい。

 今度は緑の部分もツンツンするけど、どうしてか光らない。
何で?

 コテリと首を傾げる。

「なに、本当にただの動物みたいね?
もしかして、使い魔じゃなくて新種の魔獣?
何でも解呪する特性でもあるのかしら?
ゲドグルに渡したら喜びそう」

 ん?!
ゲドグル?!
うわ、やっぱりコレってばあの3人と繋がってんじゃないの?!
あ、黒い短刀消してこっち来ようとしてる。

「ほら、怖くないわよー、解剖するのは私じゃないわよー」

 怖い怖い!
普通に言葉通じてるからね!

 アレは僕を怖がらせないようにか気持ちの悪い猫なで声で中腰姿勢でジリジリ寄ってきた。

 うん、気持ち悪い!
よし、今だ!!

 僕はそのまま踵を返して風の流れてくる方へとムササビダッシュする。

「ちょっと!
待ちなさい!」
「グルルルァァー!!」

 誰が待つかぁぁー!!

 なんて逃げていれば、背後に熱を感じて顔だけ振り向く。

「グルルルァァー!!」

 穴一杯のデッカイ火の玉が飛んできたー!!

 更にスピードを上げる。
あれ、生け捕りじゃなかったの?!

 そして直ぐに目の前には····嘘、行き止まり?!
慌てて急ブレーキ。
そして迫りくる火の玉。

 ボヒュン。

 あ、消えた。

 そうだった。
僕には絶対ガード君(改)が····。

 ピシ。

 ん?
何だろ、亀裂音がすぐ後ろからしたぞ?

 ····ハッ、もしかして?!

 リュック状態の巾着を横にずらして見てみれば、絶対ガード君(改)の赤い魔石に小さなヒビ。

 まずい、そろそろ寿命だ。
新しい絶対ガード君(改)を····ハッ。
姫様に婚約祝いにあげたんだった!!

「逃げられるくらいなら殺した方がいいと思ったんだけど、小さい狸だから消し炭になって蒸発したのかしら?」

 うん、相変わらずアレってば発想がサイコパス!
さすがマッドウィザードの知り合い!
あと蒸発はしない!
炭化と焼失ね!

 まずい、あの火の玉レベルの熱量だと後1回耐えられるかどうかだ。

 これが万事休すってやつ?!

 なんて思ってたら、フワ、と僕のお髭が風を感知する。

 どこから?

 見回してみれば、暗がりの中に薄ぼんやりと蛍光緑。

 壁に近づいてみれば、壁の隅に今の僕の体躯なら巾着を背負ってても一応通れるくらいの穴が空いてて、光はそこから漏れていた。

 問題は穴の位置。
獣人男性の腰くらいの高さだから、何とかなりそうではあるけど、ムササビ的にはちょっと高い。

 とか眺めてる場合じやないか。

 コツコツと近づいてくる足音に、残してきた2人は気になりながらも穴に向かって助走をつけてジャンプ。

 くっ、失敗。

 パッ。

 うわ、魔法で明かりをつけた!
まあまあ近い?!

 少し距離を取り、もう1度、今度は集中して助走をつけてジャンプ!
岩壁の凹凸に足を引っかけて····。

 届いた!

 そのまま体と尻尾を左右にフリフリしながら穴に入っていく。

「何だ、行き止まりだったのね。
じゃあもうあの狸は蒸発しちゃったか」

 ムササビだし、焼失だからね!

 もう一度つっこみを入れながら穴の中を前進していった。
恐らくもう追いかけては来ない。

 魔光苔の発光はもっと奥からだけど、徐々に光は弱まっている。

 そして視界が開けた僕はびっくり。

「苔の群生地····ああ!!」

 一段下に一面に広がる蛍光緑の幻想的な光。
暫し見とれていれば····遂に見つけた!

 思わず感嘆の声を上げたのは言うまでもない。



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現在の作品名を変更します。
【秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ】
改め、
【秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活~魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話】
ついでにあらすじも丸々変更しました。

よろしければこちらもご覧下さいm(_ _)m
【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す~だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】
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