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119.行方不明~sideギディアス
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「どういう事だ、王宮魔術師団団長」
侯爵の可愛い天使が転移していないと聞き、魔王が降臨する。
もれなく後ろで若かりし頃の彼を彷彿とさせる悪魔も降臨した。
悪魔よ、頼むから王族と筆頭公爵の面々が並ぶこんな場所で放電やめてくれ。
後ろに控える護衛達に緊張走ってるよ。
私達は陛下の思いつきで何でか不機嫌な様子だったグレインビル侯爵と行動を共にさせられ、どういうわけか魔王の悪戯が発動した事によって突然の魔獣討伐の実戦経験を問答無用で積む事となった。
でもそれはそれでなかなか出来ない実戦でのお試しは勉強になったから私は楽しかったけど、あの王子は災難だったと思う。
魔王の手によって下半身を魔獣のあれこれでくまなく真っ赤、というか時間が少し経って赤黒く染められた隣国の王子にはお気の毒様という言葉以外にかける言葉が見つからない。
今は異臭を放つ服を着替えるのに護衛によって先に城へ強制送還してしまった。
魔王は多分わざとやったんじゃないかな?
あの時王城のあの一室で侯爵の可愛い天使様に嫌いになるって泣かれた原因の諸悪の根源たる王子の事、根に持ってたんだよね?
その証拠に、彼は人の粘膜や体内に入れば害になるかもしれない血肉を頭からは被っていなかったし。
ただの事故なら間違いなく頭から被ってたはず。
それはそうとあの護衛、やっぱり普通に滅茶苦茶に強いと思う。
転移魔法を使ったのはともかく、彼が使っていたあの剣は本当に普通の、そこらへんの武器屋でいつでも買えるような安物の剣だったぞ?
それでAランクの中でも中々のパワータイプで皮が硬い氷熊の首を簡単に切り落としていた。
それも魔法など一切使わずに。
魔王ともう1人の悪魔とやたら口撃を交わし合っていた光の精霊王が獣人の中でも長命で戦闘能力がずば抜ける竜人と言っていたのも頷ける。
見た目は普通の人属だけど。
いつぞやの主の非礼のお詫びだとAAランクの氷竜をマジックバックに収納していた悪魔の方に献上したけど。
ていうかあの鞄の容量どうなってるんだろ?
入れてたの竜なのに、熊も2頭余裕で入ってたよね?
こっちの悪魔は悪魔でAAランクの魔獣倒した後も余力ありそうだったし、実際もう1匹狩ろうとしたのを子竜の為に見逃す程余裕だったし、末恐ろしいのばっかり集まってるけど大丈夫かな、この国。
あの何とも形容しがたい有意義な時間を終え、ご婦人達も既に待機するはずの集合場所へ着いてすぐに王宮魔術師団団長のネビル=マクガレノに呼び止められ、陛下夫妻、三大筆頭公爵家一同、アビニシア侯爵夫妻、フォンデアス公爵夫人とその息女が待つ奥の天幕へ案内された。
陛下は狐属の王都騎士団団長と何かを話している。
「申し訳ありません、グレインビル侯爵閣下。
どうやらあの転移魔具には仕掛けが施されていたらしく、ご息女だけでなくルドルフ殿下と護衛についたシルヴァイト=ルーベンスが別のどこかに転移してしまいました」
ネビルが青い顔で状況を説明する。
元鬼上司の鬼畜魔王が無表情で殺気だけは放つなんて、彼にとっては昔を彷彿とさせて悪夢だろうな。
当時の鬼畜の所業については聞いた事があるが、飛び火すると怖いので少し遠巻きにして耳をそばだてる。
「仕掛け?」
「はい。
どうやら転移魔具を一時停止する回数をある一定数に達すると転移先を変え、別の転移魔具と繋がるように仕込まれていたようです。
魔石回路が回数で切り替わるまで回路そのものが表に出ないよう仕組まれていた為に気づけず、申し訳ありません」
「なるほど。
そんな事よりも、王妃がこのような行動を取る事はあらかじめ決められていたのか?」
いや、むしろそこはそんな事扱いでいいのか?!
まあ実は私もあの魔具の転移検査に立ち合ってたけど、正直異常はわからなかった。
恐らくそんな事ができるのはこの魔具の開発に関わった1人くらいだ。
あの魔法馬鹿と有名だった魔人属の元王宮魔術師団団長くらい····。
····やばい、もうこの件に誰が関わったか読めてきた····私が読めるくらいだから、魔王一家は····。
「····いえ、それは····」
「その時の副団長が王妃の護衛だったのはたまたまか?」
魔王は何故そこを確認するんだろう?
「····左様です」
「そうか····随分と面倒な事をしてくれたものだ。
副団長はどこにいる?」
というか、どうして弟とあの子が一緒だったんだ?
少なくとも弟はそこの悪魔と約束していて妹に話しかけられないと嘆いていたし(弟よ、それを悪魔の前では口にするなよ)、彼らの天使も自分から王族に関わる事は絶対にしないはず。
もしかして····。
ちらりと母上を見れば青い顔をしているけど····。
母上の周りを観察すれば、本来あの子の側につかねばならなかった筈の伯母と従姉は勿論のこと、三大筆頭公爵家のご婦人達もそんな顔だ。
唯一、リュドガミド公爵だけは何事かを考え込んでいるようだけど。
読める····とてつもなく面倒な事態を彼女達の手によって、それも間違いなくちょっとした悪戯心から招き寄せた事が読めるぞ。
フォンデアス公爵夫人はそこに関しては立場上とばっちりだろうけど、ついでに魔王一家にそれがバレた事まで読めるぞ。
唯一の救いはバルトスも恐らくその場にいて、職務中だった為に彼が大天使の側を離れるのを受け入れたという事だろうか。
まあその彼も姿が無いんだが。
バルトスが見当たらないという事は····。
「静止する間もなく転移し、城側の魔具の異常を報告して何処かに····ご丁寧に有休届けも転送されました」
ネビルが懐からカサリと届けを取り出す。
やはり単独行動を取ったか。
にしても友よ、律儀だな。
理由は天使の捜索か····せめて妹の捜索って書こうよ。
侯爵の可愛い天使が転移していないと聞き、魔王が降臨する。
もれなく後ろで若かりし頃の彼を彷彿とさせる悪魔も降臨した。
悪魔よ、頼むから王族と筆頭公爵の面々が並ぶこんな場所で放電やめてくれ。
後ろに控える護衛達に緊張走ってるよ。
私達は陛下の思いつきで何でか不機嫌な様子だったグレインビル侯爵と行動を共にさせられ、どういうわけか魔王の悪戯が発動した事によって突然の魔獣討伐の実戦経験を問答無用で積む事となった。
でもそれはそれでなかなか出来ない実戦でのお試しは勉強になったから私は楽しかったけど、あの王子は災難だったと思う。
魔王の手によって下半身を魔獣のあれこれでくまなく真っ赤、というか時間が少し経って赤黒く染められた隣国の王子にはお気の毒様という言葉以外にかける言葉が見つからない。
今は異臭を放つ服を着替えるのに護衛によって先に城へ強制送還してしまった。
魔王は多分わざとやったんじゃないかな?
あの時王城のあの一室で侯爵の可愛い天使様に嫌いになるって泣かれた原因の諸悪の根源たる王子の事、根に持ってたんだよね?
その証拠に、彼は人の粘膜や体内に入れば害になるかもしれない血肉を頭からは被っていなかったし。
ただの事故なら間違いなく頭から被ってたはず。
それはそうとあの護衛、やっぱり普通に滅茶苦茶に強いと思う。
転移魔法を使ったのはともかく、彼が使っていたあの剣は本当に普通の、そこらへんの武器屋でいつでも買えるような安物の剣だったぞ?
それでAランクの中でも中々のパワータイプで皮が硬い氷熊の首を簡単に切り落としていた。
それも魔法など一切使わずに。
魔王ともう1人の悪魔とやたら口撃を交わし合っていた光の精霊王が獣人の中でも長命で戦闘能力がずば抜ける竜人と言っていたのも頷ける。
見た目は普通の人属だけど。
いつぞやの主の非礼のお詫びだとAAランクの氷竜をマジックバックに収納していた悪魔の方に献上したけど。
ていうかあの鞄の容量どうなってるんだろ?
入れてたの竜なのに、熊も2頭余裕で入ってたよね?
こっちの悪魔は悪魔でAAランクの魔獣倒した後も余力ありそうだったし、実際もう1匹狩ろうとしたのを子竜の為に見逃す程余裕だったし、末恐ろしいのばっかり集まってるけど大丈夫かな、この国。
あの何とも形容しがたい有意義な時間を終え、ご婦人達も既に待機するはずの集合場所へ着いてすぐに王宮魔術師団団長のネビル=マクガレノに呼び止められ、陛下夫妻、三大筆頭公爵家一同、アビニシア侯爵夫妻、フォンデアス公爵夫人とその息女が待つ奥の天幕へ案内された。
陛下は狐属の王都騎士団団長と何かを話している。
「申し訳ありません、グレインビル侯爵閣下。
どうやらあの転移魔具には仕掛けが施されていたらしく、ご息女だけでなくルドルフ殿下と護衛についたシルヴァイト=ルーベンスが別のどこかに転移してしまいました」
ネビルが青い顔で状況を説明する。
元鬼上司の鬼畜魔王が無表情で殺気だけは放つなんて、彼にとっては昔を彷彿とさせて悪夢だろうな。
当時の鬼畜の所業については聞いた事があるが、飛び火すると怖いので少し遠巻きにして耳をそばだてる。
「仕掛け?」
「はい。
どうやら転移魔具を一時停止する回数をある一定数に達すると転移先を変え、別の転移魔具と繋がるように仕込まれていたようです。
魔石回路が回数で切り替わるまで回路そのものが表に出ないよう仕組まれていた為に気づけず、申し訳ありません」
「なるほど。
そんな事よりも、王妃がこのような行動を取る事はあらかじめ決められていたのか?」
いや、むしろそこはそんな事扱いでいいのか?!
まあ実は私もあの魔具の転移検査に立ち合ってたけど、正直異常はわからなかった。
恐らくそんな事ができるのはこの魔具の開発に関わった1人くらいだ。
あの魔法馬鹿と有名だった魔人属の元王宮魔術師団団長くらい····。
····やばい、もうこの件に誰が関わったか読めてきた····私が読めるくらいだから、魔王一家は····。
「····いえ、それは····」
「その時の副団長が王妃の護衛だったのはたまたまか?」
魔王は何故そこを確認するんだろう?
「····左様です」
「そうか····随分と面倒な事をしてくれたものだ。
副団長はどこにいる?」
というか、どうして弟とあの子が一緒だったんだ?
少なくとも弟はそこの悪魔と約束していて妹に話しかけられないと嘆いていたし(弟よ、それを悪魔の前では口にするなよ)、彼らの天使も自分から王族に関わる事は絶対にしないはず。
もしかして····。
ちらりと母上を見れば青い顔をしているけど····。
母上の周りを観察すれば、本来あの子の側につかねばならなかった筈の伯母と従姉は勿論のこと、三大筆頭公爵家のご婦人達もそんな顔だ。
唯一、リュドガミド公爵だけは何事かを考え込んでいるようだけど。
読める····とてつもなく面倒な事態を彼女達の手によって、それも間違いなくちょっとした悪戯心から招き寄せた事が読めるぞ。
フォンデアス公爵夫人はそこに関しては立場上とばっちりだろうけど、ついでに魔王一家にそれがバレた事まで読めるぞ。
唯一の救いはバルトスも恐らくその場にいて、職務中だった為に彼が大天使の側を離れるのを受け入れたという事だろうか。
まあその彼も姿が無いんだが。
バルトスが見当たらないという事は····。
「静止する間もなく転移し、城側の魔具の異常を報告して何処かに····ご丁寧に有休届けも転送されました」
ネビルが懐からカサリと届けを取り出す。
やはり単独行動を取ったか。
にしても友よ、律儀だな。
理由は天使の捜索か····せめて妹の捜索って書こうよ。
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