181 / 491
6
180.狼さんのブラッシング2
しおりを挟む
「シル様、ブラシの力加減はいかがでしょう?」
「あ、ああ。
ちょうど良くて気持ちいいが、視線が····いや、気にしないでくれ」
どこか戸惑った様子のシル様もいいね。
誰かにブラッシングしてもらうって、あんまり無い経験なのかな?
僕もシル様のブラッシングは初めてだしね。
「気持ちいい、だと?」
「バルトス、変な意味じゃないんだから、むしろそこは反応しない方がいいんじゃないかな」
「レイ、シルを射殺すような目で見るのは止めてくれ」
「何言ってるのかな、ルド?
僕はただ羨ましそうに見てるだけだよ?」
ちらりと僕の頭をなでなでしてる義兄様を見れば、にこりと微笑む。
天使は義兄様の方じゃないかな?
凛々しさと可愛いらしさが混合されたスペシャルスマイルだね。
僕も思わずにこっとして、なでなでしてくれてる義兄様の手に頭をすりすりしちゃうよ。
「くっ。
俺にも天使のすりすりが必要だ」
「ふふふ、バルトス義兄様も可愛らしいです」
(か、可愛らしい····)
おくつろぎスポットの闇の精霊さんがひきつったお顔でこちらを見る。
なぜ?
····そっか!
手の平サイズの闇の精霊さんももちろん可愛いよ!
優劣なんてつけてないから安心して!
なんて想いを込めてこくこくと頷いてみせる。
義兄様達も援護射撃とばかりにそっちを見たけど、ビクッとさせてしまったみたい。
義兄様達の可愛いが過ぎたのかな?
そうして伸ばされたもう1つの手にも、もちろんすりすりだ。
パチン。
「おい····」
「今はこの形の素晴らしく丸い頭は僕のですよ、兄上」
「ちっ」
かなり小さい静電気がバルトス義兄様の手をはじいた。
義兄様達ってば僕の頭のマウント合戦するくらい髪の手触りを気に入ってくれてるんだね。
「今のって····」
「相変わらず魔力コントロールは目を見張るものがあるな」
お、ちゃんと気づいた?
驚くゼスト様に感心するルド様。
どでかく魔力を消費するような魔法を使える人って、普段から抱える魔力量が多いから逆にさっきみたいな小さな魔法を使うのが難しくなりがちなんだ。
今のは一歩間違えば僕の頭に静電気が発生して髪が逆立ちかねないし、下手すると小さい落雷に僕の頭が焦がされちゃう。
もちろん僕の髪には何の影響もないし、レイヤード義兄様がそんなことするはずないよ。
本当に小さな静電気をピンポイントで発生させた高難度の魔法だって事が言いたいだけ。
多分静電気の威力も去年のあの浜辺の時より落としてるし、緻密さと正確さが上がってる。
こういうのを難なくこなせるレイヤード義兄様ってかなり腕利き冒険者でもあり、魔術師でもあるんだよ。
使い所は間違ってるけど、お茶目な義兄様だから仕方ないよね。
バルトス義兄様もある意味不服そうだけど、ある意味弟の成長に喜んでる····多分。
歯をギリギリしてるけど。
「君達兄弟も相変わらずだね。
それより師匠達に報告しなくていいのかな?」
多分色々な意味で呆気に取られるゼスト様がギディ様に報告を促されると、ハッとした様子で続きを話し始めた。
それにしてもこんな事で呆気に取られるなんて、まだまだだよね。
もちろん僕はそれを聞きながら今度はふわふわの魅力がアップした銀灰のふさふさなお尻尾様に敬意をもってもふもふしていく。
く~、たまんない!
「祭りの後、師匠達と別れてからすぐに私は城へ向かった。
ギディアス殿に報告書の写しと映像を借りてすぐにザルハード国へ一時帰国し、まずは国王陛下と宰相に話をした。
翌日にはネルシス侯爵、ハンソン伯爵を呼び出し、留学してからのこれまでの件と共に祭りでの一件を報告した。
その上で国家間の問題となりつつある事を話して先に動くよう進言したのだ」
なるほど?
確かにこちらに落ち度がある場合、先手必勝で交渉するのは悪くない手だね。
相手が我に返って何かしら上乗せ請求する前に動けば、少ない損失で誠意を示した事にも繋がるしね。
さてさて、そろそろシル様のお尻尾様とお別れしようかな。
名残惜しいから最後に念入りにブラッシングしとこう。
「既に友好国であるこの国で何人もの通行人があの3人の暴挙を目撃している。
しかもアボット商会は獣人が多い国である事からザルハード国とは同盟を結びながらも、友好国とまでは言えない程度の交易しかできていないブランドゥール国を拠点にした西の諸国を代表する商会だ。
他国との外交や力関係を考えても当然だが揉み消しだけはさせるわけにはいかなかった」
て事はやっぱり最初は揉み消そうとしたのかな?
だとしたらバカだよね。
西の諸国は外交が上手くいくようになって資金的に潤ってるだけじゃないんだよ?
西と南の諸国は各国同士で友好国となってて繋がりが元々強固なんだ。
それもあるのか獣人さんの人口も多いし、アボット商会率いる西の商会のいくつかは今や北と東の諸国とも取り引きをしてる。
あまりに大々的に獣人差別するのは世界の約半分の国を敵に回しかねなくなるんだよ。
それに当然だけどこの国もそこの差別には賛同しないだろうから、これ以上やり過ぎれば友好国を解消しかねない事態にだってなるんだ。
「まず内々にだが翌日にはアボット商会からも営業妨害と他国での差別発言、並びに懇意にするグレインビル侯爵家を公衆の面前で罵倒した事への抗議文が送られてきた。
ちょうど話し合っていた時だ。
何も音沙汰がないようなら正式な抗議をブランドゥール国を介して送るとも書かれてあった。
それに加えてあの映像もあったからな。
ザルハード国王子と婚約者、側近候補の見苦しいまでの獣人や孤児への差別的言動はザルハード国と言えども品位に欠けると国王陛下も判断された」
そっかあ。
何があったのか具体的には聞いてなかったけど、ウィンスさんも抗議文送ってたんだね。
やらかしたのがザルハード国の留学生って立場だったから国の外交官か宰相宛にわざと直接送ったんだろうな。
ふふふ、狙いの物は手に入ったのかな?
なんて思いつつ、お話しの邪魔をしないようにアン様に選手交代をお願いする眼差しを向ける。
あ、気づいてくれた。
シル様も僕達のやり取りに気づいて僕の方を振り返って頭をぽんぽんしてくれた。
僕の頭大人気だね。
もちろんその間はレイヤード義兄様の手を握って静電気のパチパチ攻撃しないようにしておいたよ。
バルトス義兄様が僕の腰に回してる腕もぎゅっとしておこうっと。
「あ、ああ。
ちょうど良くて気持ちいいが、視線が····いや、気にしないでくれ」
どこか戸惑った様子のシル様もいいね。
誰かにブラッシングしてもらうって、あんまり無い経験なのかな?
僕もシル様のブラッシングは初めてだしね。
「気持ちいい、だと?」
「バルトス、変な意味じゃないんだから、むしろそこは反応しない方がいいんじゃないかな」
「レイ、シルを射殺すような目で見るのは止めてくれ」
「何言ってるのかな、ルド?
僕はただ羨ましそうに見てるだけだよ?」
ちらりと僕の頭をなでなでしてる義兄様を見れば、にこりと微笑む。
天使は義兄様の方じゃないかな?
凛々しさと可愛いらしさが混合されたスペシャルスマイルだね。
僕も思わずにこっとして、なでなでしてくれてる義兄様の手に頭をすりすりしちゃうよ。
「くっ。
俺にも天使のすりすりが必要だ」
「ふふふ、バルトス義兄様も可愛らしいです」
(か、可愛らしい····)
おくつろぎスポットの闇の精霊さんがひきつったお顔でこちらを見る。
なぜ?
····そっか!
手の平サイズの闇の精霊さんももちろん可愛いよ!
優劣なんてつけてないから安心して!
なんて想いを込めてこくこくと頷いてみせる。
義兄様達も援護射撃とばかりにそっちを見たけど、ビクッとさせてしまったみたい。
義兄様達の可愛いが過ぎたのかな?
そうして伸ばされたもう1つの手にも、もちろんすりすりだ。
パチン。
「おい····」
「今はこの形の素晴らしく丸い頭は僕のですよ、兄上」
「ちっ」
かなり小さい静電気がバルトス義兄様の手をはじいた。
義兄様達ってば僕の頭のマウント合戦するくらい髪の手触りを気に入ってくれてるんだね。
「今のって····」
「相変わらず魔力コントロールは目を見張るものがあるな」
お、ちゃんと気づいた?
驚くゼスト様に感心するルド様。
どでかく魔力を消費するような魔法を使える人って、普段から抱える魔力量が多いから逆にさっきみたいな小さな魔法を使うのが難しくなりがちなんだ。
今のは一歩間違えば僕の頭に静電気が発生して髪が逆立ちかねないし、下手すると小さい落雷に僕の頭が焦がされちゃう。
もちろん僕の髪には何の影響もないし、レイヤード義兄様がそんなことするはずないよ。
本当に小さな静電気をピンポイントで発生させた高難度の魔法だって事が言いたいだけ。
多分静電気の威力も去年のあの浜辺の時より落としてるし、緻密さと正確さが上がってる。
こういうのを難なくこなせるレイヤード義兄様ってかなり腕利き冒険者でもあり、魔術師でもあるんだよ。
使い所は間違ってるけど、お茶目な義兄様だから仕方ないよね。
バルトス義兄様もある意味不服そうだけど、ある意味弟の成長に喜んでる····多分。
歯をギリギリしてるけど。
「君達兄弟も相変わらずだね。
それより師匠達に報告しなくていいのかな?」
多分色々な意味で呆気に取られるゼスト様がギディ様に報告を促されると、ハッとした様子で続きを話し始めた。
それにしてもこんな事で呆気に取られるなんて、まだまだだよね。
もちろん僕はそれを聞きながら今度はふわふわの魅力がアップした銀灰のふさふさなお尻尾様に敬意をもってもふもふしていく。
く~、たまんない!
「祭りの後、師匠達と別れてからすぐに私は城へ向かった。
ギディアス殿に報告書の写しと映像を借りてすぐにザルハード国へ一時帰国し、まずは国王陛下と宰相に話をした。
翌日にはネルシス侯爵、ハンソン伯爵を呼び出し、留学してからのこれまでの件と共に祭りでの一件を報告した。
その上で国家間の問題となりつつある事を話して先に動くよう進言したのだ」
なるほど?
確かにこちらに落ち度がある場合、先手必勝で交渉するのは悪くない手だね。
相手が我に返って何かしら上乗せ請求する前に動けば、少ない損失で誠意を示した事にも繋がるしね。
さてさて、そろそろシル様のお尻尾様とお別れしようかな。
名残惜しいから最後に念入りにブラッシングしとこう。
「既に友好国であるこの国で何人もの通行人があの3人の暴挙を目撃している。
しかもアボット商会は獣人が多い国である事からザルハード国とは同盟を結びながらも、友好国とまでは言えない程度の交易しかできていないブランドゥール国を拠点にした西の諸国を代表する商会だ。
他国との外交や力関係を考えても当然だが揉み消しだけはさせるわけにはいかなかった」
て事はやっぱり最初は揉み消そうとしたのかな?
だとしたらバカだよね。
西の諸国は外交が上手くいくようになって資金的に潤ってるだけじゃないんだよ?
西と南の諸国は各国同士で友好国となってて繋がりが元々強固なんだ。
それもあるのか獣人さんの人口も多いし、アボット商会率いる西の商会のいくつかは今や北と東の諸国とも取り引きをしてる。
あまりに大々的に獣人差別するのは世界の約半分の国を敵に回しかねなくなるんだよ。
それに当然だけどこの国もそこの差別には賛同しないだろうから、これ以上やり過ぎれば友好国を解消しかねない事態にだってなるんだ。
「まず内々にだが翌日にはアボット商会からも営業妨害と他国での差別発言、並びに懇意にするグレインビル侯爵家を公衆の面前で罵倒した事への抗議文が送られてきた。
ちょうど話し合っていた時だ。
何も音沙汰がないようなら正式な抗議をブランドゥール国を介して送るとも書かれてあった。
それに加えてあの映像もあったからな。
ザルハード国王子と婚約者、側近候補の見苦しいまでの獣人や孤児への差別的言動はザルハード国と言えども品位に欠けると国王陛下も判断された」
そっかあ。
何があったのか具体的には聞いてなかったけど、ウィンスさんも抗議文送ってたんだね。
やらかしたのがザルハード国の留学生って立場だったから国の外交官か宰相宛にわざと直接送ったんだろうな。
ふふふ、狙いの物は手に入ったのかな?
なんて思いつつ、お話しの邪魔をしないようにアン様に選手交代をお願いする眼差しを向ける。
あ、気づいてくれた。
シル様も僕達のやり取りに気づいて僕の方を振り返って頭をぽんぽんしてくれた。
僕の頭大人気だね。
もちろんその間はレイヤード義兄様の手を握って静電気のパチパチ攻撃しないようにしておいたよ。
バルトス義兄様が僕の腰に回してる腕もぎゅっとしておこうっと。
0
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる