104 / 491
5
103.色々と衝撃的~クラウディアside
しおりを挟む
「あなた、本当に何もご存知ないのね」
私の反応で判断されたのでしょう。
青い目が驚きに見開かれ、私は恥ずかしさから顔を火照らせながら思わず俯いてしまいましたわ。
「確かに当時のフォンデアス家はグレインビル家のおこぼれ陞爵とも言われてらしたようですから、本当の陞爵理由は表向きには伏せられておりましたわ。
けれど当主ご自身は隠す必要はなしとして、聞かれれば真実を話されていたようでしてよ。
それに現在のグレインビル侯爵家は親戚関係に留まらず、フォンデアス公爵家の領地の名産の開発支援も行って領地の財政危機を脱した影の立役者でもありますから、関係はとても良好ですわよね。
そのお話も進んでされなくとも特別隠してもいらっしゃらないはずですの。
あなた、もしかして自領に何も興味をお持ちにならなかったのかしら····」
俯いた私の顔が赤いものからどんどん青ざめていくのがわかったのでしょう。
1度顔を上げたもののレイチェル様の残念な何かを見るような目を向けられていた事に気づいて再び俯きましたわ。
「そう、それで今ですのね。
あなたもしかして反省文なんて書かされていらっしゃるの?」
「え····何の事ですの?」
「あら、違ってらした?
こちらでお見かけした時から随分暗い顔をなさってらしたからてっきり私のよう、ゴホン、いえ、反省文という名の自領の分析結果と問題点と考察を大体20単語が20行程度書けるような用紙で100枚程度にまとめて提出するよう求められたのかと思いましたわ」
「いえ、そういった物は求められてはおりませんでしたわ。
そのような物を求められた事がおありですの?
反省文という事は至らない何かをされたのでしょうか?」
「ほほほ、間違っても私の話ではありませんのよ。
噂ですわ、噂。
かつてレイヤード様は妹であるアリアチェリーナ様を軽んじるような愚行を犯した者にそれを書かせてその者がいかに貴族の子供として自覚を持っていないのか、そして妹がいかに素晴らしい考えをお持ちかを知らしめた事がございましたの。
その時のレイヤード様は書き終えるまで悪魔のような殺気で監視していらし····た、らしいですわ」
レイチェル様が遠い目をなさって小窓の外を見ておられました。
「けれどその時の反省文のおかげで負債を抱えて赤字経営だったその者の領地が今では黒字経営となった、とお聞きしておりますの。
私とアリアチェリーナ様はその時、ゴホン、それを聞いて私自ら反省文を書いて送った事がご縁で連絡を取り合う仲となったのですわ」
「左様でございましたの」
レイチェル様は時々咳払いされていましたが、風邪でしょうか。
言葉も時々詰まらせておられましたし。
「私は反省文は求められておりませんが、きっと気づきを与えられているのだと思いますわ。
もう、手遅れなのですが····自分がいかに不出来で傲慢で、自覚のない貴族令嬢として恥ずかしい程に驕った性格であったのかを····」
言いながら胸がズキズキと痛み、私は再び俯きました。
それからはどうやって時を過ごしたのか····。
レイチェル様に促されて会場の席に戻り、従妹とレイチェル様の共に堂々とした貴族然としたやり取りをただ呆然と眺め、そう、家格ではなく彼女達と自らとの格の違いを従妹に感じながらただただ呆然としておりました。
我に返ったのは、従妹に手を引かれた時でしたわ。
「従姉様、参りますわよ!」
私を連れて来た目的の1つは馬車に乗る直前に聞かされておりました。
ただ一言、ケーキの為と。
その時は何の事かわかりませんでしたわ····しかし、言葉そのまま、本気でしたの?!
王妃様のご挨拶もまだしていないのに、どういう事ですの?!
「な、ちょっとあなた、本当にこの為に?!
まだ王妃様とお話もしてませんわよ?!」
周囲に配慮したというよりも、このままあの一角に行けば間違いなくケーキで目立つのがわかっていて恥ずかしさから小声で反抗しましたわ。
「私は子供ですのよ!
子供は甘い物が大好きなのですわ!
王妃様へのご挨拶はまだまだ時間がかかりますの!
ケーキは新鮮だからこそケーキなのでしてよ!」
「何ですの、その暴論?!
お、お母様?!」
あなたさっきまでそこらへんの貴婦人顔負けで公爵家のご令嬢とやり取りしていたじゃありませんの!
都合がよろしい時だけ子供ぶるなんて!!
それに新鮮なケーキって何ですの?!
反射的にお母様に助けを求めましたが、無駄でしたわね。
冷たくあしらわれましたわ。
「さあ!
しっかり私のケーキを運んで下さいませ!
従姉様の役割をこなすのですわ!」
目をキラキラと輝かせて勢いよくその一角に待機したバトラーに伝えてケーキを盛っていく様に唖然としました。
「ケーキの為にって····まさか本気だったなんて····あなたも貴族令嬢のはずなのに····」
心の声が漏れ出ても、私は悪くありませんわよね?
席に戻れば上品かつとんでもない早さで食していくし、病弱な深窓のご令嬢設定はどこにポイ捨てしておいでですの?!
それから王妃様がご挨拶にいらっしゃれば流石に食べるのは控えていましたけど、ご挨拶の最中はバルトス様を異様にキラキラ、というかギラギラした目で眺め続けたり、直接話しかけられればお話をさっさと切り上げようとなさるし、幼くとも不敬で捕まる事もございますのよ?!
私はそれまでの自分の従妹への態度など忘れてハラハラと心配する事になりましたわ。
ご挨拶が終わってからは少しずつ膨れていくぽっこりお腹を心配しましたわ。
いつの間にかお母様が席を立ち、社交の場に赴かれた事にすら気づかない程には。
けれど、まさか誰も見ていない隙を窺ってドレスのリボンを手早くほどいて締め直して全てのケーキをお腹に収めていくなんて思いもしておりませんでしたわ。
「あなた、まさかその為にそのようなデザインを····」
「ケーキは偉大でしてよ、レイチェル様」
どや顔とは、きっとこの時の従妹の顔を言うのでしょう。
私とレイチェル様だけはデザインの意図を目撃しました。
我に返ったように呟くレイチェル様を横目に、私はそっとナプキンで口元のチョコレートを拭って差し上げましたわ。
私の反応で判断されたのでしょう。
青い目が驚きに見開かれ、私は恥ずかしさから顔を火照らせながら思わず俯いてしまいましたわ。
「確かに当時のフォンデアス家はグレインビル家のおこぼれ陞爵とも言われてらしたようですから、本当の陞爵理由は表向きには伏せられておりましたわ。
けれど当主ご自身は隠す必要はなしとして、聞かれれば真実を話されていたようでしてよ。
それに現在のグレインビル侯爵家は親戚関係に留まらず、フォンデアス公爵家の領地の名産の開発支援も行って領地の財政危機を脱した影の立役者でもありますから、関係はとても良好ですわよね。
そのお話も進んでされなくとも特別隠してもいらっしゃらないはずですの。
あなた、もしかして自領に何も興味をお持ちにならなかったのかしら····」
俯いた私の顔が赤いものからどんどん青ざめていくのがわかったのでしょう。
1度顔を上げたもののレイチェル様の残念な何かを見るような目を向けられていた事に気づいて再び俯きましたわ。
「そう、それで今ですのね。
あなたもしかして反省文なんて書かされていらっしゃるの?」
「え····何の事ですの?」
「あら、違ってらした?
こちらでお見かけした時から随分暗い顔をなさってらしたからてっきり私のよう、ゴホン、いえ、反省文という名の自領の分析結果と問題点と考察を大体20単語が20行程度書けるような用紙で100枚程度にまとめて提出するよう求められたのかと思いましたわ」
「いえ、そういった物は求められてはおりませんでしたわ。
そのような物を求められた事がおありですの?
反省文という事は至らない何かをされたのでしょうか?」
「ほほほ、間違っても私の話ではありませんのよ。
噂ですわ、噂。
かつてレイヤード様は妹であるアリアチェリーナ様を軽んじるような愚行を犯した者にそれを書かせてその者がいかに貴族の子供として自覚を持っていないのか、そして妹がいかに素晴らしい考えをお持ちかを知らしめた事がございましたの。
その時のレイヤード様は書き終えるまで悪魔のような殺気で監視していらし····た、らしいですわ」
レイチェル様が遠い目をなさって小窓の外を見ておられました。
「けれどその時の反省文のおかげで負債を抱えて赤字経営だったその者の領地が今では黒字経営となった、とお聞きしておりますの。
私とアリアチェリーナ様はその時、ゴホン、それを聞いて私自ら反省文を書いて送った事がご縁で連絡を取り合う仲となったのですわ」
「左様でございましたの」
レイチェル様は時々咳払いされていましたが、風邪でしょうか。
言葉も時々詰まらせておられましたし。
「私は反省文は求められておりませんが、きっと気づきを与えられているのだと思いますわ。
もう、手遅れなのですが····自分がいかに不出来で傲慢で、自覚のない貴族令嬢として恥ずかしい程に驕った性格であったのかを····」
言いながら胸がズキズキと痛み、私は再び俯きました。
それからはどうやって時を過ごしたのか····。
レイチェル様に促されて会場の席に戻り、従妹とレイチェル様の共に堂々とした貴族然としたやり取りをただ呆然と眺め、そう、家格ではなく彼女達と自らとの格の違いを従妹に感じながらただただ呆然としておりました。
我に返ったのは、従妹に手を引かれた時でしたわ。
「従姉様、参りますわよ!」
私を連れて来た目的の1つは馬車に乗る直前に聞かされておりました。
ただ一言、ケーキの為と。
その時は何の事かわかりませんでしたわ····しかし、言葉そのまま、本気でしたの?!
王妃様のご挨拶もまだしていないのに、どういう事ですの?!
「な、ちょっとあなた、本当にこの為に?!
まだ王妃様とお話もしてませんわよ?!」
周囲に配慮したというよりも、このままあの一角に行けば間違いなくケーキで目立つのがわかっていて恥ずかしさから小声で反抗しましたわ。
「私は子供ですのよ!
子供は甘い物が大好きなのですわ!
王妃様へのご挨拶はまだまだ時間がかかりますの!
ケーキは新鮮だからこそケーキなのでしてよ!」
「何ですの、その暴論?!
お、お母様?!」
あなたさっきまでそこらへんの貴婦人顔負けで公爵家のご令嬢とやり取りしていたじゃありませんの!
都合がよろしい時だけ子供ぶるなんて!!
それに新鮮なケーキって何ですの?!
反射的にお母様に助けを求めましたが、無駄でしたわね。
冷たくあしらわれましたわ。
「さあ!
しっかり私のケーキを運んで下さいませ!
従姉様の役割をこなすのですわ!」
目をキラキラと輝かせて勢いよくその一角に待機したバトラーに伝えてケーキを盛っていく様に唖然としました。
「ケーキの為にって····まさか本気だったなんて····あなたも貴族令嬢のはずなのに····」
心の声が漏れ出ても、私は悪くありませんわよね?
席に戻れば上品かつとんでもない早さで食していくし、病弱な深窓のご令嬢設定はどこにポイ捨てしておいでですの?!
それから王妃様がご挨拶にいらっしゃれば流石に食べるのは控えていましたけど、ご挨拶の最中はバルトス様を異様にキラキラ、というかギラギラした目で眺め続けたり、直接話しかけられればお話をさっさと切り上げようとなさるし、幼くとも不敬で捕まる事もございますのよ?!
私はそれまでの自分の従妹への態度など忘れてハラハラと心配する事になりましたわ。
ご挨拶が終わってからは少しずつ膨れていくぽっこりお腹を心配しましたわ。
いつの間にかお母様が席を立ち、社交の場に赴かれた事にすら気づかない程には。
けれど、まさか誰も見ていない隙を窺ってドレスのリボンを手早くほどいて締め直して全てのケーキをお腹に収めていくなんて思いもしておりませんでしたわ。
「あなた、まさかその為にそのようなデザインを····」
「ケーキは偉大でしてよ、レイチェル様」
どや顔とは、きっとこの時の従妹の顔を言うのでしょう。
私とレイチェル様だけはデザインの意図を目撃しました。
我に返ったように呟くレイチェル様を横目に、私はそっとナプキンで口元のチョコレートを拭って差し上げましたわ。
1
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる