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161.路地裏話

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「そこを何とか····」
「「断る」」

 食い下がる王子に再びすげなく断る義兄様達。

「ア、アリー嬢····」
(アリー、僕もアリーのご飯食べたい)

 そっけない麗しの義兄様達に見切りをつけた王子が僕をすがる目で見る。

 そんな王子と同じタイミングで指輪から黒い靄が現れて、あの可愛くて小さいヤミーが出てきた。
目のダメージは回復したのかな?

 もちろん僕達以外には見えないよ。
おじさんが突然黙りこくった僕達に不思議そうな目を向ける。

 うるうるの目をした、手の平サイズの3頭身の妖精さん····もふ神様とは違う良さがあって····いい!

(ねえ、僕も食べたい!
お願い、アリー!
ヒッ)

 義兄様達、無言で睨んじゃダメ。
あ、おじさんが後ろにジャンプしそう。

「こほん。
それじゃおじさん。
また連絡しますね」
「お、おう。
楽しみにしとくぜ」

 ひとまず場所を変えなくちゃね。
レイヤード義兄様が僕をさっと抱えて西のブースを後にする。

 僕達は少し歩いてから建物と建物の間の狭い路地裏に入る。
すぐに王子が入り口に目隠しの魔法をかけるとヤミーが僕めがけて飛んで····パチーン、と僕を庇うように立ったバルトス義兄様にサーブされた。
ベシャ、と地面にうつぶせに叩き落とされちゃった。

 実体化してない妖精さんに触れるなんてやるな、バルトス義兄様。
王子みたいに妖精さんがリンクしてる精霊石を身につけてないのに触れるのは精霊さんが見えてる事に加えてどちらかが波長を合わせる必要があるんだ。

 僕は精霊眼のおかげなのか、体質なのかフリーパスで触れられるけど。

「闇の精霊殿?!」
(くすん)

 妖精さんだからって油断してるから王子が慌てちゃうくらいまともに地面に激突しちゃうんだよ?

 ヤミーは悲劇のヒロインのように地面に突っ伏して泣いてしまう。
悲劇というより悲撃な気がするけど。
隣で慌てている王子。
更に後ろではリューイさんが無言でたたずんでいる。
そしてそれを冷たい目で一瞥している義兄様達。

 ちょっとカオス入ってきてないかな?

「俺の天使に飛びつくな。
驚いて心臓が破裂したらどうしてくれる」

 そう思うなら義兄様達が転移や気配消しの魔具使って突然現れるのやめない?
お茶目な義兄様達は大好きだけどね。

「僕だって3等身になれば君よりよっぽどアリーに可愛がられるんだから、調子に乗らないで」

 今の7.5等身のレイヤード義兄様を可愛がらない日はなかったと思うよ?
もしやまだまだ愛情不足だった?
ごめんね。

 謝罪と愛を込めてよしよししておこう。

「ん、もっとして、アリー」
「俺も」

 白金髪と金髪が僕の前に差し出される。

「もちろん!
やきもちなんて可愛い兄様達なんだから!」

 追加よしよしをしているとヤミーが更に泣き出す。

(うえーん!
僕だってよしよしされてアリーのご飯食べたいのにー!)
「や、闇の精霊殿····」

 煩悩むき出しで泣いちゃったヤミーを前に王子も更にオロオロしてしまうけど、そっと小さい体を一撫ですると意を決したように僕達の前に立つ。

 どうでもいいけど、3等身の時の妖精さんて見た目のイメージが先行しちゃうからかな。
言動が幼くなってるのは気のせい?

「グレインビル殿、私は今日、国の発展と安寧の為に物流の確保がいかに大事なのか、他国の民が自国の民と比べていかに心が豊かなのかを知った。
それにこの数年、各国の商人達と話す機会を得た事で彼らの愛国心が何故そのように高いのか、我が国には何故そのような者が少ないのか、我が国の在り方を考える事が増えた。
もちろん私自身の力不足や傲慢さは初めてアリー嬢に会う事になったあの時より痛感している。
この国に留学した弟とその取り巻き達の問題行動を目の当たりにしてかつての自分を心から恥じている。
今日もそうだ。
私は彼らを諌める事すらできなかった。
事を収めてくれたお二方には感謝している。
そして弟を前もって止められず、アリー嬢に不快な思いをさせてしまった。
お二方の手を煩わせてしまった事も含めて申し訳ない」

 ペコリと頭を下げる。
大会でやらかされて王城の離宮で謝罪を受けた時以来だね。

 うーん····王子の立場が微妙でまともに表立って動けない側面があるのもわかるんだよ?
だって護衛のリューイさんはともかくとして単身で留学した彼とは対照的に、第3王子は取り巻きも含めて留学してて、他国での七光り発言。
それに間接的に話を聞く限り西のブースでの問題行動は彼らのある意味では王族や貴族の古い価値観が起因していると思うし、自国ではそれを当然と許されてきたんだよね?

 でもね、他国でそれを王族である王子が諌めない、謝罪しない場合、彼らの言動はそのまま自分の言動として取られちゃうんだけど、わかってるのかな?

 言い換えれば当然だけどこの国の王族は今回のこの騒動を見過ごさないんじゃない?
見過ごせばどう取られるかは····ねえ。
そう考えるとそもそも問題行動を取りそうな彼らを野放しにするのかな?
こんな事する人間なら絶対学園で問題になってるよね?
留学中のこの国での彼らの責任者って今は誰だろう?

 でもって国同士のパワーバランスを考えると今回の彼らの問題を起こした場所が問題だよ?
西のブースと南の屋台····北のこの国、南の辺境領と紛争を繰り返してたあの国、2国間の隣国となっている南西に位置する王子達の国····。
何より物流による外交に力を入れる近隣諸国。

 チラリと王子を見る。
もし僕が彼の立場なら····。

「アリー」

 突然ふに、とレイヤード義兄様にお鼻を摘ままれる。

「ふが····ひいひゃま?」

 あ、変な声出ちゃった。

 バルトス義兄様も心配そうにこちらを見てる。
おっと、物思いにふけっちゃってたよ。

 僕の意識の浮上を確認したのか、バルトス義兄様は王子に向き直る。

「謝罪はこの場で俺達にして終わりか?」

 おや、バルトス義兄様?

 そういえば西のブースではバルトス義兄様が最終的に残って対処した····。
気配消しの外套着てたレイヤード義兄様はいつから合流してたのかな? 





※※※※※※※※※
お知らせ
※※※※※※※※※
新作を投稿しています。
全4話完結のホラージャンルです。
同時進行中の小説【溺愛中】~のお話の関係者が登場しますが、そちらを知らなくても問題ない作りとなっています。
タイトルは【かくしおに】です。
恐怖を自家発電しようとしましたが、怖くありません。
ホラーは難しいですね。
お暇な時に読んでいただけると幸いです。
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