309 / 491
8
308.お願いループと淑女ブーメラン
しおりを挟む
「アリー、俺のお願い聞いて欲しいな」
「んふふー、従兄様、可愛い。
もう1回!」
「アリー、俺のお願い聞いて」
「んふふー、従兄様、素敵。
もう1回!」
「····アリー、もうそろそろ····いや、えっと、お願い」
どうしたのかな?
突然僕の背後に視線をやってビクッと驚いちゃった?
「んふふー、従兄様、素晴らしいです。
もう1回!」
「アリー、お願い、もうそろそろ許して欲しいな」
「えへへー、従兄様、まだまだ。
もう1回!」
「ふぐっ、アリー、お願いだからもう許してぇ」
あらら、さすがにサンドイッチを頬張りつつ1時間はやり過ぎたかな。
何だか従兄様の妹で現在行方不明中という名の、僕が出資する研究所職員になったような気がしないでもない従姉様がいた時の、あの別荘でのやり取りを彷彿とさせるね。
あの頃より会う回数もずっと増えて、お互い気心も知れたし口調も砕けていってるんだ。
目尻の涙は開始30分の時と違って本物の煌めきを感じるところもあの時のようだ。
やっぱりこの角度の従兄様ってば、義母様に似てて可愛らしいんだよね。
僕は何時間でもニマニマできるけど、晴天とはいえグレインビルの初春は間際は体が冷える。
それに少し眠くなってきた。
そろそろ中でお話聞こうかな?
「それで、ガウディードは何をしに来たんだい?」
なんて思っていたら、背後からの急なお声!
僕が声の主を間違うはずがない!
凛々しい僕のダンディパパだ!
「父様!」
「お、叔父上」
立ち上がってくるりと振り向くと目の前に背の高い義父様。
素敵か!!
従兄様の上ずったお声は無視!
「今日は帰るの早いね!
お帰りなさい」
そのまま義父様に抱きつく。
するとすぐに暖かな風が僕を包んだ。
義父様の魔法だね。
暖かさに気が緩むとまた眠くなる。
「ああ、ただいま。
まだ外は冷える。
晴れた昼間とはいえあまり長く外にいるのは感心しないな。
中に入ろう」
「はーい!」
そう言って義父様は僕を縦に抱き上げてくれる。
ここに帰って来た1年前より背がいくらか伸びて少しは重くなった体重だけど、家族全員がこうやって軽々持ち上げるんだ。
僕の家族は皆逞しいね。
でも成人した、もうじき15才がこれは恥ずかしいって思うべきなのかな?
あっちの世界でも中学2年生くらいだよね?
でも今みたいに家族に抱っこされてぎゅってされたり、背中ぽんぽんされるの好きなんだ。
あれ?
いつの間にかニーアも来ていた。
僕のピクニックセットを片づけようとしているなんて、さすが僕のできる専属侍女。
仕事が早い。
義父様はそのままスタスタと邸に入って行く。
「待って下さい、叔父上。
俺を忘れてる~」
なんて言いながら従兄様もちゃっかり後に続く。
あ、義父様越しに僕を見上げるその角度、義母様に似てて良い!
好き!
思わずきらきらした視線を送っちゃう!
「ガウディード」
ん?
どうしたの、義父様?
立ち止まって振り返ってからの、ダンディボイスが心なしか低いね。
「いえ、これは不可抗力····」
どうしてか従兄様がビクッと震えて困り顔になってしまった。
まあ従兄様がよくする行動だから、気にしなくていいか。
「父様」
「どうかしたかい、私の可愛いアリー?」
「降ろして?
厨房行きたい。
従兄様はいつもの客間で待ってて。
父様はこのまま執務室行くのかな?
それともご一緒する?
従兄様と何かお約束してた?」
少し体を離して切れ長の凛々しいお顔を腕にお尻を乗せてるせいか少し高くなった位置からのぞく。
「約束はしていないけど、私も一緒しようかな。
ガウディード、いくら従兄妹でも先ぶれもなく突然来て私の可愛いアリーに個人的なお願いをしたいなら、私に前もって声をかけるべきだろう?
私の可愛いアリーはもう立派な淑女だよ」
ふぐっ。
淑女がお子ちゃま風抱っこされて、にこにこしてたんだけど。
義父様、地味に僕にブーメランが····。
「はい、もちろんそのつもりでしたが、叔父上がいらっしゃらなかったので。
それに可愛い従妹に一言デビュタントを、成人の儀を迎えたお祝いを直接伝えたかったものですから」
····嘘だ!
顔合わせた途端に僕のジュースをカツアゲしようとしたくせに!
「ほう。
その割りには私の可愛いアリーの果実水を強請っていたと聞いたんだけどね?」
「だ、誰がそんな········あははは」
僕達のいた場所的に、大方庭師のお爺さんだろうな。
従兄様はごまかし笑いして僕に助けを求めるような目を向けるけど、知らないよ。
「!!」
プイッとそっぽを向くとショックを受けたようなお顔になる。
でもやっぱりちょっと可哀想?
「じゃあ、父様にもできたてとっておきの果実水ご用意するから、待っててね」
「慌てなくていいから、怪我はしないように気をつけるんだよ」
「もちろん。
ニーア、行こう」
そう言って義父様の気をそらしてあげれば、従兄様のお顔は輝いてる。
相変わらずの顔芸っぷりだけど、そのお顔も嫌いじゃない。
義母様には似てないけど。
降ろしてもらった僕は厨房へと向かう。
義父様に僕の新作ジュースをお披露目すると思うと、くふふ、と淑女らしからぬ笑いが漏れちゃう。
何か言いたそうなニーアも僕がピクニックに持って行ってたグラスやお皿を持ってついてくるよ。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
新章始まりました。
本日2話目です。
お休み中もお気に入り登録していた方もいて、大変喜んでおりますm(_ _)m
明日までは午前と午後に1日2話更新しようと思っています。
お休み中も応援いただいたささやかなお礼の気持ちです。
よろしければご覧下さい。
同時進行中の下の作品もよろしければ。
1話1600文字程度のお話なので、サラッと読める仕様です。
【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す~だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】
「んふふー、従兄様、可愛い。
もう1回!」
「アリー、俺のお願い聞いて」
「んふふー、従兄様、素敵。
もう1回!」
「····アリー、もうそろそろ····いや、えっと、お願い」
どうしたのかな?
突然僕の背後に視線をやってビクッと驚いちゃった?
「んふふー、従兄様、素晴らしいです。
もう1回!」
「アリー、お願い、もうそろそろ許して欲しいな」
「えへへー、従兄様、まだまだ。
もう1回!」
「ふぐっ、アリー、お願いだからもう許してぇ」
あらら、さすがにサンドイッチを頬張りつつ1時間はやり過ぎたかな。
何だか従兄様の妹で現在行方不明中という名の、僕が出資する研究所職員になったような気がしないでもない従姉様がいた時の、あの別荘でのやり取りを彷彿とさせるね。
あの頃より会う回数もずっと増えて、お互い気心も知れたし口調も砕けていってるんだ。
目尻の涙は開始30分の時と違って本物の煌めきを感じるところもあの時のようだ。
やっぱりこの角度の従兄様ってば、義母様に似てて可愛らしいんだよね。
僕は何時間でもニマニマできるけど、晴天とはいえグレインビルの初春は間際は体が冷える。
それに少し眠くなってきた。
そろそろ中でお話聞こうかな?
「それで、ガウディードは何をしに来たんだい?」
なんて思っていたら、背後からの急なお声!
僕が声の主を間違うはずがない!
凛々しい僕のダンディパパだ!
「父様!」
「お、叔父上」
立ち上がってくるりと振り向くと目の前に背の高い義父様。
素敵か!!
従兄様の上ずったお声は無視!
「今日は帰るの早いね!
お帰りなさい」
そのまま義父様に抱きつく。
するとすぐに暖かな風が僕を包んだ。
義父様の魔法だね。
暖かさに気が緩むとまた眠くなる。
「ああ、ただいま。
まだ外は冷える。
晴れた昼間とはいえあまり長く外にいるのは感心しないな。
中に入ろう」
「はーい!」
そう言って義父様は僕を縦に抱き上げてくれる。
ここに帰って来た1年前より背がいくらか伸びて少しは重くなった体重だけど、家族全員がこうやって軽々持ち上げるんだ。
僕の家族は皆逞しいね。
でも成人した、もうじき15才がこれは恥ずかしいって思うべきなのかな?
あっちの世界でも中学2年生くらいだよね?
でも今みたいに家族に抱っこされてぎゅってされたり、背中ぽんぽんされるの好きなんだ。
あれ?
いつの間にかニーアも来ていた。
僕のピクニックセットを片づけようとしているなんて、さすが僕のできる専属侍女。
仕事が早い。
義父様はそのままスタスタと邸に入って行く。
「待って下さい、叔父上。
俺を忘れてる~」
なんて言いながら従兄様もちゃっかり後に続く。
あ、義父様越しに僕を見上げるその角度、義母様に似てて良い!
好き!
思わずきらきらした視線を送っちゃう!
「ガウディード」
ん?
どうしたの、義父様?
立ち止まって振り返ってからの、ダンディボイスが心なしか低いね。
「いえ、これは不可抗力····」
どうしてか従兄様がビクッと震えて困り顔になってしまった。
まあ従兄様がよくする行動だから、気にしなくていいか。
「父様」
「どうかしたかい、私の可愛いアリー?」
「降ろして?
厨房行きたい。
従兄様はいつもの客間で待ってて。
父様はこのまま執務室行くのかな?
それともご一緒する?
従兄様と何かお約束してた?」
少し体を離して切れ長の凛々しいお顔を腕にお尻を乗せてるせいか少し高くなった位置からのぞく。
「約束はしていないけど、私も一緒しようかな。
ガウディード、いくら従兄妹でも先ぶれもなく突然来て私の可愛いアリーに個人的なお願いをしたいなら、私に前もって声をかけるべきだろう?
私の可愛いアリーはもう立派な淑女だよ」
ふぐっ。
淑女がお子ちゃま風抱っこされて、にこにこしてたんだけど。
義父様、地味に僕にブーメランが····。
「はい、もちろんそのつもりでしたが、叔父上がいらっしゃらなかったので。
それに可愛い従妹に一言デビュタントを、成人の儀を迎えたお祝いを直接伝えたかったものですから」
····嘘だ!
顔合わせた途端に僕のジュースをカツアゲしようとしたくせに!
「ほう。
その割りには私の可愛いアリーの果実水を強請っていたと聞いたんだけどね?」
「だ、誰がそんな········あははは」
僕達のいた場所的に、大方庭師のお爺さんだろうな。
従兄様はごまかし笑いして僕に助けを求めるような目を向けるけど、知らないよ。
「!!」
プイッとそっぽを向くとショックを受けたようなお顔になる。
でもやっぱりちょっと可哀想?
「じゃあ、父様にもできたてとっておきの果実水ご用意するから、待っててね」
「慌てなくていいから、怪我はしないように気をつけるんだよ」
「もちろん。
ニーア、行こう」
そう言って義父様の気をそらしてあげれば、従兄様のお顔は輝いてる。
相変わらずの顔芸っぷりだけど、そのお顔も嫌いじゃない。
義母様には似てないけど。
降ろしてもらった僕は厨房へと向かう。
義父様に僕の新作ジュースをお披露目すると思うと、くふふ、と淑女らしからぬ笑いが漏れちゃう。
何か言いたそうなニーアも僕がピクニックに持って行ってたグラスやお皿を持ってついてくるよ。
※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
新章始まりました。
本日2話目です。
お休み中もお気に入り登録していた方もいて、大変喜んでおりますm(_ _)m
明日までは午前と午後に1日2話更新しようと思っています。
お休み中も応援いただいたささやかなお礼の気持ちです。
よろしければご覧下さい。
同時進行中の下の作品もよろしければ。
1話1600文字程度のお話なので、サラッと読める仕様です。
【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す~だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】
0
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる